紙の本
実に魅力的なオオカミ復活論
2008/07/13 08:08
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビなどでご存知の方も多からんと思うが,最近各地でニホンザルやシカ,イノシシなどが殖え,人里に出現して市民生活に被害を出すようになってきた。奥日光では観光客がサルに襲われ,ニッコウキスゲやシラネアオイなどの希少植物がシカの食害で危機に瀕しているという。
筆者たちはこの現状を,彼らの天敵であるオオカミが1905年に絶滅し,以降そのニッチを埋めてきたニンゲンによる狩猟が下火になってきたことの結果と捕らえ,日本の生態系を建て直すには今こそオオカミを復活させよう,という市民運動展開中である。本書はその主旨に対して当然寄せられるであろう疑問(「復活と言っても絶滅してしまったニホンオオカミは日本の固有種ぢゃないの?」)や不安(「オオカミって『赤頭巾ちゃん』にもあるように人間の子供を襲うんぢゃないの?」)に懇切丁寧に答え,その有用性を説く……。
いやあのね,都会に生まれて都会で育った人は解んないかもしれないけど,オレの故郷とかでも最近はサルが殖えちゃって大変なの。オレがガキの頃,町中でサルを見かけるなんて一度もなかったのに,過疎が進んで年寄ばっかりになった街をサルの群れが我が物顔に闊歩している状態なんだって。
偉くて血の気の多いヒトたちが「そんな弱気では北朝鮮になめられる」とか「二ホンも核を持たないと中国に侮られる」とか言ってる間に,我々は足下でサルだのシカだのになめられ侮られて,生活を脅かされているヒトまで出ているの。オレ自身も東京に住んでのほほんとしてる,偉そうなことは言えないのだけど,このこと,みんながもっと真剣に考えなくちゃあかんと思う。
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題名の如く、森林にオオカミを放し、オオカミ復活を問いかける本
何故オオカミの復活を望んでいるのかというと、増え過ぎた鹿の駆除のため。。。いや、生態系の保護のためにオオカミの復活が必要との事。
私は鹿が増えているのは知っていたが、まさか森林の生態系を崩しているとは知りませんでした。
この本の共著の一人は元々鹿の研究をしていた人。
ふとした事から鹿の捕獲者としてのオオカミの存在に気付き、生態系を自然に戻すには生態系のピラミッドをキチンと作り直す事が必要だと、それにはホンの百年前まで日本にも存在していたオオカミの復活が必要だと思ったそうです。
この本の題名を見た時、オオカミを野放しにして大丈夫なのか?
と思いましたが、それはオオカミに対する誤った認識があるからと気付かされました。
それとこの本を読んで気付いたのは食物連鎖の複雑さ。
正に「風が吹けば桶屋が儲かる」の世界です。
そう言えば「オオカミ」とは「大神」とも言えますからね。
感化され易い私は早速感化され「オオカミ復活」を強く望むのでした。。。
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森・動物・人のよい関係を求めて
オオカミを放つ
1993年、「日本オオカミ協会」設立、
オオカミ復活運動、美しく豊な日本の自然を子孫に継承する・・・
増えすぎたシカの個体数を調整し、森林や植生を保護、
生物多様性の維持と生態系の構造・機能を修復維持する、
神として祀られていたオオカミ、田畑の守り神
武蔵御岳神社(青海市)、三峰神社(秩父市)、宝登山神社(秩父郡長瀞町)
言霊信仰のあった奈良時代の文献に「大神」と同じ音が与えられていた、オオカミに対して畏敬の念を抱いていた。
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増えすぎたシカなどの個体数管理のために日本にオオカミ再導入が必要。
それを訴えるための本なのだが、ちょっと強引すぎるような部分がある。前半のシカの個体数が増えていることを示すデータは、もうちょっといいデータがあるのではないだろうか。また本当にオオカミが人や家畜に危害を及ぼさないのかについての検討も不十分。ただ全体的にはわかりやすいし、この問題について考えるには読んでおくべき本だと思う。
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丸山氏率いる「狼再導入派」の著書。
本書ではオオカミの再導入によってシカの個体数調整ができるのではないか?という事を呼びかけている。
とてもわかりやすい書籍で、生態学について全く知らなくともスラスラと読むことができ、日本の自然環境が非常に大きな危機に面していることやその解決法としてのオオカミ再導入について丁寧に述べられている。
しかし、本書を読む上で肝に銘じておかなくてはならない事がある。それは本書が「オオカミ再導入の良さのみを語っている」という点である。端的に言えば「偏っている」のだ。
本書のオオカミ再導入論は一見素晴らしいアイディアに思えるが、いろいろな"穴"が存在しており、現在、野生動物の専門界隈ではかなり少数派な意見となっている。
理由としては以下のものがあげられる(長くなるので箇条書きならびに割愛)
・本書が発行された後になるが、DNAを用いたクラスター分析によってニホンオオカミには固有性があったことが指摘されている(2009 石黒)。このことからハイイロオオカミとニホンオオカミを同一視する事は難しく、再導入というより外来種導入といったほうが適切である。
・根本的にニホンオオカミの生態が不明である故に、そもそもニホンオオカミがシカの個体数調整を行っていた確証が存在しない。(ニホンオオカミは大陸のオオカミと異なるものであったというのは先述したとおり)
・過去の文献調査により、日本においてシカは継続的に人間によって利用されてきていることが明らかになっている。シカに対するキーストーン種がニホンオオカミではなく人間であった可能性を否定出来ない。
・オオカミをコントロールができる確証がない。ハブとマングース問題のように予想外の結果となる可能性がある。どちらにせよ、万が一が生じた際に狩猟者が必要となる。
・前述の通り狩猟者が必要。狩猟者は高齢化で減少傾向にあるため、狩猟者を増加させる必要がある。狩猟者を増やせるならそもそも狩猟者にシカを獲らせれば良い。(これが現在野生動物の専門界隈で主流となっている狩猟者による個体数調整)。これに加えてオオカミを放すのは労力を増やすだけである。
・設定条件が多少現実に即していないが、シュミレーションによって実際に放してもあまり効果が出ない可能性があると指摘されている。(生態学会2011ポスター発表)
・イエローストーンでも人間との軋轢が発生している。本書で述べられているような"人間への普及啓発"では軋轢を0にはできない。
・イエローストーンには家畜や人的被害に対する補償制度が存在する。日本でも同制度を生み出す必要性がある。しかしどこが資金を出し、運用するのかについての議論がなされていない。
これは私見だが、オオカミ再導入は現在の日本に適した手法ではないと思われる。
この本から野生動物管理に興味をもった方は、再導入を進めている日本オオカミ協会のHPを併せて見たり、他の野生動物管理関連の書籍を読むことを強くおすすめしたい。
現在主流になりつつある狩猟者による個体数管理法など、本書の対立意見について学ぶ事は、日本における��在の野生動物保護管理を考える上で間違いなく有用になるはずだ。
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この本は自然についての生態系の未来についてオオカミが重要だと考えさせられた本だった。オオカミは人を襲うことはないのは、よーく分かったけど世の中馬鹿な連中が多いからオオカミを放つのは危険だと思った。
オオカミ以外で生態系を復活させることは出来ないだろうか?