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紙の本
インテリジェンスの世界
2007/12/19 11:38
11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者によると、世界の三大インテリジェンス大国は、現在ではイギリス、イスラエル、ロシアであるという。戦前ではこれが、イギリス、ソ連、日本だった。著者は、日本人というのはインテリジェンスの高い資質を有していると言うのである。
そうした日本人のインテリジェンスDNAの潜在力を見せつけた好例として、2005年9月の衆議院総選挙を挙げている。郵政解散後の刺客騒動などが注目されて小泉自民党が圧勝した選挙である。
著者は、この選挙は意図はともかく、プロパガンダの原則に則っていたとする。確かに、このときの民主党は大敗する理由はそもそもなかった。そういう意味で、プロパガンダに国民が踊らされた選挙だったと言えるだろう。
同じように、今度は民主党のプロパガンダ作戦が大成功したのが、2007年参議院選挙である。消えた年金記録などの巧妙なプロパガンダによって、自民・公明両党は大敗してしまった。年金問題は、安倍政権の責任でも自民党の責任でもなく、ずさんな管理をしていた社会保険庁の責任である。
当時の安倍政権はさしたる失政もなく、むしろ将来のための重要な法案を次々成立させるなど実績を上げていたにもかかわらず、メディアのマイナス・イメージ報道と民主党のプロパガンダ、それに幻惑された愚かな国民によって腰を折られてしまったのである。
著者が示す「プロパガンダの原則」は大変に興味深いものである。
さて、最近のインテリジェンス関連の書籍で必ず言及されるのが、2004年の上海総領事館電信官の自殺事件である。中国公安のハニートラップにかかり覚悟の自殺を選んだ電信官の事件は今後に伝えていかねばならない。
そうした国際的な謀略で狙われるのは、外交官や自衛隊関係者ばかりではない。民間の商社マンや新聞記者などもターゲットになる。
本書では、我々民間人がセックス・スキャンダルなど工作をかけられた場合の対処法も示されている。単純な対処法なのだが、これがなかなか有用な情報だ。
また、実用的な能力として、人前でメモを取ることのできないインテリジェンス専門家の記憶術についても書かれている。記憶力の強化法は評者も実践したいものである。
さらに、会食や贈り物の技法など、ビジネスや日常に応用できそうな話もある。
各国が行うインテリジェンス工作の実例や、インテリジェンス文化など、興味深い話題が満載された書なのである。
紙の本
宗教をもう一度僕らは考えるべきだと思いながら
2008/05/20 22:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤優の議論の中で 一番の特色は 宗教を絡めた社会分析ではないかと思っている。
日本人が宗教に比較的無関心である点は 世界でも突出している気がする。この「無関心」は個人的には好きだ。宗教を巡って死んだ人の数は 膨大といった言葉ですら形容が出来ないと思うからだ。従い 日本人の宗教への無関心さは 人間として先進事例であるとも思う。
但し 現実の世界を理解するに当り その「無関心」は「鈍感」を意味してしまう可能性は高い。その点を 本書を読みながら再度感じた次第だ。
グローバリズムという言葉が新聞にも毎日載っている。その割には 日本の新聞には外国の記事は少ない気もするが 少子高齢化を迎えている日本として 世界でどうやっていくかは企業レベルでの課題になっている。
その際に「宗教が解らない」ということは 時として致命的になる可能性がある点はよほど肝に銘じなくてはならないと思う。
宗教とは人間が作り出した特殊なモチベーションのシステムになっているのが現代である。日本人として「自爆テロ」の論理は理解を超えているが 一方 エリート教育を受けた人間が 宗教をドライバーとして自ら「自爆テロ」を行っているのも世界だ。この「世界」を「理解しがたい」という言葉で片付けているだけでは「鎖国状態」であると言われても反論出来ないと思う。
世界に内在する「論理」を理解することは 21世紀の日本にとっては死活的な課題だと確信している。その大きな要素が「宗教」である。そう考えることで 佐藤優というインテリジェンスが 神学から出てきたという事実が漸く理解出来るのだと思う。
大変刺激的な読書となった。
紙の本
世界情勢、社会情勢がたっぷり
2023/08/31 09:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
日常生活で諜報活動に従事するなんてことは通常あり得ませんが,巷にあふれる様々な情報に内在する論理を正しく読み取る力、これこそ現代求められている力かと思いましたよ。
紙の本
読んでいて非常におもしろい。が、本書に書かれていることがインテリジェンスの全てではないことに注意。
2008/02/08 00:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Hotel. - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、外交官として活躍した著者による、インテリジェンスに関わる活動のうち主にHUMINT(human intelligence)の、特に工作活動に焦点をあてたものである。
日本にはCIAやSIS、モサドのようなHUMINTを専門的に行うインテリジェンス機関は存在しない。そのような中、また外交官という身分上の制限の中で、著者が経験したり、あるいは手に入れた情報から、「見えない戦争」がどのように行われているのかを明らかにされている。また、著者はロシア担当だったこともあって、他のインテリジェンス関連の書籍とは違った角度から様々な検証がなされている。まるでスパイ映画の中の話のような事例がたくさん紹介されているので読んでいて非常におもしろいし、国際政治の厳しい現実を思い知らされる。本書は、国際情勢等の報道から如何にインテリジェンスを生み出すか、のよい見本のひとつであろう。
ただし、本書だけを読んでインテリジェンスをわかった気になっていると、日本政府が対外インテリジェンス機能の強化に向けて動いていると聞いたとき、「日本にもスパイ機関を作るのか!」などとあらぬ誤解や反発を招きかねない。本書に書かれているのはあくまでもインテリジェンス活動のうちの一部である。情報生成の種類としてはHUMINTの他にも、SIGINT、IMINT、OSINTなど様々な種類があるし、インテリジェンス・コミュニティの全てが本書で明らかにされているようなダーティーな活動を行っているわけではない。本書を読んでインテリジェンスに少しでも興味を持たれた方々には、他のインテリジェンス関連の書籍も読んでみることをお勧めする。