迷いながら決断した結果がソニー衰退のトリガーになった。
2007/02/04 10:13
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みち秋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1995年。コンスマーエレクトロニクスの全盛期が終わり、インターネット時代が始まろうとしている時、出井氏はソニーの社長に就任した。
時代の変化を予感して、ネット社会に適合できるようにAV/IT路線推進、ネット事業への進出など、事業の軸足を移すためにさまざまな経営方針を打ち出した。
創業世代との軋轢、自由闊達な企業風土の中で、改革を断行し新しい会社へ脱皮でき、初代生え抜き社長としての重責は達成できたと胸を張る。しかしソニーは経営不振に陥っている。その経緯についてはソニーの内部告発書( ソニー本社六階 技術空洞)を併読すると不振の真因が浮き彫りになってくる。
一般的には映画、音楽、金融と事業を拡大しすぎて本業が手薄になった経営ミスを指摘する意見が多い。本書からは二つの原因が読み取れる。経営陣がモノづくりの核心部を理解していない事が、社員との対立を深め、求心力が失われていったと同時に業界構造が垂直産業から水平産業化したことが逆風になり衰退に拍車をかけた。次に間接的要因として出井氏のスノビズム(高慢、気取り、虚栄)が障害となり愚直に取組むものづくり企業のトップとして本業に専念できなかったのではないかと憶測する。
03年4月株価急落(ソニーショック)は「大きなミスティクだとも思わない。ただ決算の数字の意味を正しく理解してもらえなかった」と弁解する。
また液晶TVの市場投入が遅れた件に至っては、「これくらいの誤算はたいしたことはない。液晶パネルは合弁化によりトップ企業の一角を占めている」と戦略を正当化する。
液晶パネルの自社開発に成功してTV業界を独走しているシャープを見るとき、自社開発が失敗に終わり市場投入が遅れたことは重大な経営ミスであることは謙虚に反省すべきではなかろうか。さらに加えれば、「既に「技術のソニー」ではなく「マーケティングのソニー」 に変質しており、技術の空洞化は有り得ない」と詭弁を弄する。
このように危機感、緊張感のない微温的体質が露呈されグローバル企業のトップとも思えない唖然とする意見が多々ある。全体を通して責任転嫁、詭弁、正当化などの抗弁が目立ち、自らの経営戦略はどこよりも先見性が有り優れたものであると強気を貫く。
ものづくり企業といえば質実剛健、油と汗の臭いのする企業風土を感じるものであるが、出井氏の文章には現場、人材育成、技術開発、品質向上の、ものづくりのキーワードが表記されていない。これだけでも出井氏はものづくり企業の経営者としての資質にかける面があったのではないかと勘ぐりたくなる。
しかし出井氏は被害者かもしれない。時代が大きく転換する中で、先代からの多額な負債を押し付けられ、創業世代と敵対しながら改革と同時に業績を上げねばならない重責を負わされ、時代の流れに翻弄され名声と罵声を浴びせられた不運な経営者であったかもしれない。
本書はグローバル企業といえども経営トップの一寸した判断ミスが経営不振の起爆剤となる厳しい時代であることを再認識させる。
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮内亮治著『虚構 堀江と私とライブドア』に株価が暴落したソニーを「虚構の株高」で時価総額が異常に膨らんだライブドアが真剣に買収しようと目論んでいたことが記されている。堀江曰く「今のソニーには経済が不在。このチャンスにソニーを乗っ取って、ライブドアの傘下に世界的ブランド『ソニー』を組み込む」予定だったんだとか。結局この壮大なる計画は資金調達が上手くいかず、先に手を出したニッポン放送買占めが泥沼化する中で頓挫してしまうのだが、堀江というのは、ある意味で優れた視座をもっていた男だと思わせるくだりである。堀江をして「今のソニーは経営不在」と言わしめた当時のソニーの経営者こそ、本書の著者・出井伸之である。出井はソニー史上、最悪の経営者として末代まで語り継がれるのではないか。ゲーム機PSが「たまたま」当たったことに味をしめて、「これからはハードではなくソフトの時代」とうそぶき、「デジタルドリームキッズ」などとほざいて派手なパーフォーマンスを繰り返す中で、ソニーの家電製品はその質をどんどん落とし、薄型テレビの市場に完全に乗り遅れた。苦し紛れに打ち出した「有機ELテレビ」は何時までたっても商品化せず、その間に液晶テレビはシャープに、プラズマテレビはパナソニックに乗っ取られてしまった。バブル期大ヒットしたPC「VAIO」も後が続かず結局は消費者から見放されるも知らん顔。本来ソニーが世に問うべきICレコーダーは今やアップルのアイポッドの独壇場となってしまった。「どうしたソニー」と叫びたくなったのは私だけではあるまい。すべての責任は、この無能経営者・出井にあることは明らかだが、本書では出井は苦しい責任転嫁を繰り返すのみで、自らの経営失敗、経営責任を認めようとはしていない。そうなのだ。人間は失敗を認められない存在なのである。だからこそ「マーケット」の力を借りて「物言う株主」「物言うファンド」が株主総会を舞台に無能経営者に退場を迫ることは、必要なのである。しかし、腐っても鯛である。いつの間にか液晶テレビの分野でソニーが遅れて出したBRAVIAは徐々にそのシェアを広げている。ソニーのブランドは、まだ死んではいなかったのである。出井はようやく退場した。日本が生んだ世界的ブランドであるソニー。無能経営者を退場させた後の奇跡の復活を私は信じたい。
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SONY製品が大好きな俺としては気になる本なので読書。
出井さんがSONYで何を考え何を決断し、そして何に苦悩したかをつづった本。
管理職は部下が増えるほど苦悩も増えると思うが、ソニー16万人の頂点になるとすさまじい苦悩だったみたい…。
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出井さんがソニーを率いてきた10年間の迷いと、決断。
周りからの反対に押されて企業売却の決断を覆してしまったり、夜も眠れずに睡眠薬に頼ったりと、出井さんの「迷い」の部分が非常によく描かれていて、ついつい引き込まれてしまいます。
時間を無駄にしない。本質を追求する。やるべき以上のことをやる。
やっぱりそういうのって、大事ですよね。
サイバーエージェントの藤田社長が、この本を「島耕作みたい」ってブログで紹介していたのですが、期待を裏切らず、まさにそのとおり!
tabyは経営者ではないけれど、日々の仕事にも経営センスをもって取り組みたいと
思いました。
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前ソニーCEOである出井さんの著書です。ソニーという世界規模の企業のトップとして下してきた様々な決断。その決断に至るまでの迷いや考えが飾ることなく延べられています。15万人の社員を抱えた大企業のトップとしての決断の重さと責任は余人には想像し難いものです。多くの示唆を得ることができる一冊です。
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ソニー前CEO出井氏による著。役員になってからの出来事の回顧録。弱小株主としてソニーを注目していたので、決断の背景になに があったのかは興味深かった。前半は取締役になるまで、後半は社長になってからの経験が述べられている。今の自分に参考になったのは前半部分。
▼仕事には表の仕事(日々のオペレーション)と裏の仕事(大局的にものをみる。社内の人脈作り)
▼社内で好きな先輩を作る(代官山の小川軒でよくごちそうになった)
・コンスーマービジネスでは、新しい技術ができた時に潜在的なニーズを先取りして、コンスーマーの心をキャッチする商品開発に結びつけるセンスが必要
▼アメリカの様に水平産業にも携わるべき(日本はいまだに垂直産業がおおい)
▼悪知恵を上司に提言して誘導する
▼裏の仕事として独自にレポートをまとめ、自分の行動指針の理念とする。会社の弱点を客観的に整理する。
▼人脈をビジネスに生かす
社長就任以降のエピソードとして印象的だったのは、AppleとDisneyの買収を真剣に考えていたこと。AV機器はSony、IT機器はApple、コンテンツはDisneyブランドとすることを考えていたようだった。また、会長としてやり残したことが克明に述べられていること。
自伝は「私の履歴書」など多々あるが、引退して1年ほどのプロフェッショナル経営者の回顧録はとても参考になった。
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07年5月読 ソニー元CEO出井さんの話。うーん、正直「すごく」は面白くなかった。ソニーがどんな企業なのかはよく分かる。
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前CEOの出井伸之氏が自らが務めた10年間の任期を振り返り、どん底に落ちたSonyが出井氏の指揮の元どの様に復活してきたのか、そしてそのときに出井氏は何を考えて決断を下したのかを記した本。
特に自慢するわけでもなく良い面悪い面両方を冷静に書き記している。出井氏の経営手腕を客観的に批評したものは多くあるが、出井氏本人の口から各々の決断の背景を語っているところに本書の価値はあると思う。 非技術屋でありたたき上げの出井氏は、最終的には辞任してしまったが、経営センスのある先見性を持った人間であることが本書で分かる。
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walkmanのSONYが、iPodのAppleに負けた理由は、大企業だからと。電子機器以外にもいろんな産業を抱えていることが、SONYの強みであり、弱みである。
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元ソニーCEOの出井さんの近著。
出井さんの人間としてのすばらしさと(←僭越ながら・・・)
経営者としてのすばらしさを感じる本でした。
16万人の従業員のトップとしての迷いと決断は、
いちサラリーマンの自分が想像するには余りありますが、
自分の失敗も悩みも、率直にまるで隣で語りかけていただけているよう。
出井さんとは2回、近くでお会いしたことがある。
(というか、控え室に入れてもらった程度、というのが正しい。
1回目はJSkyBの設立発表会のとき、2回目は99年のコムデックス。
2つとも話題として本著に出てきている)
非常にスマートで、信頼感のオーラと厳しさのオーラを放っている人
という印象でしたが、読みながら、お姿拝見したときのことを思い出しました。
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おととし企画で呼ぼうとアイディアが出た(結局は別の人になったが…)際に、筆者の勉強として読んだ本を、あらためて読んでみた。
第1章にて、筆者がCEOになる経緯を述べる。続いて、就任当時のソニーの状態分析を、そして3〜4章では自らが行った経営を述べている。そして5〜7章でその時感じたこと・失敗したこと・今後やりたいことを記述している。特に5章以降から、自分が思う経営とは?や、グローバル経営に必要な視点、カリスマ的な商品が生まれるには?、経営の最大なる誤算を生む物は「時間軸の誤差」である、など自らの経営での哲学が非常に面白い。
これを読んで考えた経営に必要な事は、
?明確化 ?最適配分
?切り捨て ?共通化
となろう。明確化とは、誤解なきように説明する責任があるという事。最適配分・切り捨てとは、経営資源をいかに適切に配置するのか?そのためには事業を切り捨てることをいとわないようにするという事。共通化とは、例えば、異なる財務体制の事業を複数抱えているときに一つの事業でしか使えない会計ではなく、共通して使えるものを使うように、組織内で共通した評価軸を作っておくべきであるという事。
普通にためになります。
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全世界16万人を率いるプレッシャーは数え切れないほどの夜を過ごしたという。タイトル通りの迷いと決断の連続、手探りで進んでいく様子は、人間として生きていく面白さと勇気を与えてくれる。
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・経営
バランスシート重視の経営
それまでは意欲だけで投資
IT化への舵取り
コンバージェンス(融合)
エレクトロニクスとエンタメをくっつける
・ソニーの柱
エレクトロニクス、エンターテイメント、サービス
・クォンタムリープ
CEO引退後設立した会社名
掛け算の発想
量子力学 連続線上にないジャンプのこと
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[ 内容 ]
前CEOが自ら語った「出井改革」の真実。
決断するまでは、誰しも迷う。
ましてや従業員16万人、売り上げ総額7.5兆円の企業の運命がかかっているのならば……。
一社員から、ソニー初の「プロフェッショナル経営者」として社長に就任した著者は、瀕死の状態だったソニーの立て直しに成功する。
そして、コーポレート・ガバナンス改革を実践し、精緻な企業戦略を練り上げ、さらなる改革へと突き進むが……。
前CEOが、初めて語ったソニー経営の内幕。
[ 目次 ]
第1章 「CEO出井伸之」のできるまで
第2章 「生存率50%以下」の会社
第3章 手探りのコーポレート・ガバナンス
第4章 AV/IT路線とコンバージェンス戦略
第5章 CEOの孤独
第6章 やり残したこと
第7章 新しい夢と出発
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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今更だからどこまでが真実かわからんから
なんともいいようがないね。
でも確かにSonyのトップはものすごい
重圧だったと思う。大変だったろうな〜。
ちなみに自分がシリコンバレーの会社に
勤めているから出井さんの言うことは分かる。
ある意味、Livedoorとかの同じで
□Enduserにサービスをインターネットを介して
シームレスにどんなデバイスでも提供する。
□そのプラットフォームベンダーにSonyはなりたい
ということでしょ。前から、分かってたよ。
出井さーん。