マンネリを越えた定型パターンとストーリー展開の彩なす妙
2007/03/18 21:31
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
おなじみ内田康夫の浅見光彦シリーズである。今回の舞台は北海道と北陸である。これらと地縁がないからといって、読まないのは損をする。
父親から娘に学資は心配するな。俺が何とかするから勉強をしっかりしろ、と言われたら何かしらの当てがあると考えるのが普通である。ところが、父親は金の無心に行ったきり帰宅しない。心配していると、突然の訃報が来る。
こんな風な書き出しで始まる。日常的ではないが、小説だから許そう。このシリーズでは浅見が取材している地方の博物館や資料館が登場することが多い。今回も余市にある洋酒メーカーの資料館である。ヒロインはこの資料館に勤務する案内嬢である。
最近は、地方都市に赴くと立派な美術館や郷土の資料館、見学を兼ねた企業の展示館などがどこへ出かけても必ずあるようだ。平松知事の一村一品運動ではないが、郷土の名産品や他の地方にはない特徴を探すことはたしかに地域の活性化につながることだろう。大いに盛り上げてほしいものだ。
美術館や展示館などのハードの建設はもうたくさんという向きもあるようだが、目的がハードの建設では意味がない。それはもう過去の地方行政である。大規模な資料館を作り必要もないし、金をかけて美術品を集める必要もない。地域に根付いた活動の拠点であったり、その地方で育った芸術家を顕彰することでもよい。そういうことに金をかける意味は十分にある。
浅見光彦の活躍は、戦前から戦後にかけて活躍した大女優との縁が鍵となる。この鍵がストーリーのクライマックスになるのだが、さすがに面白く描いてある。内田康夫の描き方は、いつも本人が解説で述懐しているように、行き当たりばったりだそうである。最初から筋立てを決めて、肉付けするという方法ではないという。それでよく辻褄があうと思うほどである。
それがかえって意外性を生んでいるのであろうか。もうこのシリーズは映画『男はつらいよ』と同様、パターン化されているので、余計な道具立ては必要ないのかも知れないが、マンネリを乗り越えてよく続くものだと感心させられる。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
余市から始まり、松前、加賀橋立、下関と、松前船をめぐる物語。
哀しくも美しいストーリーです。
三井所園子さんが、またどこかで浅見光彦と会えることを願って。
投稿元:
レビューを見る
北海道は余市の人間が加賀の海で殺された。事件から5年後に友人の頼みで、乗り出すことになった浅見探偵。
一体の古い素焼き人形を起点として、浅見探偵の出向く先々に手懸りがころがっているという、相変わらずの行き当たりばったりのご都合小説でしたが、次第に明らかになってくる「清貧」な人間関係の描写にはホロリとさせられてしまいました。ベストセラー作家の面目躍如でしょう。
シリーズ作品としてパターン分析すると、真犯人が公表されないまま、うやむやになってしまう。という、最近(といっても文庫本しか読んでませんが。。。)の傾向を踏襲。毎度の浅見刑事局長の弟さま。。。のくだりがなくて、おふくろさんの物分りが良過ぎる点が、微妙なゆらぎでしょうかね。
平成15年(4年前)の作品で、浅見探偵の車にもカーナビは定着してきましたが、携帯電話は依然所有してないようで、最新作はどうなんでしょうね。
2007/3/14
投稿元:
レビューを見る
浅見光彦物。
加賀の海で水死体で発見された男性は余市の男性だった。
その自宅には「卯」の字が刻まれた素焼き人形が残っていた。
男性のかすかな足跡をたどって、北海道から九州、加賀へと。
旅情ロマン。歴史ロマン。
そして、過去の出来事が事件の発端という意味でも、これぞ浅見光彦!という感じで
面白かった。
それにしても、光彦が有名になってきている・・・。
投稿元:
レビューを見る
日本海から響く死霊の声――。北海道・北陸・北九州を結ぶシリーズ最大級の謎に浅見光彦が迫る。
加賀の海から水死体で発見された男。北海道・余市の自宅には、底に「卯」の字のある一体の古い素焼き人形が残されていた。事件から五年、かすかに残った男の足跡を辿る浅見光彦は、北九州・北陸・北海道を結ぶ長大なラインに行き当たる。それは江戸から明治期に栄華を極めた、北前船の航路と重なっていた。列島を縦断し歴史を遡る光彦の推理。ついに驚愕の真実が、日本海から姿を現す。
投稿元:
レビューを見る
テレビで放映される前に読み終えられた。番組になると、まったく違った作品になるんですけどね。また、これを読んでいて、全日本のルートマップも買ってしまいました。笑。
投稿元:
レビューを見る
5年前に殺害された男の死因や犯人を見つけるため、ルポライターの浅見が北海道から九州から全国に渡っていろいろ探しながら真実にたどり着いていく話。
どうやってこんな案が浮かぶんだってくらい設定が細かい。
主人公の浅見の着眼点は異常。
死んだ男が唯一持っていた土人形の裏の文字から当たってみようとは、普通は思わない。
普通はスルーするような細かいことが、結果的に原因を追求する素材となるのは、これが物語だからだと思う。
あとがきで、その場に行ってそこからヒントを得て内容を考えたらしい。
内容はともかく、内田さんの食事や風景や土地の様子の描写はいい。体験してみたくなる。
投稿元:
レビューを見る
⚫︎浅見光彦シリーズでかなり面白かった。
小樽をふりだしに余市、函館、札幌、山陰、九州と旅行している気分になりますよ。小樽の蕎麦屋さんや余市の海鮮食堂など旅の案内本にやや近い要素もオススメポイント。
⚫︎マッサンで有名な余市に有るニッカウイスキーの工場での案内嬢がこの物語の主人公になってる。今月この工場を訪れ案内嬢の女性に、この小説を知ってますかと聞いたら、知らなかったみたいです、しかしそのテレビ撮影で工場に撮影でクルーがきていたとのこと。早速小説読んでみると喜んでいましたよ。
投稿元:
レビューを見る
余市川 ニッカウヰスキー
松前
小樽-鶴賀 新日本海フェリー
加賀市 橋立
石川県山中町 温泉街 山中漆器
福岡県津屋崎町 津屋崎人形
下関 彦島