紙の本
谷崎潤一郎氏による官能的な愛の中に心理的マゾヒズムを描いた傑作です!
2020/10/10 12:13
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『痴人の愛』や『春琴抄』、『細雪』など情痴や時代風俗などのテーマを扱う通俗性と文体や形式における芸術性を高いレベルで融和させた純文学の秀作によって高く評価され、「文豪」、「大谷崎」とも称された谷崎潤一郎氏の作品です。同書は、光子という妖しい美の奴隷となった柿内夫妻は、互いにまんじ巴のように絡みあいながら破滅につきすすむという物語です。官能的な愛の中に心理的マゾヒズムを描いた傑作です。同書には、晩年の谷崎氏と、若尾文子氏及び岸田今日子氏による座談会も収録されています。なかなか、読み応えのある一冊です!
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『卍』の発表を聞く機会があって、急ぎで読了。
ひさびさの谷崎。
さすがにおもしろかった。
発表も良かったです。
園子の語り形式だけれど、それを聞いている「先生」の位置を問うた発表で、目を開かれる思いでした。
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未亡人の告白を綴った小説。大阪弁がエロいのなんのって!これが標準語だったら、ふーんって感じなんでしょうね。大阪弁の味わいを堪能できる、過激で卑猥なエロテロ小説です。
夫に不満のある若い妻・園子は、技芸学校で出会った光子と禁断の関係に堕ちる…。そこに、光子の愛人で不能の男・綿貫や、園子の夫まで絡んできて…。
この小説の面白い点は、読者を引き寄せる謎が随所に散りばめられているところだと思います。話は園子の告白という事後報告の形で進みますが、未亡人だという園子は、夫を亡くしていると分かります。また、光子もすでに他界していることが初期の段階で明らかになっています。なぜ当事者の一人だった園子だけが生き残り、告白しているのか? そういう大胆かつ重要な謎がそこかしこで「過去として」見え隠れするのに、告白の内容は「現在進行形」という焦らしっぷり。読んでる側は、どうなったんだ!?と、もどかしく思いながら謎を見つけにページを捲るしかないという…ちょっとしたミステリーにもなっているところが面白かったです。
私が購入したのは、新潮文庫の改版438円(税別)でした。ブクログで見つけることができなかったので、こちらに登録しました。
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あいかわらずの潤ちゃん。
百合、というかとにかく「美しいは正義」で男も女も
登場人物はみんな光子ビッチの事好きになってくよハーレム。
卍ってタイトルは秀逸だし美しすぐる。
でも男性はやわらかくてお人好しで素敵な人々なのに比べ
女子が男性より丈夫でめちゃくちゃワガママで。
翻弄されて痴情がこんがらがるには
もうちょい女性が気弱でもいいんじゃないか、
いやでも潤ちゃんだし女優位なのは仕方ないね、の雰囲気。
なんだかんだみんなマトモだし大人だし立場あるから常軌を逸さず、
官能とか衝撃とか卍のイメージから、
もっとセンセーショナルだと期待しすぎてた。
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最初は読みにくいと思ったが、ぐいぐいと引き込まれた。最後は壮絶。序文はもともと標準語だったらしいけど、関西弁に直したとかで。
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よい、だいぶおもしろい。
もっと具体的にエロエロしてるかと思いきや、そういった描写はなく、どろどろと痴情のもつれみたいな話。んでもって同性愛からの夫に飛び火でとんでもない話だ。
こんなんでもおもしろくて文学してるんだから谷崎はすげぇなぁ。
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実写映画化時の二人の女優と筆者の対談が収録されていたので中公文庫版を購入。
結局、本当のことは最後までわからない。恋というよりも執着や崇拝、性別なんて壁ですらない
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アブノーマルな男女の愛 私がノーマルなだけに面白い。「こんなん、あんのかな~」と思いながら一気に読んだ。生き残ったお姉さんの「今日までおめおめ生きてる私やあれしませんねんけど・・・・」と言いながら生きてる園子は恐ろしい
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昼ドラのように人間関係がめちゃくちゃドロドロしていて抜群におもしろい。唯一マトモそうに見えた柿内幸太郎すら、なんと最終的には徳光光子と関係をもつに至る。とにかく、登場人物の誰ひとりとしてマトモな者はおらず、全員が異常者である。しかし、本作の真に恐ろしい部分は、その登場人物が展開する愛憎劇それ自体ではなく、果たしていったいなにが真相であるのかよくわからないところである。ラスト・シーンで園子の独白によって明かされるところによれば、園子と幸太郎と光子は3人で心中を試み、園子だけが生き延びたという。しかし、そこに至るまでの過程において、まるでオセロのように、セクションごとに展開が一転また一転とすぐに変わってしまう。ある人物がなにかを主張すれば、そのすぐあとにいやアレはウソだと言われる。頭の中がこんがらがってしまうが、とにかくそのような状況なので、どうして最後だけ書いてあることをそのまま鵜吞みにすることができようか。「たまたま」ひとりになったから物語が終わるのであって、もし3人とも生き延びていたら、やはりつぎのセクションでまたどんでん返しがあるのではないだろうか。そうなるとコレはもう終わりのない迷路のようなもので、じつは谷崎が伝えたかったことは、このような関係こそが男女の本質だということなのではないか。
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これさー、90年前の作品だよね?ってくらい、面白かった。
谷崎潤一郎のこういう話、めちゃくちゃ面白いよね。痴人の愛的な感じでよかった。
ただ、あまりにも倒錯的、悪魔主義的だなと思うので、私は痴人の愛の方が好きだな
光子×園子、光子×孝太郎…
最後に服薬自殺を3人で図って、生き残ったのは園子なんだけど、園子が「自分だけ生き残ったのが悔しくて」って言ってたけど、それが光子の策略なのではと思うみたいなことで、死してなお、光子は園子の心を縛り続けるのか、と……すごい女だな。園子・孝太郎夫妻に薬を飲ませて続けたりとか……
こんな女、現実にいたらめちゃくちゃ怖いよね