紙の本
「相棒」の右京さんもいいけど、この「果断」の竜崎もいい!
2008/09/20 00:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の警察ものの完成度の高さは、言うまでもないこと。本筋の警察の捜査の緊迫感はもちろんのこと、組織内部の人間関係、本庁と署の人間描写の巧みさにあらためて脱帽した。だからこそ本筋が生き生きと動き出すのだ。
今回は、竜崎と妻の夫婦関係にも、ほろりときてしまった。警察キャリアの竜崎は仕事一筋。けれども、それを支える妻の大きさに、今回彼ははじめて気づく。妻の支えがあってこそ自分が仕事に打ちこめたのだ、と。二人きりになると、なんだか妙に照れくさく、うまく口には出せないが、彼が妻を思うなかなかいい場面があり、ぐっとくる。
プライドは高く、まっすぐで、まじめ。人間関係には疎いが、不正や隠し事はしない。
キャリア制度には、批判が多いが、この制度でなければこれだけの自負は生まれないのではないか。そして、そうした自負があってこそ、様々な困難を乗り越え、責任あるいい仕事ができるのではないか。そういう意味では、必要な制度でもあると、この本を読み思った。
あちこちに、竜崎の思いが吐露されるのだが、彼のマスコミ批判には、思わずうなずいてしまった。
「左よりの大新聞などは、ここぞとばかりに人権派の識者を動員して警察のやり方を非難していた。」「もし、今政変が起こり、再び中国やロシアにような非民主国になったら、人権だの表現の自由だのと言っている大新聞は、たちまち政府の御用新聞になるだろう。」「だから、竜崎はマスコミをまったく信用していなかった。だが、国民は新聞やテレビにころりと騙される。だから、警察としてはマスコミを無視できないのだ。」
息子のお勧めのビデオを見ての独白にも、彼のまじめさが出る。アニメなどどうせ子供だましなのだ、とたかをくくっていたが、「不覚にも感動してしまった。」というシーン。
ナウシカ(とは記していないが、おそらく…)を見て、
「少女は戦う。…大地の怒りを鎮めるために戦う。彼女には、知恵があり勇気があり信念がある。だが、最大の武器はやさしさだ。彼女は、やさしさで不可能な戦いに勝利するのだ。…戦うため大義はいらない。ほんの小さなものでもいい。何か信じるものがあれば、そのために戦うのだ。守りたい何者かがいるなら、そのために戦えばいいのだ。」
そして、彼は、戦いに赴く。
長年の今野ファンとしては、最近急にもてはやされ、本屋に平積みされているのを見ると、うれしいのだが、何を今更…なんて思ったりする。でも、この本も、いつもの期待を裏切らない出来栄え。最初から最後まで一気に読ませるおもしろさだ。
紙の本
型破りの警察小説、『隠蔽捜査』で充分に楽しませてくれた個性、あの竜崎の再登場である。
2008/07/25 14:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第21回山本周五郎賞と第61回日本推理作家協会賞のW受賞のこの作品は警察組織を痛快に揶揄してのけるところ、前作を上回る面白さがあった。
やや詳しくこの作品の冒頭部分を紹介するが、冒頭ながらいくつか巧みなエピソードの組み立てに竜崎の個性が浮き彫りにされ、これから始まる本筋への期待をいやがうえにも高めさせてくれる、今野敏の脂の乗り切った筆の冴えが非常に印象的な導入だ。
高輪署管内で発生した強盗事件の犯人の逃走経路に大森署の管轄地区が入るかもしれないと大森署では主要なところに検問を設置するが、署長竜崎はそれとは別な場所にも設置するよう命令する。しかし署長命令は無視され犯人はそこから逃走する。結局犯人は警視庁機動捜査隊に確保されるのだが、同じ警視庁で高輪署を管轄する第二方面本部の管理官がメンツをつぶされたと怒鳴り込んできて難詰されるハメになる。しかし、竜崎は部下の失態を責めず、本庁のヨコヤリを平然と無視し颯爽としているわけだ。縄張り争いなどどうでもいいこと、警察組織全体として犯人拘束の成果が上がったことが何よりも大切だとする正論で大見得を切り、読者をうならせる。
そしてこの騒動に前後して興味深いエピソードが織り込まれている。どうやらこの程度の警察活動は副署長以下の仕事であり、お飾りである署長は区長や区議の出席する公園落成式に参列するのが常識らしいが、彼はそこへ向かう車の中でこの緊急配備を耳にし参列をドタキャンする。犯人の身柄確保がなされた後もこの落成祝賀パーティーへ出席を「国家公務員倫理規定」の原則論から断る。そして小中学教師やPTAのうるさがたで構成する防犯対策懇談会に臨む。税金ドロボーといわれかねない雰囲気ではあるが彼はその場に媚びることなく、逆に住民の果たすべき責任に言及しうるさがたをぎゃふんとさせてしまうのである。とてもとてもかっこいいのだ。
「息子の不祥事で、大森署長に異動した(左遷された)キャリアの竜崎伸也。その大森署管内で、拳銃をもった強盗犯の立てこもり事件が発生、竜崎は現場で指揮を執る。人質に危機が迫るなか、現場でそれぞれの立場を主張する捜査一課特殊班とSAT。事件は、SATによる犯人射殺で解決したかに見えたが………」
ところでこの『果断 隠蔽捜査2』だが、独立した作品ではあるが、前作の『隠蔽捜査』をまず読んでおいたほうがよい。前作の竜崎のほうがエリートのいやらしさも強調された生のままのおかしさがあったが、この竜崎はいやらしさが薄れ本来のエリートとして「立派なおとな」にやや成長したようである。流れで読むことによりこの珍妙な成長のプロセスをたどる楽しみが加わるからである。また、前作の続きで竜崎家のホームドラマも展開するが、ここでも彼は父親らしさがまして普通のお父さんに近くなっているところがある。
二つの作品を読んで気づいたことだが、皮肉たっぷりなのは間違いないのだがこの作品は警察機構に特有な組織ぐるみの悪事、不正を弾劾するという憤りの姿勢で書かれたものではない。どんな組織にでもありがちな不条理を面白おかしくさばいているようだとそんな気がしてくる。官僚機構ではない普通の会社組織に身をおいたものでも、どこか追体験している気持ちにさせられる。こんなところがまた型破りな警察小説だと感じるところだろう。
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愛知で起きた拳銃立てこもり発砲事件を連想させる作品。作中の事件が比較的早く解決してしまったので、この後どういうネタが残っているのだろうと危惧したが、それは全く無用だった。“ベタな展開”感は否めないけれど、作品のテーマをストレートに捉えた素晴らしい構成だと思う。
タイトルにあるように、主人公の決断が要所でクローズアップされる。決断するということは、同時に責任を負うことも意味する。そこに鋭く切り込んでくる警察官僚たち。警察内部の人間関係に終始するのかと思いきや、事件は意外な展開を見せる。この辺りの流れは読んでて照れ臭さを感じてしまった。曲者キャラの本質が明らかになるシーンなど、スムーズに進むところがかえって不自然なのだが、読んでるこちらはもうどうでもいいよって気になっている。予期できるラストを受け入れる態勢に入っているのだ。
昨今の警察ミステリは本当に元気がいい。ミステリ・ランキングの常連だし、なによりハズレが少ない。私にとって、本格ミステリで溜まったストレスを排出する重要なカテゴリになっている今日この頃。
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・・・すごい・・・おもしろすぎる・・・。もうこれしか言うことないです(笑)心臓がバクバクいってます。興奮してます。ほんとおもしろい。
たまりませんね。前作を凌ぐおもしろさ。竜崎は大森署署長となり、本当の意味で現場を知ることになりました。そして、そのことがまた彼を成長させるのです。
ストーリーもすごい。息もつかせぬ展開。まるで自分がその場にいるような錯覚に陥る。臨場感たっぷりです。そして、事件を巡り様々な思惑が警察内を駆けめぐる。それを原理原則に従い、何者にも与さず捌いていく竜崎。そんな彼をまたもや襲う家庭内の問題。
窮地に追い込まれながらも決して自己を見失わず奔走する彼に、しびれまくってます(笑)
完璧な人間であり、情にかけるように思える竜崎ですが、ラストの夫婦の会話なんかに彼の人間味が溢れてるような気がします。他にもウィットに富んだ会話には思わずニヤリとしてしまいますね。そこも見どころ、読みどころ?(笑)
それに、今回もサブキャラがいい味だしてます。戸高とか、副署長とか。SAT・SIT隊員もいい。そして何よりよかったのは竜崎の奥様です。彼女もさすが竜崎の妻という感じ。
竜崎の意志の強さにも脱帽ですが、何より大事なのはそれに賛同し、ついてきてくれる上司・同僚・部下がいることですね。いくら信念があろうが、それを実現するためには周囲の協力を得ることが絶対必要です。そういう意味で彼は周囲の人間にも恵まれているんだなーー♪
・・ふっーー。本読んでるだけでこんなに心臓が高鳴る興奮を味わえるとは、思ってませんでした。 よかった。ほんとに(*´ー`)しみじみ
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前作が面白かったので期待してました。左遷されたからどうするんやろうと思っていたけど、所轄でも腐らずエリートの本分を押し通す主人公。「国家公務員の責務」を自覚してるような人がいるとは・・・確か前作は就活中に読んで打ちひしがれた気がする。ホンマにこんなのがいたら日本も捨てたものではない。
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いやー、面白かった!1作目の「隠蔽捜査」は読んでないけど、普通に楽しめました♪主人公は警察庁から所轄へ左遷されたキャリアのおじさん。左遷されたキャリア組の署長なんか、飾りでいてほしいってゆー空気や、実際の事件で管轄ごとに起こる軋轢とか、上からの圧力とか。しかも家庭にも問題発生!!問題ばっかだけど、主人公は「原理原則」に従ってマイペースに事件を解決します!!さっくり読みたい暇つぶしには持って来い!!
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大森署に左遷された竜崎伸也。一本気でまじめ、正直。曲がったこと、口裏を合わせること、手をもむことを全くしない。頼りになる上司で、自分のできることできないことを知っている人は少ない。所轄内での立てこもり事件。竜崎の部下の扱いや上司との対応など面白かった。’08.1.28
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隠蔽捜査の第二弾。一作目よりはもちろんインパクトは欠ける。主人公は前作と変わらずカッコイイし、作品の展開はご都合主義的で恥ずかしいくらいベタベタやけど、やっぱり面白い。大森署に左遷されたあとも変わらないスタンスを持ち続ける竜崎。署長として、責任重大な決断を何回か迫られる。それについての始末も、あらゆる上司に求められる。それでも彼は真っ直ぐです。しかも今回は、妻の冴子が病に倒れ、彼は珍しくも家庭を振り返ったりするんですけど、それがまた冴のキャラクターが良い。前作で結束の強さを見せられたんで、安心して読める家庭です。
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吉川英治新人賞を受賞した「隠蔽捜査」の第二弾。
前作のラストで息子の不祥事の責任を取り、
左遷された大森警察署で起こる事件の話。
場所と役職が変わっても竜崎のスタンスは変わらない。
理屈を通す信念のまま署長として仕事に励む彼を、
署内の人間が好奇な目で見る描写などは前作で
描かれたこの作品独特の面白さを再確認できる。
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このミステリーがすごい!(年間トップ10)2008年 第4位。
第21回(2008年)山本周五郎賞受賞作品。
第61回(2008年)日本推理作家協会賞長編部門受賞作品。
2008年5月31日(土)読了。
2008−54。
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久しぶりの5★〜♪
前作よりもおもしろかったです。一気に読んでしまいました。
果断=思い切りよく事を行うこと。なるほど〜納得です。
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今回は「隠蔽工作」は関係ないようだったが。降格人事で所轄の署長になったキャリアが「公明正大に正義を貫き」事件を解決し、所轄との軋轢の中で正しい方向性を見出す様。 地味な現代水戸黄門いや大岡越前みたいで、小気味いい仕上がりになっている。
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警察ものということで借りてみました。警察署署長の日常(?)も描かれていて興味深いですね。主人公の正義に対する実直さが、日和見主義の周囲との軋轢を生むところは深刻な状況なんでしょうが、独白形式で描かれているために、‘そ〜考えてるのか〜’という感じで笑ってしまいそうでした(ねらいなのか?)。隠蔽(いんぺい)捜査2から借りてしまったので、1を予約しました。‘隠蔽捜査’の意味はちょっと不明でした。図書館予約数は26(08/07/13現在)です。
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すっごく面白かった!!てゆか竜崎さん大好きです。最初の方とかかっこよすぎて電車の中でにやけそうになり必死でした。笑
竜崎さんみたいな警察官ばっかりやったら、事件も早期解決するやろうし犯罪も減るやろうし、汚職だって無いやろうし。
まぁこういう人だからこそ、左遷することになったりするんやろうなぁ。
竜崎さんは東大法学部卒で国家一種試験に受かったばりばりのキャリアなんで今の階級は警視長(上から三番目やったかな?)なんでめちゃくちゃえらいんですよ。
でも家族の不祥事で今は警察署の署長をしたはるんです。
事件自体も面白かったし、キャラも立っています。竜崎さんかっこいいだけじゃなくて可愛いところもあって。
ナウシカ出てきましたね。笑)
続いてほしいな〜このシリーズ。
現場の刑事物も面白いけど、できる上の人目線の本もいいな〜
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前作のいきさつで左遷され、エリートコースをはずれて大森署の署長となった竜崎。
署長というのは上から派遣されてくるので半ばお飾り、行事に出るのと、大量の書類に印鑑を押すので一日が終わるほどだとか。
近くで強盗事件が勃発、犯人が逃走し、竜崎は異例のリーダーシップを思わず発揮する。
やや一本調子だった前作よりも、ふくらみを増している感じ。
周りを呆れさせる行動や、持論の展開も筋が通っている面があって、にやにやさせられます。