紙の本
●なんという加速!
2007/10/03 11:12
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めてすぐ、ああこれはウマいな!と一人ごちる。福井さんといえば「終戦のローレライ」や「亡国のイージス」など、いわゆる「冒険モノ・諜報モノ」でファンも多い。この「冒険モノ・諜報モノ」っていうのは、ラストのドンパチが楽しみ。それまでの諜報機関と国家転覆の危機設定などなどは、そこへ導く導入材なのだ。もちろんそれがリアルであればあるほど、ラストのアクション部分が面白くなるのだが。
ではそのラストのアクション部分だけを、短編としてすっぽり抜き取って作品にしてしまったらどうか。読み手はラストのドンパチを期待してるわけだから、これはありがたい。いやもちろん導入部分が全く無い、ただ戦いの描写を書いたってちっとも面白くは無い。短いならがらも、ハラハラドキドキの戦闘シーンにリアリティを与えるだけの導入部分を描ききらなければならない。それをこの作品では実現してしまった!のである。
ひとつめの「今出来る最善の事」などはまさにそんな感じ。一介の建設会社社員が、山奥の現場にローカル電車で向かっている所から始まるのだが、いきなり「北の工作員」が現れて、手榴弾で電車を吹き飛ばされる。この、現実から非現実への切り替わりの早い事。この加速感はたまらなかった。そしてその工作員との交戦の中で、実はこの社員が過去にとある諜報機関に属し、恨みを買っているのが分かってくる。そして戦いが激しさを増す中、物語は一つの小さな命を守るという方向に向かうのだが・・・。
これほどさっと読めてズン!と来る作品は他に読んだ事が無い。大体上下セットで下巻の真ん中くらいまでは導入部分で・・・なのだけど。これはウマい設定をしたものだなぁ・・・と思っていた。
そして実際、ふたつめの「畳算」やみっつめ「サクラ」あたりまではその様相を呈していている。のだけど。ちょっと、色合いが違ってくるのだ。「畳算」では愛した男から預かった品を、後生大事に隠し持った老婆の話し。その品が、「核爆弾」というのが問題でw。「サクラ」では、組織を抜けたいけれども抜けられない女の子が、とある戦いの中で取った驚天動地の仕掛け。それはもうミステリーの味わいさえ感じられた。そう短編でありながらもただのドンパチじゃない、その底にある色々な深い思い、が作品に味わいを与えているのだ。
そして「媽媽」では、闘う母親、とでも言うのだろうか。その苦悩と愛情、のようなものが描かれ、しかもつぎの「断ち切る」への連作になっている。短編二作ではあるけれど、スケールは大きく、深い愛情の物語となっていた。
さらにラストの「920を待ちながら」では鳥肌が立った。まさか、のキャスティング。福井ファンなら「おおお!」と思わず声が出てしまうに違いない、ファンサービス。
各々の短編の加速力もすごいが、一冊通して、1ファンとしての感動の加速力が凄かった。設定に多少の無理を感じるものの、魔法の言葉「市ヶ谷」で、もしかしたら・・・とさえ思わされてしまう。さすがの福井作品、久々にスカ!っとした加速感を味わわせてもらった。
投稿元:
レビューを見る
これだけ徹底して世界観統一してる人も珍しいような…最後にイージスのキャラが出てたんですが、時期的にはいつ頃なんだろう。
投稿元:
レビューを見る
2007/4/22購入
2011/4/22〜4/27
何かをやり残した男女が、やり残した染みを消すために懸命に戦う。「いまできる最善のこと」、「畳算」、「サクラ」、「マーマー」、「断ち切る」、「920を待ちながら」の六編。どれも必読の作品であるが、後半三編の怒涛の展開は圧巻。福井作品ファンには懐かしい名前も出てくる。何で長いこと積んでいたのかを悔やむ名作。
投稿元:
レビューを見る
本屋で平積みされてて
ついつい購入
長編だとお思っていたので、
短編集に思わず 驚いてしまった
投稿元:
レビューを見る
あらすじに惹かれて読んでみた本。結論。これが長編だったら・・・・・・。それなりに伏線や繋がりはあるのですが、それがもっと繋がり長編になっていれば、もっともっと面白かったと思います。短編になっている分、少し軽くなっていた感が。よかったですが、それが残念。
投稿元:
レビューを見る
短編集だと思ってなかった… 最後に話がつながるんだ、と思って読み進めていたのでした。
なかなか面白かったので、つなげて欲しいなぁ。でも、この後亡国のイージスにつながるのなら、この短編をつなげるのは難しいかも。
投稿元:
レビューを見る
「畳算」が最高。女としてその生きる姿勢、芸をもつ艶やかさ、やりきれなさは胸に迫るものがあった。どうしても待ってしまう老女の姿は人間はかくも切ないものかと思わせる。「マーマー」は様々な役割を一生懸命こなそうとしつつその葛藤に苦しむ母であり、妻であり、働き手である彼女。自分が自信をなくしたときに元気がでそう。でも人間はかくも経験をすると後悔や自身の穢れに絶望し、また希望を得られるものなのかな。年を経るって奥が深い。
投稿元:
レビューを見る
佳作。
一つ一つの短編は悪くないが。
できれば、その6つの短編をひとつの長編に編み上げてもらいたかった。
一部の短編同士がつながっているのも、気を持たせた。
投稿元:
レビューを見る
短編集。6作品あります。面白かったです。堪能できました。どの話も主人公がかっこよすぎます。市ヶ谷とか赤坂とか、独特の言い回しもたまりません。「媽媽」が一番よかったかな?
投稿元:
レビューを見る
久々に心にグッとくる小説です。
多少軍事もの好きなら「福井晴敏」はハズレがないですね。
戦争や医療とか、「命」が掛かってる物語は登場人物が活き活きと輝いて見えます。
魂の叫びが出やすいのですかね?
作者の腕ですかね?
そう穿った見方をしてしまうほど、この作者の切り口は見事です。
非日常の中で見せられる、親として、子として、男として、女としての気持ちが、読み手の心の中にあるモノと共振するんですかね。
投稿元:
レビューを見る
短編集でありながら、洗練されたストーリーを持ち、他の作品との関係をしっかり保っています。この作品を読むことで、他の作品に対する感動がより深まります。長編作品を読むのに抵抗をある方にもお勧めです!
投稿元:
レビューを見る
アクション大好きな自分はとにかく「かっこいい!」の一言
出てくるキャラクター全員が完璧な工作員という訳ではなくて
例えばそれは主婦兼工作員の女性だったり、実践慣れしていない中年男性工作員だったり
ページをめくる度にハラハラして、それでいて最後は心温まるようなストーリー
投稿元:
レビューを見る
6/19完読
読み終わったー!如月目的で買ったのですが、女性陣にやられました。
如月と須賀のしりとりに爆笑。あんなイケメンがしりとりする姿を見たら卒倒する。
私もこれから「き」が出たら「キリン」と即答します。
投稿元:
レビューを見る
福井さんによる福井さんらしい福井ファンのための短編集だった。
やっぱ福井さんはコレコレこの系統(。・・。)(。. .。)ウン・・ともすれば死に直面するようなミッションを担う人間達のドラマ。
最後の「920を待ちながら」は特にその真骨頂を味わえる短編。短編なのにこれだけの濃い内容で、しかもしかも!!意外なサプライズ!
私を福井ファンにさせたあのヒーローが登場したのには小躍りしてしまった!!
ああ・・また手に汗握る長編が読みたい!!
投稿元:
レビューを見る
福井晴敏の作品とは、日本という一見世界で一番安全とも見える国を縁の下から支える人々の話というのが
基本なわけですがこの『6ステイン』は今までの作品の中でも特にその色が強い。
かなり面白い作品だけど、短編集なだけに説明が難しい作品。