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恥ずかしさのあまり死にたくなることの言い回しで「慙死に値する」という言葉があるけれど、この『狼と香辛料』の3巻の結末は、自分がロレンスの立場だったら、それだなあ、と思いました。慙死は固すぎるから『恥ずか死』の方が、近いかもしれないけれど。
ホロとロレンスならではの、ベッタベッタなやり取りを繰り広げつつ、二人が次にやって来たのは年に一回のお祭りが開催される都市。ホロの故郷のことを調べるロレンスですが、その一方で二人に降りかかってくる、思わぬトラブル。さらに、ここまで崩れようの無いように見えたホロとロレンスの絆にも、暗雲が立ちこめる事態が起こり……
どこまで正確か覚えてませんが、少年マンガと少女マンガの恋愛ものは、描く関係性が違うそう。色々フラフラしたりもしながら、最後に誰か一人を選んで付き合うまでがゴールなのが少年マンガ。
一方で少女マンガの恋愛ものは、カップリングは決まっていて、その関係性の変化を描くのが目的のものが多い、的な話を聞いたことがあります。
カップリングが決まっていたら、話作るの難しくならないのかなあ、と思ったものですが、ホロとロレンスの話を読んでいると「なるほど、そういうことか」と思えてきます。
中心となる二人は不変でも、魅力的なキャラなら会話ややり取りで読ませるし、恋愛・ラブコメの要素を他の物語の要素と和えて描くことが出来るのです。そして『狼と香辛料』は、その最たるものの一つのように思えます。
今回の商業・経済的な要素は「いかにして商品の価値を暴落させ、相手を儲けさせないか」
商人としての知識や経済学的な市場、さらにはファンタジーの設定をかけ合わせた、コンゲーム的な要素も強く、そのあたりも今回は特に面白く読めました。
ロレンスの思考も、いろんな意味で面白かった。ホロのことを思った上ではあるのだろうけど、それがどんどん暴走して、挙句に誰が敵なんだか、味方なんだか分からなくなってくるあたりなんかは「なんで、そうなんねん!」とツッコミを入れたくてウズウズしたけれど(笑)
まあ、これも惚れた者の弱みなのかなあ。
で、その弱みはある意味ホロにも向けられるような気がします。商人としては優秀なものの、ところどころで決めきれないロレンス。そこも含めて、あるいは越えてホロはロレンスを思っているのかもしれません。
ともかく、次こそはロレンス決めてくれ、と思ってしまいます。前巻でも同じこと思ったけど(苦笑)