紙の本
人物、背景、「走る」こと。すべての描写がすばらしい。自分の「存在」に向き合わざるを得なくなった主人公優の葛藤とその展開で一気に読ませる。
2007/05/20 21:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
青山のマンション、30畳あるリビング、プジョーの自転車、51歳の父親が身に付けているものはプラダのニットブルゾンとサイドゴアブーツ、50歳の専業主婦の母親の趣味はパンを焼くこと、自室にあるテレビは32インチの液晶テレビ、車はBMW…。
作者は、こうして、まず、物で主人公の生活環境を描く。兄は、現役合格の医大生で、主人公は有望な陸上選手(しかも、突出した選手!)。家は豊かで何不自由なく暮らす、「完璧な」とも言える家族である。
主人公の岡崎優は、走るたびに記録をぬりかえ、常にトップにいるアスリート。オリンピックでの金メダルを目標にしている。自分の才能を確信し、大学の陸上部に入った彼は、傲慢な態度で二流のアスリートを見下す。ところが、順風満帆の彼と家族は、ある事件によって、崩壊していく。
しかし、物語は、ここから始まる。
ただ、速く走ることに価値観を置き、すべての力をそこに注いできた優は、家族が崩れていく中で、ある現実に向き合い、恐れ、悩み、もがきながらも、ひとつひとつ殻をはぐように、本当の自分の気持ちに気づいていく。その過程の描写がみごと!
ここのところ、「走ること」がテーマの小説が目に付く。しかも、どれもおもしろい。しかし、これは、今日的な「遺伝子」というテーマを背景に、ひとひねりある「陸上」小説だ。
ひどく人間的で泥くさい、そして、とてつもなく優しい岩本や小松の存在は、優が、最も大切なことをつかむのに必要だった。そのことは、人がまっとうに生きていく上で、大きなエールになる。
優の「選択と決断」は、大きな問題をはらんでいるが、自分の「存在」に真っ向から向き合う彼の姿に共感した。やっぱり、こういう物語はいいな、と思わせる感動作。
紙の本
主人公の試合シーンが殆どない驚きの傑作スポーツ小説
2007/05/01 23:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「県庁の星」で大ブレイクした桂望実さんです。
えー今度は、陸上もの!?しかも、箱根駅伝って聞いて
三浦しをんさんをちょっと連想してしまいましたが、
刊行は、こちらが、ちょっぴり先です。
主人公の岡崎優は、陸上の長距離界の超アスリート。
このたび、大学にスポーツ推薦で入学しました。
才能も練習環境もしっかり揃っています。
けど、めちゃめちゃ生意気で傲慢で性格は悪いほう。
そんな彼のお話し。
これ、めちゃめちゃ面白かったです。
冒頭に思わせぶりな、イントロがあり、えーっなんだこりゃ、
と思っていると、
ラストには、きっちりこのイントロと呼応しますので
みなさん、覚えておきましょう。
この生意気な主人公が、改心というか、人間的に成長していくのだろうなぁ
ぐらいは、読んでいて想像は、つきましたが、
こんな仕掛けの小説とは、、、、、。
驚きは、これスポーツ小説ながら、
主人公の試合のシーンが、中盤に一箇所しかない!!。
しかも、これごく、軽めの調整試合です。
これで、この小説のメインテーマが、わかっちゃうでしょう。
試合の描写も結構巧みで、この調整試合もハラハラしたし、
ラストの努力と根性の岩本君が、走るシーンもけっこう上手いのに、
それをメインに持ってこないところに、作家の構成の巧みと
主題のもっていき方に感心しました。
桂さん、一発屋じゃないですな、、。
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陸上に懸ける天才ランナーが見たくて読みました。
しかし、内容は全く違って、天才ランナーとドーピングのお話。
でも、走りのシーンの躍動感もあり、仲間たちとの軋轢もありで面白かったです。
ちょっと、予想外の方向に行って残念だったけど、こういう終わり方もありかなぁと思いました。
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ただ走ることが当たり前だった天才ランナー・優が直面する孤独と拭い去れない自らの出生の疑惑。
普通に孤独の天才ランナーだったのが駅伝という目標に向けて、変化していく過程を描くだけでもよかったような気もする。
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天才ランナー優の成長と挫折と復活の物語。ああいう形も復活と呼んでいいだろうと思う。好きだな、こういうの。
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アスリートとして最高の資質を持つ主人公、優。今までの人生、走るためにかけてきた。自信満々な優は仲間となじもうとしない。アスリートにはチームワークは必要ないと思っていた優。しかし、自分が遺伝子を操作して出生したことを知る。DNA検査がある箱根駅伝には出場できない。選手を辞退した優には仲間のサポートをしなければならなくなった。箱根駅伝に懸ける仲間と触れ合う内、閉じかけていた世界が開いていく。
遺伝子操作問題が唐突な気がした。ただ、この問題が現実となるようなもうそんな時代なのかもしれない。
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何て爽やかじゃないスポーツ小説。でも面白かった。遺伝子技術は本当にここまで発展しているのだろうか。だとしたら物凄く怖い。
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おもわず購入した動機は、その日が初フルマラソン挑戦の3日前だったから。
『目標はオリンピックの金メダル 箱根駅伝は通過点 仲間なんか必要ないはずだった…… 天才ランナーを揺さぶる血の秘密 行け!走れ!誰がなんと言おうと走り抜け!』
ストーリーはありきたりという人が出そうだけど、それも納得のうえでいい作品! きっと、キャラクターが鮮明に描写されているから、物語中に入っていけるし、自分なりの映像を浮かべることができるし、展開よく進んでいくからおもしろく、スラスラ読めるよ!
いきおいで買ったけど当たりだった★表紙もかっこいい★
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風が強く吹いてる、一瞬の風になれ、と続けて陸上ものを読んだ後では、アスリートが主人公でもちょっと調子が狂ちゃって。スポーツ=青春とか思わないで読んだ方がいいかも。面白くないわけではないです。桂さんの他の本とも雰囲気が違うような...。
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私はマラソンがよく解らないのですが、走ることって単純で、象徴的な感じ。
これを読んで思ったのは、性能や性質と、性格の関係でした。よくある主題のように心を持ったロボットのような。
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箱根駅伝の話と聞いて読み始めたけれど、なんだかあまり気持ちのいい話ではありませんでした。才能のある子どもが欲しくて遺伝子をいじったとかいじらないとか。親にとって子どもってなんなんだろうと思ってしまいます。
2007/02/25
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熱いスポ根系青春小説かと思いきや、ちょっと違いました。主人公の優は天才アスリートなんだけれど、プライドが高くて自己中心的で周囲の人間を見下して…めちゃめちゃ嫌な奴。こんな奴が主人公で、この先読み進められるのか?と不安になりました。だって優の言動に、いちいち腹が立つんですもの…。
でも何とか読み進められたのは、優の同級生・岩ちゃんこと岩本くんのキャラがあったから、かも。優を大きく変えたのも、岩ちゃんを筆頭にした“仲間たち”ですし。岩ちゃん、とっても良い子ですね!
そして、優の気持ちを揺るがす遺伝子の問題。まだまだ多感な時期にこんな問題が浮上したら…私だったら100%潰れちゃいます。その点、優はすごいです。泣きはしませんでしたが、グッと来るものは確かにあったと思います。
ただ、物語の展開的には同氏の「県庁の星」と似たような感じで、そこがちょっと残念です。それなりに面白くはあったのですが、「県庁〜」を読んだ私には新鮮味が感じられませんでした。
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要は「仲間を大切にね」という道徳的な物語なのですが、でもこの大団円っぷりは好みです。
なにか伝えたい事がある場合、アプローチの仕方は幾億通りも存在して、その中で一番実直な方法を選んでいると思う。
それは未熟さ故かも知れないけれど、でもだからこそ胸に迫るものがある。
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はじめはスポ根小説かと思ったけど、全然違いました!現代医学にさりげなく警告を与えているいい本だと思います。
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プロフェッショナルに自分を鍛えて自己管理をし
高みを目指すためには仲間などいらない。自分は
人とは違う。オリンピックで金メダルをとるのだ。
箱根はそのための通過点
仲間なんか要らない・・・
孤高の天才ランナー岡崎優。
って、かなり傲慢な主人公です。
早くどっかで挫折しろよ! と、ちょっぴり意地悪い
気持ちで読んでいたら、あら、まぁ・・・
へぇーーーー
出生の秘密ねぇ。
そういう展開だったのね、と、ちょっと予想が外れました。
確かに近い将来そういうこともおこりえるのかも?
そうなってくると、誰にも相談できず孤独感でいっぱいの
主人公がなんだかとっても悲しく見えてきます。
友人の岩本!!!!! 良かったよ、君がいてくれて!
読み始めた時は( ̄ヘ ̄)ウーンいまいち? と感じたけれど
出生の秘密が明らかになった頃から面白くなってきました。