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前半の中心となる戦闘は、相手がなかなかの人物で、手に汗を握る見せ場である。登場人物それぞれの個性がかみ合って何ともいい感じだ。
中盤、生還し腕を切り落とすくだり。読ませる。迫力がある。
後半、暗殺から攻防戦へ。シリーズで初めて、大きな登場人物が戦死する。戦いの中での出来事はまあいいけれど、最初の暗殺はなんともやりきれない感じがする。登場人物ならずとも、とても悔しく思うのだ。合掌。
2008/8/4
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まさかの楊志死亡に驚く。
早すぎる、とも思えるが、世の中というのはそういう風にできているのかもしれない。
前の4巻がダブついた印象だったが、楊志の死闘で盛り返した。
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本巻は主に3つの事件を描いている。
1つめは、主人公クラスである宋江が官軍一万の兵に狙われるものの数人の味方の援護により逃れ、長江の中洲に立て篭もるというもの。一連の闘いの中で、宋江のおっとりした性格を描こうとしている著者の想いは理解できるが、まだまだイメージし辛い人物像である。文章を読んでいても風貌が浮かんでこないのだ。その点、林冲や魯智深は何となく顔がイメージできる。どういう風にと聞かれると困るが、例えば林冲は横山光輝の三国志に登場する「関羽雲長」を、つい思い浮かべてしまう。長身で顎鬚が長い、賢者的な豪傑といった…。私の思い込みであるが。
2つめは、遼で囚われの身になっていた魯智深が鄧飛に救われる事件。しかし牢から逃れるために自分の手を切断したり、その切断した手が腐ったため安道全が肩から切断し、その切断した腕を魯智深自身が食べたりと、グロテスクな面が多かった。こうしたシーンは映像化が難しいだろう。
3つめは、青蓮寺による同志の非業の死。妻子との逢瀬を楽しんでいた楊志が殺されるとは意外だった。第二巻以降、結構好きなキャラだったので残念である。息子の楊令(5歳)が成長し、立派な軍人となって帰ってくるのだろう。それを待とうか。そして二竜山の石秀、桃花山の周通も戦死。それぞれ、身を盾にして闘った結果である。こうした英雄や豪傑を描く物語として、一方の勝ちっぱなしではつまらないため、負けを描くことは常套手段なのだろうが、それでも感情移入してしまう。
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横文柄により孤島に追いつめられた宋江だったが、新たに梁山泊に参入した穆弘や李俊、駆けつけた林沖騎馬隊の助けにより生還する。
魯智深も燈飛の決死の救出により遼から脱出し、梁山泊は喜びに沸く。
しかしそんな中、馬桂の裏切りにより、揚志が王和の軍150人により囲まれ、奮闘したものの揚令を残し殺される。
再び両親を目の前で殺された揚令は、再び声を失う。
揚志の副隊長であった石秀と、周通も直後の侵攻により命を燃やし尽くした。
横文柄は横文柄で敵役として良かった。楊志の最期は、こんな父親はかっけぇと思わざるをえん。
石秀には公孫勝の期待や楊令へ剣を渡したシーンなど、印象に残る場面と、輝く最期が切なかった。
周通は、苦悩しながら桃花山を守り抜いたけれど、本人は分かっていないまま、格段に成長していた。そして、死んでいった。
楊令はずっと、悲し過ぎた。その分、石秀や林沖とのシーンが忘れられないほど輝いている。
英雄と悲しい子どもの対話は、こんなにも美しいのか。
以下本文より引用
・楊志の最期
ふり返る。楊令。済仁美に庇われるようにしながら、顔だけこちらにむけていた。眼が合った。笑いかけようと思った。笑えたかどうかは、よくわからない。父を見ておけ。その眼に、刻みつけておけ。
地を這うように、斬撃が来た。かわしもせず、楊志はその男を頭蓋から両断した。
・石秀の最期
「門を閉めろ、命令だ」
力のかぎり、叫んだ。親衛隊も、半数は射倒されていた。
門が閉まっていく。石秀は、それを目の端に捉えた。敵が、押し寄せてくる。大地を、すべて埋め尽くしているように、敵が押し寄せる。斬っても、斬っても、際限がなかった。敵兵の海だ。下腹を、何かが貫き通した。槍。柄を叩き斬った。突いてきた者も、同時に両断した。また、なにかが体を貫いた。
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いよいよ物語が疾走し始めて派手な展開になってきた。
賊徒から叛乱軍になりつつある梁山泊勢力に対して、ついに青蓮寺が大規模攻撃に出る。宋江は大軍に包囲され、楊志暗殺の企ても着々と進んでいた…
しかしこの巻では魯智深のエピソードがちょっと衝撃的だった。
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ついに、赤文字の札が出てしまった。しかも一気に三人も!
悲しいが、いずれも見事な死にざまで、感動に震わされた。
本格的な戦が始まり、敵も味方もこれから犠牲者がどんどんと出てくるだろう。
敵味方というより、国のことを憂うという価値観は同じうしながら、大きな変化を望むものと、それを望まないものとの戦い。
悲しいけど、熱い戦いの行方をこれからも見届けたい。
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昔読んだ水滸伝とはやはり異なるストーリーになってきている。(あらすじ)女真族に捕らえられていた魯智深は、自ら手首を切断して手かせを外し、梁山泊に帰還する。馬桂の内通により、楊志は妻子との密会中に暗殺される。混乱に乗じて官軍は桃花山、二竜山に大兵力を差し向けるが、石秀、周通らの犠牲を出しながらも梁山泊からの援軍によって退けられる。
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戦の描き方が上手く夢中になって読んでしまった。特に二竜山、桃花山の闘いは一読の価値あり。
石秀と周通が良い味を出してくれてます。
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ネタバレ感想です■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□札が一枚。…返された。中盤からは、バッタバッタと漢(おとこ)達が散っていくのは承知の上だったが、最初の一人がこの漢だったとは。北方謙三、苛酷すぎるぞ。
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熱くなってきた。
官軍の宋江包囲網を梁山泊をはじめ、叛乱軍が一丸となって宋江を助ける様は感動!豹子頭林冲がかっこ良かった!
北では魯智深が!
そして二竜山・桃花山では命を賭して守りきった頭領達の姿に感動した。
次巻が楽しみ。
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危ない危ないと思っていたら、やっぱりやられてしまった。今後ずっとこんな悲しいことの繰り返しかと想像したら、読み続けるのがつらくなってきた。
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五巻は札が裏返りはじめるという点で動きのある巻。ここまで読んできた読者が桃花山から二竜山に合流を許されたような感じ。清風山に入りたくば六巻以降も買え、みたいなね。物語を引っ張る力は相変わらず強いんだけど、魯智深久々の登場だからもっと書き込んで欲しかったなあ。志水辰夫の解説は熱かった。熱かった、意外だ。
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魯智深の救出時の光景が頭のなかでありありとイメージされすぎて、電車のなかで気持ち悪くなってしまいました。
物語としては、楊志が大きな危機を迎えています。
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序盤一番のヤマ場の巻、でしたかね。
さすがに”あの御方”が志半ばに倒れるのは覚えていましたが、もう二人居たことはすっかり忘却の彼方。特に片方、原典での扱いに比べて見事な最期……。
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「宋江殿のお許しを得たいことがあるのですが」
戴宋が言った。戴宋は、二十名ほどを指揮して、堀の補強をしていた。
「戦のことではありません。『替天行道』の旗を、この島に掲げるお許しを得たいのです」
「あの旗は、私の旗ではない。それを仰ぐ者、みんなの旗だ。おまえが掲げたいと思うなら、堂々と掲げよ。誰かの許しが要るというものではないのだ」
戴宋が頷き、にやりと笑った。
「疲れている、とも言えるな」
「疲れは、知らぬうちに溜ります」
「私が疲れていると思うか、洪清?」
「お疲れです、誰よりも」
「ならば、疲れが身を滅ぼすまで、疲れてみようか。幼いころから、兄弟のようにして育ったおまえが、私の滅びをも見届けるべきであろう」
「疲れは殿を苦しめるでしょうが、滅びさせはしません。滅びれば楽だと思うほど、いつまでも苦しまれるだけです」
「おまえこそ、滅びたくても、なかなか滅びることができぬ、と私は思っている」
袁明は、低い声をあげて笑った。ひとしきり笑い続けると、また自分の思考の中に入っていった。
「なぜだ。童威。なぜ、死を選ぼうとする」
「選ぶんじゃねえよ。俺は、そこに飛び込むんだ。飛びこめば、突き抜けられる。いままでが、そうだった。もう駄目だという波が来た時は、俺は船を突っ込ませたものさ。それで、駄目じゃなくなる」
李俊は、童威、童猛らと、海に出て島から塩を運んできていたという。川と違って、海はとてつもなく荒れることがある。
「李俊は、この策を許さないと思う」
「だから、公孫勝殿に言っているんじゃねえか。兄貴は、俺が死ぬと言って、黙ってみている男じゃねえ。だけど、俺がやらねえことにゃ、俺たちだけでなく、兄貴も死ぬことになりかねねえ」
公孫勝はしかし、童威の思いをそのまま受け取れなかった。死をいとわぬ人間を、それほど多く見てきてはいない。
「もう一度、攻めよう」
「待てよ。あんた、俺の言うことを聞いたろう」
「しかしなあ、童威」
「一度攻めれば、それだけ兵は疲れる。死人も出る。やるんなら、いましかねえぞ」
「そうか」
公孫勝は、ふっと冷やかな気分に襲われた。死をいとわぬと口で言うなら、実際に見せて貰おうではないか。そんな思いになった。
「それなら、やって貰おう。いまから攻めこみ、できるだけ深く押し、おまえたち兄弟を残して、われわれは離脱する」
「おうよ。受けて立とうではないか」
「間違えるな。敵は私ではないぞ」
「なんとなく、敵みてえな面してんだよ、あんた。笑わねえし」
「行くぞ。いいな。弟と話し合わなくてもいいのか?」
「そこが、双子よ。なぜだか、お互いの気持はわかる。言葉なんて、いらねえんだよ」
「そうか」
公孫勝は、自分の気持の中に、かすかな羨ましさが滲み出しているのに気づいた。
穆弘の軍も、李俊の軍も、少しずつ動きが鈍くなっていた。
離脱すべきか。公孫勝は、瞬間、そう思った。しかしここで離脱すれば、二度と攻めかかることはできないだろう。
崩せるのか。勝てるのか。続ける。選んでいた。公孫勝も、剣を遣った。血が飛ぶ。剣がぶつかり合い、火花が散る。しかし、倒しても倒しても、敵は減らない。
不意にこれまでにない衝撃が、戦場を走った。地響きがする。
「宋江殿が、いつも落ち着いておられたので、私は苦しまずに済みました。兵たちも、安心していました。こんな狭い島で、争いひとつ起きなかったのは、まさしく宋江殿のおかげです」
「私は、暢気なのかな。それとも、鈍いのかもしれん。おまえたちが、必ずなんとかしてくれると、信じて疑っていなかったのだ。そして、信じた通りになっている」
魯智深には、さまざまなことを教えられた。自分の国を見限るのは、自分を見限るのと同じことだ、と言われた。卑怯者が自分から逃げるように、ただ逃げただけだ。そして、どこへ逃げたところで、そこが帰る場所になることはない。帰る場所を捨てて、人生になんの意味があるというのだ。
人が旅をするのは、帰るべきところへ帰るためだ。魯智深は、そう言った。不思議な言葉だった。心にしみこんだのだ。
「なにもかも手筈を整えると、それが狂った時に、どうしていいかわからなくなるものだ。おまえぐらいのいい加減さが、ちょうどいいのだろう」
「呉用殿は、いつもそれだな。競い合うことは許しても扶け合うことは許さん。嫌われるだけだぞ」
「魯智深のように、誰にも好かれている男がいる。それだけの、苦労をしたからだ。私は、なんの苦労をした。忙しく駆け回り、頭を搾りはしたがな。嫌われるのが、私の役どころなのだと思っている」
「俺は、嫌いじゃないぜ。それに、呉用殿は苦労をしている。苦労をしていないのは、晁蓋殿と宋江殿ぐらいだろう。あの二人にだけは、苦労させてもいかん」
「おまえから聞かされた、江州での宋江殿など、まるで子供だな」
「梁山泊の頂点が、薄汚れた大人ではいかん、と俺は思っているよ」
「私もだ、劉唐」
「私はいつも、力のすべてを出している。相手が誰であろうとだ。林冲、おかしな言い方はやめておけよ」
「たとえば、林冲は強い。あれほどの者がこの世にいるのかと思うほど、強い。どこから、誰が見ても強い。しかし楊志殿は、ほんとうに強いのかどうか、わからん。兵の中に紛れていれば、目立つこともない。しかし、やはり強い。林冲とは違う強さ。これがどういうことかわかるか、蔣敬?」
「いや」
「林冲は、五百の騎馬隊を指揮して、無敵だ。それは、俺も認める。しかし、五万の軍の指揮はできん。五万の軍を、一兵も無駄にすることなく生かしきれるのは、楊志殿だろう」
「なるほど、強さの質が違う。そういうことだな。では公孫勝殿は?」
「致死軍は、また別だ」
「そうか。いろいろあるものだな」
楊志はそれでも、怒りで心気を乱しはしなかった。闘いは、長い。およそ経験したことのない長さだろう。闘い抜く。闘い抜かなければならない。考えているのは、それだけだった。
死は、誰にもやってくる。晁蓋は、そう思った。早いか遅いかの違いだけで、人はみな土に還る。だから、嘆くことはない。死者のために、生き残った者ができることは、なにもないのだ。忘れない。それだけでいい。
「あの五百の騎馬隊は、一万、二万の兵力に匹敵する、と俺は思っています。楊志殿も、林冲だけは敵に回したくない、とよく言っておられました。楊志殿には理解できない、捨身があるようなのです」
「心の底のどこかで、死にたがっている。林冲にはそういうところがある、と私は以前から思っている」
また疲労が襲ってきたが、今度はどこか楽だった。死んだあとのことを決めた。だからなのか。人間というのは、そういうものなのか。
「五千の騎馬隊か。林冲の十倍だ」
「林冲はいい相手だと思っているだろう。死を懸けて戦える相手だとな」
「それは、まるで林冲が死にたがっているようではないか、公孫勝」
「そう言えば、言える。林冲はいつも、死すれすれのところに、身を置きたがる。それではじめて、自分は生きている、と思えるのだろう」
なにか、別の世界を、李富は見ているような気持だった。戦場でもない。殺し合いでもない。これだけの人数がいるのに、見えているのは、たったひとりの生きざまだけだった。あの男は、なぜあそこにいるのか。なにが、あの男を生かし、輝かせているのか。
「突破口を、生かせませんでした」
そばで、声が聞こえた。許定。声に、はじめて感情が滲み出している。李富は、許定の顔を見つめた。
「無念です。いまひとつ、いまひとつだけの押しが、足りませんでした。外に飛び出してきた、あの大将に負けた、と思います」
「許定将軍、戦はまだ終わっていません」
「確かに、まだ攻め立てております。しかし、もう中に呼応する人数はいないでしょう。残念です。あの突破口を生かせなかったのは、私の責任です」
戦場にいる。その感覚が、ようやく李富に戻ってきた。