紙の本
でたらめな物語と思わせながら、実はどんな恋愛小説よりも現実的な結末に言葉を失った
2007/03/12 22:41
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
中志郎と真智子は倦怠期の夫婦。バリ島旅行に出かけた先で、常夏の国でも手袋をしている不思議な女・石橋と出会う。その石橋が手袋を脱いで、中志郎と手を合わせたところ、石橋から志郎へとあるものが移動していくのがわかった…。
あのベストセラー「ジャンプ」から7年。待ちに待った佐藤正午の新作がようやく登場しました。この7年間、含蓄がありながらどこか人を食った趣のある「ありのすさび」「像を洗う」「豚を盗む」といったエッセイ集に親しみ、先だっては新書「小説の読み書き」と短編集「花のような人」といった軽めの著作に遊んだものですが、やはり佐藤正午の長編小説に今一度じっくり・どっぷりつかってみたいと飢餓感を募らせていた私にとって、本書は読書の愉悦に浸ることの出来た一冊となりました。
そもそもこれはジャンル分けを拒む小説です。出版元は恋愛小説として売るつもりなのかもしれませんが、そうであるともいえるし、そうではないともいえます。石橋という不思議な能力を持った女と志郎との物語かと思わせて、にわかに津田伸一という物書きの一見軽佻浮薄でスキャンダラスな恋愛物語へと乗り換わっていくところなど、読者を見事に欺いてくれるコンゲームのような様相も呈しています。ミステリアスで、幻想的で、荒唐無稽で、とにもかくにもつかみどころのない、一体どこへ読者を連れて行くつもりなのかといぶかしい思いを募らせながら頁を繰ること数時間。
浮世離れした物語にしかみえなかったこの小説は最後の段落(505頁)で突如として、痛ましくも苦い愛の現実を突きつけてくるのです。世に溢れる“恋愛小説”の大半こそが実はどうしようもなく現実離れしたお話に思えてきて仕方ないほど、この物語の最後は、うつし身のやるせなさを、輪郭線も鮮やかに浮かび上がらせてくるのです。私はこの最終段落で、この物語の謎めいた展開が一気に氷解したように思え、そしてまたその「答え」を前にしばし呆然と言葉を失ったほどです。
これほど面白い小説を読み終えた今、早くも私は佐藤正午の次なる長編小説に対して飢餓感を募らせ始めています。次回もまた7年待たされるのでしょうか。
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なんだかなぁ。そういう落ちなの、っていう感じですかね。超能力を題材に扱うのって、やっぱり難しい。ここに出てくるまぁ、だらしない中年作家は作者と交錯するところがあるのだろうか。そういう意味で捉えると、私小説なんだろうかこれも一種の。
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「君は冷めないスープを想像できるか?」
超能力者が出てくるが、それが主眼ではなく、人の記憶とか愛の時間による変遷についてがテーマだ、と思う。まったく、今「愛が冷めること」を書きたくなる気持ちはすごくよく分かる気がするよなぁ。でもこの本の面白さは全体的なことではないのだ。主人公?は著者の本らしく全く感情移入できない嫌な奴だが、読んでいて一文一文の味わいが愉しくて、くすくすにやにやしながら、もったいない気持ちで、でもページをめくる指が止まらない。『ジャンプ』から7年目ぶりの著者の新作は、期待を裏切らなかった。(私は大好きなので星5つつけるが、人によって好き嫌いは分かれそう。)
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7年ぶりの長編小説。こっちはじっくりと読みたいのに、ぐいぐいと没頭させられるこの筆致はなんなんだ!!
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2007.6途中。図書館が早く返せと言うので・・・。途中だが続きが読みたくてしかたがない。もう一度予約した。欲求不満になりそう。
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なが〜い!
500ページもあるのに読んだ後何も感じなかった・・・。
またまた他の人が絶賛するものは私は駄目というのが分かった1冊。
この本のせいで今月出遅れた(`□´)コラッ!
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久々の途中撤退。
最初のほうは面白くてガンガン読んだんだけど小説家中心になってからどんどんわからなくなってきて、読み進めなくなった。2/3は読んだけど進まないので途中でおしまい。。07.11読破できず。。
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【結婚八年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。二人にとって、意味のない発言のやりとりにこそ意味のあった時代は、はるか昔に過ぎ去っていた。そんな倦怠期を迎えた二人だったが、旅行中に起こったある出来事をきっかけに、志郎の中で埋もれていたかつての愛の記憶が甦る】
初佐藤正午ですが・・・
なんだか読んでて嫌な気分になる事が多かったです。
「気持ち悪い」じゃなくて、「嫌な気分」
この本の語り手である津田がすごく嫌な男で、その男にも腹がたったし、
その男に騙される女達にも腹がたった。
なんでこんな男に騙されるのだろう?って事ばかり考えてたような。。(苦笑)
初めての作品がこれだと、他の作品を読む気になれないのは私だけでしょうか?
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結婚八年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。二人にとって、意味のない発言のやりとりにこそ意味のあった時代は、はるか昔に過ぎ去っていた。そんな倦怠期を迎えた二人だったが、旅行中に起こったある出来事をきっかけに、志郎の中で埋もれていたかつての愛の記憶が甦る
【その他読んだ本】
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★奇妙な浮遊感★旅行中に読む。佐藤正午の小説はどこか違う時間が流れている。記憶と感情を回復する不思議な力という設定に違和感があるのではない。日常の出来事とそれを切り取る視点が、もっともでありながら普段の暮らしからわずか数センチ浮いている。出会い系サイトを通じて初めて会う男の前で平気でロコモコを食べ、それを自分の呼び名とする女性の無神経さ。ミネラルウオーターを買って向かうラブホテル。こうした表現がなぜだか心地よい。カテゴリとしては恋愛小説なのかもしれないが、核は別の部分にあると思う。それがなんだか分からないのが僕の表現力の限界なのだろう。かつて読んだ同じ著者の「ジャンプ」でも同じ印象があったのは覚えているが、内容は全く記憶にない。
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<結婚八年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。二人にとって、意味のない発言のやりとりにこそ意味のあった時代は、はるか昔に過ぎ去っていた。そんな倦怠期を迎えた二人だったが、旅行中に起こったある出来事をきっかけに、志郎の中で埋もれていたかつての愛の記憶が甦る。本当の愛を探し求める孤独な魂たちへ。新感覚の大人の恋愛小説。 >
2009.7
7年振りの新作長編。
珍しくネットで注文(書店においてませんでした^^;)
夏休みにしっかり読みました。
やっぱり佐藤正午いいわ。
どこがどうって言われると困るのだけど。
「必ず冷めるもののことをスープと呼び愛と呼ぶのだ」
このような言い回し、いくつか出てくるのだけど、対比する事柄が面白い。
ラストの「キュウリが・・・」の告白シーン、個人的には100点の面白さですw
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「あたしたち、もう会わない方がいいと思う」
不倫相手の中真智子は旅行先で豹変した夫を愛し僕に別れを告げた。
その後サイン会で中志郎と知り合い彼から記憶力の話を聞く。
石橋という女性から記憶力を注がれた彼は
妻への愛情を思い出すことが出来るようになったのだ。
僕はその話に興味を持ち彼女と接する機会を得るのだが…
装丁:高柳雅人(角川装丁室)
「必ず冷めるもののことをスープと呼び愛と呼ぶ」
「愛の記憶と、愛は別のものだ」
愛ってなんだろう。未来の記憶があるってどんな感じなのか。
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冷めないスープがないのと同じように冷めない愛はないんだそうです。
そんなネガティブな・・。読んだけどさ。
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佐藤正午さんの4年ぶりの本(だったと思った)。本の雑誌年間ベスト8位、新刊採点4月単行本の課題図書で採点員さんの評判もよかったです。
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妻への愛を感じなくなって何年もたつ夫に、旅行先のバリで出会った女性が奇跡をもたらす。妻の不倫相手であった小説家の人生にも異変が・・・。文章の雰囲気は好きなのですが。。。