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紙の本
小説家らしい細部へのまなざし
2009/06/02 15:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの女性作家による絵画についてのエッセー集。内省的でかつ具体的な洞察に富んだエッセーで、そのひとつの意味である「試み」というのにふさわしい論考がとても面白い。とりあげられているのはジョルジョーネ「嵐」、フェルメール「真珠の首飾りを持つ女」ジャン=バディスト=シメオン・シャルダン「水の入ったグラスとコーヒーポット」ゴヤ「ロス・カプリチョス」「マドリード、1808.5.3」、そしてモランディ、ジョーン・ミッチェル、リヒター。あと、静物画についていろいろな絵を引きながら論じた章もある。多くはみずからの直観を頼りに、しかし決して理論や歴史的な知識も無視せずに丁寧に書かれた論考は、いたずらに結論を出すわけでもなく、しかし不可知論に沈み込むわけでもなく、微妙な思考のラインを方向として指し示し続ける。とくに静物画を論じ、ゴヤについてろんを移行させるあたりで浮かび上がる「現実」への多彩なアプローチは、絵画のみならず芸術論としてとても示唆的だと思った。後半、夫であるポール・オースターや娘のソフィー、ミッチェルに紹介されたというベケットなどの逸話も登場し、少し小説に近づくような細部もあってそれも面白かった。私はプロテスタントであり、磔刑ではなく十字架という抽象的な記号を選んだ人間だ、というくだりにはハッとさせられるものがあった。
それにしても前回翻訳された『目かくし』(白水社)は面白かったし評判も良かったのに、以来ずっと小説の翻訳がないのは淋しいかぎりで、二冊目の翻訳は美術エッセーという意外な選択だったがこれも上質な面白さで、ぜひとも小説作品をもっと翻訳紹介して欲しいものだ。
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