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ガリレオ・ガリレイ 宗教と科学のはざまで みんなのレビュー
- ジェームズ・マクラクラン (著), 野本 陽代 (訳), オーウェン・ギンガリッチ (編集代表)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:大月書店
- 発行年月:2007.5
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紙の本
ガリレオの科学観ふまえたガリレオ像
2007/11/13 06:10
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズとして発売された「オックスフォード科学の肖像」の一冊。これからも続々と発売され続けるようだ。
ガリレオといえば「地動説」。本書の副題が「宗教と科学のはざまで」となっていることから、異端という宗教問題から、どこにでもある記述と思いきや、しっかりと「科学」の幕開きとしてのガリレオの先駆性が示されている。
「17世紀に入るまでは、すべての知識は哲学の一部として扱われ、自然、社会、そして宗教も、原理を論じ考察することで説明されていた。その後、ガリレオたちが自然界を説明する新たな方法を開発した。彼らは、論考に実験、測定、計算をつけ加えることにで、自然の研究を哲学から切り離し、科学へと変えたのである」
この文中で用いられている「哲学」という意味をしっかりとおさえて読めば、興味深い。2000年間もヨーロッパの思想を支配し続けたアリストテレスの「自然哲学」。このアリストテレスの「自然哲学」との論争抜きにガリレオの自然を科学としてとらえた先駆性を語れないかもしれない。
アリストテレスを擁護する学者と宗教との関係、この二つの点をふまえながらの記述、ガリレオの業績の分析がされており、わかりやすい入門書になっている。
「若い読者から一般向け」と銘打っているだけに、ガリレオの業績だけでなく、専門的知識もやさしく解説してくれるシリーズとしてお薦めかもしれない。まあ、まだ本書1冊しか読んでいないので、シリーズそのものを薦めるわけにはいかないが、期待はできるだろう。
紙の本
宗教から哲学・科学が分かれていく姿を描いた、「科学者の」ではなく「科学の」肖像。
2007/12/20 17:25
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
17世紀という時代背景を抑えながら、ガリレオ・ガリレイを通して科学が科学としての方法、地位を確立していくありさまを描く。この本は、ガリレオの伝記でもあり、科学の歴史書でもある。
シリーズの名称は「科学者の肖像」ではなく「科学の肖像」である。このシリーズが描こうと目指しているのは、歴史的な業績を残した人間そのものというよりは歴史的な科学の出来事についてであることがここにあらわされている。
本文自体は100ページもないだろうか。思ったより薄い。望遠鏡の光学理論や惑星軌道の話など、科学知識の部分は各章の終りにコラムとしてまとめてあるので、本文をさえぎらない。そのせいもあるだろう、全体が見通しやすくてすらすらと読めた。
「医者よりも数学者になりたかった」などの感情を示す文章もあるが、全体としては淡々と、歴史的な背景の中でガリレオの位置を見渡していく。ガリレオは「哲学と宗教を引き離す戦いのシンボル」に祀り上げられたという部分も多分にあることにも、きちんと触れられている。
何かが確立するときとは、他の何かとの違いが顕在化し、対立や闘争がおこる時なのかもしれない・・・。こんな普遍的なことまで思い至ってしまった。それを妨げない、編集側の「思いいれ」を表にあまりあらわさない綴り方は、物足りなく思う読み手もあるかもしれないが、私には好ましかった。
最後のまとめの章に少しだけ書かれている、その後の教会の対応についてもう少し詳しく触れてくれれば、宗教と科学の問題が現代にどうつながっているのかがわかりやすかったかも、と少し心が残る。しかしガリレオの話としては、この本の終わり方で良いのだろう。
他の巻でもどのように科学を綴ってくれるのだろうか、と期待できるシリーズである。個人的には、表紙の絵が「へたうま」っぽくてあまり好みではないのだが。。。もうちょっと格調高いものでもよかったのでは、というところなので星一つ減。
紙の本
歴史的和解へ
2009/07/24 22:18
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は150頁ほどのボリュームの中にガリレオ・ガリレイの人生を詰め込んだ本です。行間からは彼の研究に対する姿勢が読み解けます。さらに、彼のしたたかさも。
ガリレオは1564年、イタリアのトスカナに生まれました。医学の学位を取得するつもりで大学に入学するも、やがて数学に傾倒していきます。その流れから自然観察へとのめりこんでいき、やがて当時の最大権力である教会側と一騒動を起こすことになります。
彼は木星の衛星を発見し、さらに金星の満ち欠けも観察しました。それは地球が太陽の周囲を回っているという「地動説」を補強するものでした。ただ、ガリレオの最大の功績は、それだけに留まりません。彼の最大の功績は自然界を説明する新たな方法、つまり観察、実験、測定、計算という過程を論考に付け加える科学的方法を確立したことです。
しかし、彼が確約した16世紀後半から17世紀前半は、アリストテレスが構築した自然体系こそが絶対でした。そして、アリストテレスの考えを受け継いだ学者が正しい存在として君臨していました。
ガリレオは、彼らの立ち向かおうとしていたわけではありません。ただ、純粋に自然と対峙しただけでした。そのために自ら望遠鏡を作ったり、追求の手を緩めません。その精神が彼をやがて追いつめることになります。ただ、当初はうまいことやっていたようです。1611年にはローマのリンチェイ・アカデミーの会員に選ばれるほどでした。
実験成果を本として出版することは無論、その成果物や実験器具を権力者に渡して職や金銭を手にし、さらなる実験を追求していました。逆の言えば、権力者次第といった危ない状況だったようです。
その結果が1633年の異端諮問所から突き付けられた有罪判定でした。
本書からはガリレオの研究者としての姿勢と実業家としての手腕がうかがえます。「研究には金がいる」とは何となく言い古された感がありますが、それは遠い昔でも同様だったようです。“出資者”を喜ばせながら研究を進める必要があった。ただ、ガリレオは当時としては地雷のような“真実”を見つけ、それを突きつけてしまった。うまいことやろうとする反面、真実から目をそむけることはできなかった。
「それでも地球は回っている」という一言は、逡巡した彼の人生の結晶のような一言なのかも知れません。
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