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Wed, 15 Jul 2009
本書は新書でオートポイエーシスのシリーズを書き続けている山下先生が教育について書いたもの.
オートポイエーシスは日本では河本英夫がよく書いているが,最近山下氏が追いかけている感じがする.
# タイトルに含んでなくて良いなら西垣先生の書籍を薦めたいが・・
しかし,内容的には方向性が違って,河本氏は現代思想バリバリでつきすすむが, 山下氏はオートポイエーシスのニュアンスを分かりやすく語り口調で説明しようとする. 純化されると共に,簡略化されているような気もする.
オートポイエーシスの教育 といえば,予想通り 系の自律性を前提にしていかなる教育が可能かということがつらつらと書かれてる.
西垣の基礎情報学にも詳しいが,オートポイエーシスの視座に立つと,情報は外部から内部に流入させる事が出来なくなる.全ては攪乱にすぎず,システムの作動に影響を与える程度にしか作用しない. これは,本来教育の現場にある状況を上手く既述しているのだ.
教育面でいえば,構成主義の文脈からは,オートポイエーシスの前にピアジェだとは思うのだが..
オートポイエーシス的な発想から教育を語るのって新しいわけではないのだが,重要なコトは何人も何回も言うべきであり,その意味で本書の存在は意義ある.
ただ,山下氏の論法の中でしばしば, 「私の言う○○とはルーマンの○○とは異なる」 とか 「私の言う○○は河本の○○とは異なる」 のように,語彙を自らの論理の中で限定する向きがあるが, 結局のところ厳密なところはよく分からなかったりしたのは残念.もう少し知りたかった.