紙の本
書物王子
2008/12/20 11:43
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯に合った言葉はあおりでもなくデフォルメでもなく、真実だった。
古本者が生まれ変わるとしたら、誰もが書物狩人(ルシャスール)と答えるに違いない。そしてこの題名に惹かれて本書を手に取ったものの多くはかなりの本の虫であると思う。 もちろん私もご多分に漏れず、だ。
多くのヒーローがそうであるように、人は圧倒的なカリスマ性にひきつけられずに入られない。本書のニヒルなヒーロー書物狩人ことルシャスールもそうした一人だ。絶対君主制の暴君のようにその力を誇示するのでも、己が栄華・地位財力のためにそれを使うでもなく・・・ただただ古本のため、その語るところを世に残すため、そして本への執着とも取れるほどの愛情にのみ、そのすべてがをつぎ込まれる。
4章から成り4冊の世界を震撼させるほどの鍵を握る古本が登場する。
時にはマフィアが狙い、時には世界大戦時の遺物が登場し、ロシアに中国に日本にドイツに・・・めぐる世界は広く、求める本はこの世に一冊。銀髪の若き狩人、シャスールはそれがいかなる本であろうと強力なバックとともに必ず手に入れるというのである。怪盗ルパンを思わせる雰囲気はあるもののその風貌は細身青白の青年、ただひとつまっさらな白銀の髪を除いて彼には特徴というものが無い。 いったい彼の髪をこれほどまでに白くさせた過去とはなんなのか?それは次回作以降へのお楽しみ、なのだろう。
古書のあるところ、ありとあらゆる場所に現れクライアントの要望には必ず応え手に入れる。ただしその契約が守られる限り。カルロス・ルイス サフォン 『風の影』にも膨大な古書を蔵書する地下書庫や秘密組織が登場するがあちらは世界から抹消された最後の1冊のみが保存されるという架空の書庫、本の墓場である。『風の影』に覚えた嫉妬とも羨望とも言いがたい「世界で唯一の本が所蔵される書庫」への憧れは本書『書物狩人』でも同じだ。さらに言えばこちらは書物狩人シャスールによって今もその蔵書は増え続けていくという、冒険的な面白さが加わっている。 前者が亡霊・・・影と化した本を守る廃退的な暗さを前面に漂わせているのに対し、本書は埋もれている古書を発掘する、さらにはビジネスも加わって、現実にはありえないのはわかっていてもどこかリアリティがありしかも冒険的である。
年甲斐も無くワクワクしてしまう・・・そう、怪盗ルパンを読んだときのようなワクワクだ。
本好きは言うまでも無く、冒険好きにもミステリー好きにもいける本!是非とも読んでほしい・・・で、どなたかこうした組織を作ってほしいものである。
紙の本
静かなる自信
2007/04/21 22:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
すべてはフィクションなのに、地に足の着いた、リアリティを感じられる要素がそこかしこに詰め込まれている。著者は初めて自分のホームで作品を書いたのかもしれない。著者のほかの作品のように、エンターテイメント性を高めようとして生じる上滑りした感覚は感じられない。
石版や粘土板、パピルスの時代から存在する、記録を残したい、誰かに伝えたいという人類の欲望は、本という形を持って我々のそばにいる。その記録は、幾星霜の月日を飛び越え、普通ならば知りようも無い過去の出来事を教えてくれる。
同時に、本はただ楽しみを与えてくれるツールでもある。そんな本に魅了され、命に代えても手に入れようという人物がいたとしても、ボクは不思議には思わない。それは、本を置くスペースが無くて、文字通り泣く泣く手放したことがある人間には共感してもらえるはずだ。
この作品は、そんな本に取り付かれた人間の物語。
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本好き人間にはたまらない設定なんですが、万人受け要素はあまりない感じ。エンタテインメントというよりもコアな趣味人向けの気がします。連載中らしいので、続きも単行本出たら買おうかな…
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稀少本を探し求める男の話。
やたら話のスケールが大きい。
ただ、書物狩人というネーミングはカッコイイと思う。
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想像を絶する価値を持つ秘書・禁書、それをあらゆる手段を用いて蒐集する「書物狩人」の活躍を描いた物語。ちなみに短編形式の連作となっています。たった一冊で世界の歴史を変えうる稀覯本の存在やそれを巡る駆け引き・攻防の連続は本好きなら思わず引き込まれてしまうと思います。作者の歴史に対する独自の解釈もなかなか面白いです。雑誌での連載はまだ続いているそうなので、続編が出たらまた読んでみようかな。
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装丁と題名に惹かれ、「われこそは書物中毒と自負されるみなさま、お試しあれ」という言葉に挑発されて即買い。
4編の短編収録。
主人公の本名はほとんど明かされません。というか必要ありません。
ただ、彼は世界を暗躍する「書物狩人」と呼ばれる者たちの中でも凄腕で「狩人」を意味する、英語で「ハンター」ドイツ語で「デア・イェーガー」そして本人が最も好むフランス語で「ル・シャスール」という呼び名を持つ異相の日本人。
教科書やら、写本やら、たった1冊の本をめぐって、JFKの暗殺事件やヴァチカンを揺るがす事件やらが絡んだり、ロシアのFSB(元KGB)や中国の国家保安部まで乗り出したり。
1冊の書物の存在が、どのような影響を及ぼすのか!?想像するとゾクゾクしてくる内容です!
世界史が好きで、書物が好きなら必読。
続きも出るっぽいのが楽しみ。
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ほとんどが海外が舞台のため、翻訳ものを読んでいる気分に浸れる。(あくまで気分)
推理要素が強く、読み終えるまでにどんでん返しが必ずあるのでハラハラした。
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本が好きな人だったら読んでいて嬉しくなってくること間違い無しのシリーズですね。ただ、呼び名がフランス語の響きが良いというがはちょっとなぁ…ある意味美術品のミステリに情報が載せられて更に面白くなったって感じ。
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裏表紙に書かれた話の説明を読んだだけで気に入ってしまいました。
型押しされたカバーもなかなかいい感じです。
物語の設定や内容は、歴史ありエンターティメント性も満載で
文句なしに面白いです。
ハリウッド映画にでもなりそうな物語かもしれない?!
気になったのは外国語が無理やり沢山出てくる部分もあって、
日本の歌謡曲のサビを読んでいるみたいな印象もあります。
続巻も読んでみたいと思います。
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[ 内容 ]
世にでれば、国を、政治を、歴史を揺るがしかねない秘密をはらんだ本を、合法非合法を問わず、あらゆる手段を用いて入手する。
その存在は謎に包まれ、彼らの活動が表に出たことは一度もない―書物狩人。
バチカンから獲得を依頼されたギリシア語写本やナポレオンの旧蔵書…。
書物狩人が鮮やかに稀覯本に隠された物語を紐解く。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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タイトルに一目惚れして借りたのだけど…買わなくて良かったかも(^_^;)
イマイチ主人公とストーリーに入り切れない。
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うーん、おもしろく、ないことはないんだけど、ちょっとはいりこめなかったなあ。惜しい。ル・シャスール、魅力的なんだけど・・・。書物に隠された真実ってゆう設定は好きなんだけど、お話としてはなんか盛り上がりにかけるような。ああ、でも歴史とか好きなヒトはいいかもな。私も結構好きな方だけど政治と関わってくるのはイマイチなもんで・・・。
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タイトルと、帯の推薦文に背中押されて購入。名前は知っていたものの、初めて読む赤城作品だったりします。 書物狩人とは「諸国の政府や大企業などの依頼を受けて、世間に出れば大事になりかねない秘密をはらんだ本を、合法非合法を問わず、あらゆる手段を用いて入手してくる」人間のこと。銀色の髪の書物狩人(ル・シャスール)ナカライの仕事っぷりがうかがえる全4話が収録。 本そのものよりも、本にまとわりついてくる歴史の闇、人間の暗い思惑を描き出すのがメインのようが気がする。歴史的事件の裏側に、実は1冊の本の存在があった…なんてロマンティックだけど、権力や醜い欲望や国同士の政治的駆け引きなんかが絡んでくると、そうも言ってはいられない。そんな中、書物を愛する書物狩人の活躍は颯爽として、清々しい。 一番面白かったのは第3話「Nの喜悲劇」、第4話「実用的な古書」も良かったです。 シリーズ化されるのかな?凄腕の銀色の髪の書物狩人(ル・シャスール)ナカライが書物狩人になった由来を描くエピソードなど、読めたらいいなあ。
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本好きにはたまらないマニアックな本から、一度は聞いたことのある有名な作家の話まで、本に関する冒険もの。
一度お試しあれ!
【熊本学園大学:P.N.モルト好き】
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どうしても買ってしまう本がある。本が重要アイテムとなっている本。実はH・P・ラヴクラフトの神話体系も禁断の書を巡る物語。作中本が出てくるだけで買ってしまうのであるから玉石混交、外れも多い。さて書物シリーズの第一作である本作。「諸国の政府や大企業などの依頼を受けて、世間に出れば大事になりかねない秘密をはらんだ本を、合法非合法問わず、あらゆる手段を用いて入手して来る『書物狩人』」という設定や良し。但し、肝心の書物狩人のあざといまでの慇懃無礼さが生理的に合わない。寧ろ何故こういう人物設定をしたのかに興味がある。