紙の本
アリスが三人いて、それが同じ人間じゃあないなんて、解説を読んで初めて知りました。わたしは大学生のアリスがいちばん好き
2006/12/26 20:05
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
実は、新着案内でこの「現代ミステリー短編集 清張から有栖まで」と銘打ったシリーズの存在を知った時、焦ったんですね。有栖川有栖もですが泡坂妻夫の名前もあるじゃありませんか。で、カバーがなんとも素敵なんです。黒い太目の縁取りのコーナーに、緑と赤を上手く配して、昔あった幻影城の単行本を思い出したりします。そういえば、あれも泡坂さんだったし・・・
そして何より縁取りされたカバー画が、とてもいいんです。こう、子供心を擽るっていうか、???何?「小学校高学年から」っていう注は。もしかして子供用に書かれていたせいで、単行本未収録だった埋もれていた作品?疑問が一杯ですが、このカバーとタイトル、そして同時配本の泡坂妻夫『トリュフとトナカイ』を目にしたら手を出さないわけにはいきません。
で、実物を手にしました。大人の本よりは若干大きめのA5判 20×16cmという版型です。活字も大き目。で、漢字には丹念にルビが振ってあります。いかにも小学生向き。町田 尚子 (マチダ ナオコ)描く可愛らしい絵は、カバーだけではなくて本文中にも効果的に配されています。こやま たかこの装丁も、しっかりしていて好ましい。早速、読みましょう。
目次からタイトル、( ) 内に初出、それに簡単な内容紹介をしておきます。
・やけた線路の上の死体 (『創元推理-17』/東京創元社):夏休み、英都大学推理研のアリス、江神二郎、望月周平、織田光次郎の四人が和歌山県の南部という場所で出会った鉄道事故、それが殺人事件と分って
・ローカル線とシンデレラ (『山伏地蔵坊の放浪』/東京創元社):山伏、地蔵坊が語りだしたのは、ある山間のローカル私鉄での出来事だった。女優を乗せた電車に乗り合わせた地蔵坊は単線の線路に置かれた石による遅れに巻き込まれて
・動物園の暗号 (『ロシア紅茶の謎』/講談社文庫):32歳になったアリスと33歳の英都大学社会学部助教授・火村。二人は大阪府立阿倍野動物園で起きた飼育係の死の謎、被害者が右手に握っていた紙片に書かれた文字に首をかしげて
・落とし穴 (『ジュリエットの悲鳴』/角川文庫):結婚話が順調に進んでいる苗川正晴は、大嫌いな男に弱みを握られて
解説は全10巻すべてを山前 譲が書くようです。
詰まらんこってすが、本書では底本の紹介で、「やけた線路の上の死体」について(『創元推理-17』)/東京創元社)というように、/東京創元社)の前に「 )」が余分に入っています。単純なミスでしょう。それはさておき、埋もれた名作、子供のために書かれた作品、じゃあないんですね。全部、大人向けといっちゃあなんですが一般人相手に出版されたミステリ集から採られています。
底本と違うのは、ルビとイラスト、字のサイズだけ。地図だって時刻表だって、線路の略図だって底本そのまま。これだけはルビなしなのでちょっと違和感がありますが、いいです。だって手抜きは全くないんだから。しかも、私が読んでいない本から採用された作品ばかりなので、新鮮です。ルビつきの本がこんなに読みやすいなんて、知ってました?
私は子供向けに書かれた本を読むことより、大人向けの一般書にルビと挿絵をつけてあげることのほうが児童の読書離れを防ぐし、大人にとってもそのほうが、漢字力がついていいんじゃないか、そう思っているんですが、さしづめこのシリーズなんかはその好例じゃあないでしょうか。
ミステリとしての水準の高さ、手にし、読む楽しさも十二分に味わえて、しかも収められた作品のラインナップがいいです。今から楽しみなのは松本清張作品ですね。このやり方で、清張作品は子供でも楽しめることが証明されるのか。我が家の高校生娘たちがどういう反応を見せるか、待ち遠しい。もしかすると、講談社のミステリ・ランドの牙城を脅かすのは、こっちかもしれません。
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一緒に収められている「焼けた線路の〜」(EMCが出てくるのでね!)を目当てに買ったのだけど改めて作者の人の悪さを再認識した。
小学校高学年はこれを手にとって何を考えるのだろう?
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『やけた線路の上の死体』 江神二郎シリーズ
『ローカル線とシンデレラ』 地蔵坊シリーズ
『動物園の暗号』 火村英生シリーズ
『落とし穴』
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有栖川さんはこれが始めてになります。
読みやすいよ〜と薦められてたのですが、確かに読みやすい♪
でも犯人分からない♪
いつもの事ですけどね…。
最後に入っていた話以外は『有栖川有栖』という主人公の視点から語られています。
作者さん? と思ったのですが、それも違うよう…。
最初の話の電車を使った時刻表殺人は
図の時刻表を見守っていけば分かったでしょうが
あの細かいのを見るのが…無理です。
一番気になったのは、題名のお話です。
動機と犯人は分かったのですが、動機の内容が分からない!
ちょっとその辺りをさらっと書いてくれないかな? と。
答えだけ分かっても、式がないと算数は点数くれないですよ!w
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小学生高学年向けのミステリ小説かなと思いました。
字も大きく、読み仮名も振ってありましたし。
だからと言って、内容は子供向けというわけでもなかったです。
短編4編はそれぞれ他の本からのもので、「動物園の暗号」は火村・アリスシリーズの作品でした。
意外なとこで(というのは変ですが)、火村・アリスコンビに会えたので妙に嬉しかったです。
「やけた線路の上の死体」は学生アリスの作品でした。
自分は今回初めて学生アリスの作品を読みましたが、良かったです。
「ローカル線とシンデレラ」は山伏地蔵坊の作品で、主役が山伏である意味はよく分かりませんでした(笑)。
この山伏が主役の本はまだ読んだことが無かったので、次回読みます。
「落とし穴」は犯罪者目線で、最後の結末が好きです。
満足度は★★★★☆。
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この本を読んで初めて有栖川さんを知りました。
読みやすくて、面白かったです。
他の著書も読んでみようと思って、今、国名シリーズを読みあさってます♪
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初めての有栖川有栖さん。気軽に読めるミステリー短編集だった。4編中3編は鉄道ものや鉄道絡み。もう1編は犯人視点。天王寺駅やきのくに線、『阿倍野動物園』こと天王寺動物園が出てきたり、親しみやすかった。有栖川さんが大阪ご出身でいらっしゃるからかな。トリックもわかりやすく説明されてて、もやもやして終わることはなかった。これを皮切りにまずは、学生アリスシリーズ、作家アリスシリーズ読んでみたいな。特に、『46番目の密室』と『ロシア紅茶の謎』。
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動物園の飼育係が奇妙な暗号を残し、猿山で殺されていた。その謎を解くことで犯人を探りだす、表題作「動物園の暗号」はじめ、「やけた線路の上の死体」など謎解きの面白さをいかんなく味わうことのできる、本格ミステリー作家の珠玉短編全4編を収録。(「BOOK」データベースより)
動物園の暗号
やけた線路の上の死体
落とし穴
ローカル線とシンデレラ
全然知らずに、図書館で予約して手にしたのですが、これジュブナイルでしたねえ。
小学校高学年向けだそうです。
「やけた線路の上の死体」が読めてうれしかったけど、それ以外は既読の作品ばかり。
でもすぐ忘れちゃうので、どれも面白く読めました。
字も大きくて、読みやすいはずなのに、なぜか時間がかかってしまいました。
ていうか、小学生、こんなの読んで大丈夫?
まあ、考えてみれば、私も横溝正史とか読んでたなあ。
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2年ほど前になるが、1人の生徒が有栖川有栖のファンで、恥ずかしながら私は読んだことがなかったため、丁度書架にあったこの本を読んでみた。
短編ながら、読み応えがあり、緻密な計算というか硬派なミステリーだなぁと感じたことを覚えている。2019.5.2
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全て読んだことはあった短編だけど、改めて読んでも面白い。有栖川さんの時刻表とか暗号ミステリは大好き。いろんな主人公(大学生アリスや火村先生、地蔵坊)の作品なのも良い!
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図書館で受け取って表紙と文字の大きさに驚いた。児童書だったか、と思って読みはじめたが既読感のある話が多い。
「やけた線路の上の死体」(学生アリス&江神)
自殺に見せかけて遺体を列車に轢かせた犯人は、いつどうやって遺体を線路上に置いたのか?
「ローカル線とシンデレラ」(山伏地蔵坊)
アイドルが乗車している上り列車と同じ時間帯に下り列車で殺人事件が起きた。犯人は唯一離合出来る駅でアイドルが乗車する列車に乗り込んで逃げたらしいが、その話に地蔵坊は疑問を感じる。
「動物園の暗号」(作家アリス&火村)
動物園の猿山に突き落とされ死んだ飼育員は、手に動物の名前を並べた紙を握っていた。その紙は生前、被害者が作った暗号らしいが犯人を示すものなのか?
「落とし穴」
弱みを握られた同僚を殺すために様々な仕掛けを凝らし見事殺害を成し遂げたは良いが…。
久しぶりに読んだので既読作品も詳細は忘れていて楽しめた。小学生高学年向けらしいのでトリックや暗号がテーマでワクワクする。最後のブラックな話など、小学生向けとしてはどうなのか?と思うものもあるが、面白かった。
ネタバレになるので共通テーマを書けなくて残念。
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表紙は町田尚子。鉄道に纏わる事件。
1.やけた線路の上の死体:学生アリス&江神先輩
2.ローカル線のシンデレラ:山伏地蔵坊
3.動物園の暗号:探偵火村英夫
4.落とし穴
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「やけた線路の上の死体」
浮浪者が〜という話になんだか時代を感じます。都会の方にはまだいると聞きますが、地方は収容されて姿を見なくなった印象です。
「動物園の暗号」
大阪への旅行の際に、モデルとなったと思われる天王寺動物園に行ったことを思い出しました。(作中は近在地名の、阿倍野動物園)
はて猿山なんてあったかしら?と調べてみると、過去にはあった様子。ただ作中の描写とは違いそう。
1968年、猿の大脱走事件
ドーム型のフェンス設置
2004年、結核により猿が死亡
2005年、隔離した猿の感染疑い継続、治療が難しいため安楽死処置
その後ニホンザルの飼育は無し
2020年、猿山施設解体
新ペンギン・アシカ舎を建設中(2023年オープン予定)
私が訪問した頃には猿は既にいなかったようで、それもあって印象に残ってないのかも。
実際には存在しない風景ながら、周囲の描写などは記憶に残るものと一致しているところもあり、通りがかったような気のする不思議と懐かしい思いを抱きました。
【通天閣の向こうが茜色に染まって、そんな子供たちの歓声が満ちた日中の賑いが去ると門が閉ざされる。】