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芥川賞受賞をきっかけに、著者の小説を初めて読みました。
いやあ面白い。
私小説を超えて、ほとんど回想録みたいだ(笑)。
「けがれなき酒のへど」は恋人欲しさの一心で風俗嬢にアプローチをかけ続け、手痛い失敗を喰らうエピソード。
「暗渠の宿」は、ついてに手に入れた恋人に対して、身勝手な支配欲を抑えられなくなっていく自己嫌悪に満ちた記録。
その姿を嗤い非難することは簡単だけど、男ならどこか共感せざるを得ない煩悩が赤裸々に映じられているがゆえに、読んでいて微かな胸の痛みを感じるような。
この率直さは貴重です。
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どこまで北町貫多が西村賢太なのかは分からないが、歳を重ねるにつれ手の施しようがなくなっている。いくら私小説といえど、エンターテイメントの部分もあろうが、妙にリアリティが感じられる。
かの作者は無頼派、反リアリズムなど呼ばれ、聞こえはいいが、端的に言うと屑である。
自己正当化による暴力もさることながら、性欲のまま生きるその破滅的生活に嫌悪感があふれ出る。
それでも頁を繰ってしまうのは流石売れっ子芥川賞作家だ。青年期を書いた作(苦役列車・蠕動で渉れ、汚泥の川を)はまだ楽しめたが、ここまでくると正直しんどい。
逆に考えるとよくここまで曝け出せるなといった感想。
「一私小説書きの日乗」シリーズにもあるように、その後の彼も無頼漢であり続けていた。
ただ、今作で愛情や温もりを求めていた心証から、無頼漢といっても先は諦観があったのだろうとも思われる。
人は人に傾倒すると強くなれるものだな、としみじみ思う。悪態をついているようだが、私は彼の生き様に憧れの様な感情を抱いているし、羨ましいとも感ずる。
惜しい人を亡くしたなど無粋なことも言わない。
素晴らしい生き様であった。
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生涯独身、中卒の芥川賞作家、西村賢太、本年2月5日心疾患で急逝、享年54。「暗渠の宿」、2006.12発行。「けがれなき酒のへど」と「暗渠の宿」の2話が収録。前者は風俗の女性に約100万を騙される話。後者は滝野川のやや王子寄りの宿で女性と暮らすも暴言と暴力で・・・。
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この人の作品は書いてる事がほとんど同じだね。数冊読めば十分というところ。私小説ならではの読みやすさもあり、本人が言う様に作者の血や肉を感じる作品でもある。ただ、作家には想像力や創造力も必要だね。それが無いと同じテーマでしか書けないんだなと思った。