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☆標高8000メートルを超える「死の地帯(デスゾーン)」では、休養をとっても体力の回復は不可能になるという過酷な条件の中で、のんびりと登頂を楽しむような心身の余裕は消えうせる。そのような状況において、登頂に成功するためには、「宇宙との共生、均衡、調和といった、漠然とした何か」が必要だという。・・・つまり、生命の危機と隣り合わせの過酷な条件に身を置くことによって、「今自分が生きていることの奇跡」を痛感することができ、宇宙という偉大なシステムの構成要素である自分の命の尊さや、自分という素晴らしい存在に気づくことが、登山の与えてくれる恵みなのだろう。
多くのエベレスト登頂を成し遂げた人々の言葉を聞き、命を落とすか、命をつなぐかは、過酷な環境が決めるのではなく、その一瞬一瞬の人間の心にあるのだと悟る。人間が持つべきゆとり=ユーモアは生死の分け目で試される。執着することも大切だが、これとともに冷静に客観的に物事を推し量ることの大切さを改めて知った。生死の境目だけでなく、とくに普段の生活のなかで。