紙の本
「対米従属」という心理的な鎖
2010/07/02 02:09
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ国立第二公文書館に眠っていた機密文書「CIA文書正力松太郎ファイル」。その資料を発見した著者は驚嘆した。そこには著者が長年探し求めていた「正力松太郎による日本へのテレビ導入に隠された真相」が全て記されていたのである・・・! つまり、CIAが極秘に正力を支援する作戦の全容が記録されていた。正力は、CIAから“PODAM”というコードネームを与えられた協力者だったのだ!!
本書の扇情的な題名から、安手のスパイ小説のようなおどろおどろしい話を想起する人も少なくないだろうが、本書の視野はもっと遠大なものである。日本テレビこそが、戦後日本を作り今なお日本と日本人を呪縛している「アメリカ対日心理戦」の核心であり、ゆえに日本テレビ創業の裏側を明らかにすることで「日本の戦後」の実相が浮かび上がってくる、と著者は説くのである。
したがって本書は、日本テレビ(いわゆる日テレ)の創業者であり「テレビ放送の父」と賞賛されてきた正力松太郎の実像への接近を通じて、アメリカの反共戦略の中に戦後日本が知らず知らずの内に組み込まれていった過程を詳細に描き出した力作と言えよう。
CIAの後押しを受けて、正力松太郎が当初ぶちあげた計画は「テレビを含む国際通信のためのユニテル・リレー網計画」であった。すなわち、テレビに留まらず、地域ラジオ、軍事ファクシミリ・テレタイプ、天気図をはじめとするデータ放送、警察無線、列車通信、航空・防空管制など、主に軍事的目的に利用されるマイクロ波通信網の建設だったのである。日本を極東における「反共の砦」として機能させようというアメリカの冷厳な世界戦略に乗る形で、正力の日本テレビ創業計画は進められていった。正力やその懐刀の柴田秀利が生前に語ったような、夢と理想に満ちた成功物語ではなかったのである。
正力の背後に見え隠れする「黒幕」たち=ジャパン・ロビー(米政界内の反共親日派)の広範な人脈を丹念に炙り出していく前半は、説得的ではあるが、やや単調。いかにも研究者が書いた、という感じ。
しかし日本テレビ開局をめぐって、正力をはじめ、吉田茂(当時の総理大臣)、犬養健(法務大臣)、佐藤栄作(郵政・電気通信大臣)、池田勇人(通産大臣)、緒方竹虎(副総理)、鳩山一郎(吉田の最大の政敵)、重光葵(改進党総裁)、梶井剛(電電公社総裁)など政界・官界の大物、更にNHKや毎日新聞・朝日新聞など競合マスコミの思惑が交錯し、彼らが権謀術数の限りを尽くして熾烈な権力闘争を繰り広げる様を活写する後半は非常にスリリング。
ただ、それも所詮は「コップの中の嵐」で、アメリカの掌の上で踊らされていたのかと思うと、少し虚しい。日本の政治家とマスコミ、そして日本国民が、「親米」という名の対米従属のメンタリティーから脱却できる日は来るのだろうか?
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これは面白いGHQの対日心理戦局のグリーン
やダレスの名もでてくるしその後ろにいる
軍事顧問秘書の准将などの影も見えてくる 正力のいくつく先の野望はなんだったのだろうか、米国の思惑はなんだったのだろうか、まだまだ不透明な部分がある。
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日本テレビ設立は、アメリカの日本における反共スキーム構築の1つの側面であったということを膨大な公開一次情報を元に論証した書。
題名からして陰謀論と見られてしまいそうだが、正力松太郎を中心とする日米の様々な主体の複雑な相互関係が綿密に描写されていて、著者の研究の成果が窺える。
今でこそ日本テレビ放送網は映像放映のみを扱う組織に過ぎないが、当時はテレビのみならず軍事関係や通信事業をも含めた複合的メディアの一翼を担う第一歩であったということには驚きを禁じえない。また、米側の「反共スキーム構築」という大目的と、日本側の「経済復興のためのインフラ整備」という大目的は共に一貫していたものの、両国は必ずしも一枚岩だったわけではなく、それぞれの国内で多様な主体がしのぎを削っていた(例えば日本国内でのNHK,NTT,NTVとか)という事実を忘れてはならない。
筆者は、テレビメディアが日本における親米感情育成に多大なる貢献をしたことを強調し、冷戦の遺産ともいえる反共産スキームの一部分である日本のテレビメディアについて、今こそ過去を振り返り再検討を行なうべきであると結論づけている。その一環として上梓された本書は、日本のメディアの源泉を知る1つの手がかりとなるのではないだろうか。
大半が人的関係を時系列的に整理記述したもので、冒険活劇やスパイ小説のようなエキサイティングな側面はない。だが、筆者があとがきで引用している米国立公文書館の銘に拠れば、「民主主義の代価は、永遠に監視を続けること」なのである。
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20090327
日本テレビ創始者正力松太郎は、知ってか知らずか、CIAの世界放送網計画に乗って、日本にテレビ網を作ろうとした。
結果は東京キー局のみとなったが。
特に正力氏がCIAの手先だった、とは言えない。
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日本テレビとアメリカとの関係をアメリカの公文書を柱にして展開。
アメリカの情報戦略のすごさに驚く。
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日本テレビ誕生と原子力発電開始
このどちらにも読売新聞の正力松太郎がかかわっていたことは
よく知られていることである。
ところがそれらが米国の思惑と日本の政治と複雑にからみあって
なしとげられたという背景までは全くしらなかった。
この本はアメリカの公文書を丹念に読み解いて日本テレビ設立に
だれの思惑でだれがどうしてこうなったということを
ジクソーパズルをやるようにひとピースひとピース丁寧に
くみあげていった本である。
こういう仕事は私立大学だから可能なのかとも思う。
なかなかの労作である。
ただ登場人物が多く、図にしないと複雑で 結構混乱する。
戦後民主主義や日本という国についておちついて考えるために
一度は読んでおいてよい本である。
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恥ずかしながら、戦後日本も共産主義陣営に入る可能性があった時期があったことに驚いた。アメリカ陣営の反共活動の一環として、日本テレビの創設があったという事実をアメリカの公文書から紡いだ作品。いま話題の原発についても正力松太郎氏が導入に尽力をつくし、「原発の父」と呼ばれることになった件についても触れられています。
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日本のテレビ放送の歴史としてマスコミの研究者が知るべき基本書である。日本が戦後すぐテレビ放送が出来たのかのはなぜかということが、どの本にも書かれていないのでそれを補う。
大型化して不要になった小型のアメリカ製のテレビの部品を日本で組み立てて日本で売り、アジア諸国に販売したという歴史は、テレビが売れないということから当然マスコミでも扱われるべきであるが、それは無視されてきている。
マスコミと政治の研究にはなくてはならぬ本であり、日本のメディア・リテラシーを研究する場合の基本的知識であろう。
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日本最初の民放テレビ局の設置には米国の思惑と、いろんな力関係があった由。
いや、そんな話全く知らなかったので、何がテーマか読み進めないと分からなかったので、本の冒頭で何を検証するのか明確にしてくれた方が分かりやすかった。
当時、共産主義の拡大防止と、自由主義国家陣営の拡大がどれだけ大事なことだった。日本、やばいところにいたんだなと思う。
日本に軍用転用できるマイクロウェーブ網を設置したかった米国。
あいも変わらず勝手な奴らなんだが、堂々と主張せず、裏からいろんな勢力が手をまわす。それぞれの組織が、様々な利害関係で足引っ張りあうのは日本も同じだし、結局政局的な動きになっていったわけですな。
結果としては、テレビという媒体の威力は大きかったわけだが、その後、いつの間にレフト的な内容が圧倒するようになって来たのか、不思議である。