紙の本
切り口は面白いのだが・・・。
2007/01/23 22:56
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「昆虫にとって○○とは何か?」という28項目の問いかけによって、昆虫とそれを取り巻く文明の関係を探った一冊。
著者は、自称“カメムシ採集人”の農学博士。本書で書かれている「昆虫マニア」とは、他ならぬ著者自身のことであろう。珍しい昆虫を求めて日々採集と研究に励んでいる。
表題の他、「車とは何か?」、「小さな公園とは何か?」、「昆虫マニアとは何か?」、「生まれてきた目的とは何か?」等、昆虫に対しての○○の意味を問いかける章タイトルとなっているが、著者の眼差しは、○○の背後にいる私たち人間に向けられている。「○○とは何か?」と掲げつつも、昆虫に対する影響力としてはそれほど重要視しておらず、逆説的に持論を展開しているのだ。
例えば、執拗に自分たちを追い求める昆虫マニアは昆虫たちにとって憎むべき相手であるが、人家や、オフィスビルや、道路や、ゴミや、汚染された空気などを作り出す、ごく普通のありふれた人間たちの方が本当は脅威だと、著者は述べる。
最初は、「なるほど」と納得しながらおもしろく読み進めることができた。しかし数章読むと、問いかけは異なっても導かれる結論が同じなので、少々うんざりしてくる。結論は最終章で述べれば十分なのではないだろうか。この切り口なら、もっとおもしろく書けるはず、と残念である。
もっとも、舌をかみそうな名前とともに写真付きで紹介される昆虫のコラムは、ユーモアたっぷりで、昆虫への愛情が伝わってくる。著者の筆は、単純に昆虫の生態を書いている時の方が生き生きとしていると思う。「昆虫にとってペットの糞とは何か?」の、糞虫のエピソードには思わず笑ってしまった。
著者の言うように、ことさら「エコ」を振りかざす“自然保護主義者”の主張には私も共感できない。
けれど、人間が引き起こしている急激な環境変化と、これまでの進化の過程を同列に扱っていいものだろうか。たとえ変化の中で新種の生物が生まれてくるとしても、私たちが現在享受している利便性を手放すことが困難だとしても、楽観視してもいいということにはならないと思うのだが。
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ある時は地に這い蹲り、木片や枯葉を引っ掻き回すといった非常に低く近距離の目線から、たちまち高みに昇り人間社会、地球環境といった神の目線まで到達する視点の高低差がとても楽しめる一冊。
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目次を見ると、『昆虫にとって●●とは何か?』と28項目。
普通そうなものから、なぜこの2つが結びつくの?という、意外なモノまで。
昆虫と人間の性欲のつながりで、どうやって話しを展開しているのか?
面白そうだったので。
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昆虫視点で人間環境をうきぼりに。非常に考えさせられるところがあった。
マイナー昆虫を紹介するコラムが面白かった。
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日本だけでも3万~10万種の虫。虫が小さいのは酸素の取り込みが、その拡散に頼るため。古代は酸素濃度が濃かったため大型昆虫がいた。ウンカとヌカカってあのよく見る羽虫か~。イガラムシは絶対虫と気付かない。しかしマニアってどんなジャンルでもすごい人がいるもんだ。ちなみに子供の時、ミナミアシナガサシガメが突然、室内にいたときは、新種の虫を発見したと思って興奮したけど、マニアにしたら当たり前の虫だったのね。
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昆虫とにとって⚪︎⚪︎とは何か。
28の話で構成。
虫屋さんってどんな生き物かがよくわかります笑
うんこでテンションが上がる。コンビニに集められる。などなど虫が好きな自分からするとあるあるがたくさん。
採集圧による絶滅の可能性があることはみとめた上でほとんどの虫は採集で絶滅させることはできない、むしろその他の人間の活動の方が影響が大きいなど昆虫採集は自然破壊だという人には一度よんでもらいたい。
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人間の生活が便利になるにつれて昆虫の居場所が少なくなった。しかし、昆虫にとって不利なことばかりではなさそうだ。船が出来たことで、今までは生息していなかった場所での繁殖に成功したものや、家に使われる木材を住処・食料として生活しているものもいる。人間と昆虫の関係を、昆虫の目線からのぞくとおもしろい事実がたくさんある。
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所謂マジョリティではないのでしょう。多様な視点、視線から書かれています。思ったことを思ったままに書いている様子が伝わってきます。筆に随うってこういうことか、と思いました。
自分をマイナーに属すると思う人は、時に開き直って傲慢になり、時に卑屈になり、なんだか、話を聞くのが苦しくなる時があるのですが、筆者の事実を淡々と述べそこから考察されることを独特な表現で述べられるところは、傲慢とか卑屈とかそういうものからは遠いところにあります。その位置づけがとても面白い。
多分、同じような視点から、●●にとって○○とは何かと自分に問いかけると、世の中がどんどん面白くなっていくのではないかと思いました。
世の中を面白く見るための入り口になる本、です。
帯に「ちょっとひねくれて自然論」とあります。読んでいるときはそういう感じもありましたが、読了してみると「とても真っ当な自然論」に思えます。
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農学博士であり、害虫防除を研究する著者が書く、昆虫の生態についての生物学的エッセイ、、、かと思いきや、もすこし過激な内容でした。
もちろん昆虫の生態にも触れますが、タイトルで分かるように、昆虫と人間のかかわりを通して自然環境を都合よく変えてきた人間に対する批判が、著者のストレートな物言いで展開されます。
目次を見るだけでも興味が湧き、序盤は「昆虫にとって車とは何か?」「昆虫にとって船とは何か?」「昆虫にとってゴルフ場とは何か?」と内容がなんとなく分かりやすそうですが、後半は「昆虫にとって名前とは何か?」「昆虫にとって戦争とは何か?」「昆虫にとって生まれてきた目的とは何か?」「昆虫にとって人間の持つ価値観とは何か?」と禅問答めいた章タイトルが並び、読み進めるたびにワクワクします。
そして何より著者の物言いが個人的には面白く(それが受け付けない読者もいることでしょう)、オモロイおっちゃんやなあ、と親しみが湧きました。昆虫マニアへの同情と、昆虫採集禁止論者への隠す気のない憎悪、そして人間にとって都合のいい自己満足程度でしかない自然保護活動に対する冷ややかな目線。
エッセイ・読み物としてはこれくらい著者の考えが濃いめの味付けで編まれているほうが刺激的で、たまには面白いなと思います。