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「今、われわれは意外とすごいことを知っているんですよ。」地震学者たちはこうアピールする。すごいことは二つある。長期的な予知は現在でもできていること、そして、プレートの境界で起きる巨大地震については、もう少し短期的に,しかも精度よく予知できる可能性が見えてきたことである。
こんなことを言われても、現実には地震学者たちが予想していなかった場所で大地震が起きている。彼らに不信感を持つ人も多いだろう。今さら地震予知なんて、イカサマだと思う人もいるだろう。しかしそれは、地震学者と市民の間で、地震予知に対する考え方にギャップがあるからだ。本書には、その溝を埋めたいと切に願う地震学者たちの想いがぎっしり詰まっている。
例えば、時間スケールに対するイメージにギャップがある。多くの市民は自分の住んでいる町に大地震が来るのが、明日なのか、それとも半年後なのか、という時間スケールで知りたいと思う。一方で、地震学者たちは三つの時間スケールで地震予知を考えている。具体的には、数百年〜数十年単位で考える長期予知、数十年〜数ヶ月単位の中期予知、数ヶ月〜数時間単位の直前予知である。
長期予知は現在でも十分にできるという。これは地震学者たちが、古文書や、遺跡、堆積物、地形など、様々なものに残された地震の痕跡を調べ、いつ、どこで、どれくらいの大きさの地震が何年おきに発生していたのかを明らかにしてきたおかげである。これら過去に起きた地震の発生パターンから、将来に地震が発生する時期をおおまかに予測することができるのだ。2003年十勝沖地震は、このようにして予想された場所、規模で実際に地震が起きた例だという。
しかし、長期予知は発生時期の誤差が数百年〜数十年と大きい。また、地震の履歴をもとに経験則のみで予測するものであり、原因に基づいた予知ではない。そのため、先の誤差を小さくすることが難しい。
これらの問題を解決するべく、地震学者たちはここ十年間、中期予知にむけて様々な準備をしてきた。中期予知とは、地震を起こす原因をもとに発生時期を予測するものである。まず、地震計やGPSの観測網を整備し、地震の原因となる地下のひずみを観測できるようにした。おかげで、地下のプレートの境界にある断層がどのように動いているのかが見えるようになった。さらに、実験から得られた方程式をもとに、コンピュータの中で地震を起こすシミュレーションができるようになった。現在では、プレートの境界で過去に起きた巨大地震のくり返しが再現できるまでになったという。このように、地震発生の原因となる現象が次々と解明されつつあり、発生時期の誤差を縮められる兆しがようやく見えはじめてきた。
中期予知や直前予知が実現するには、まだもうしばらく時間がかかるようだ。観測技術の進歩、シミュレーションに用いる方程式の改良、正確な地震の前兆現象を捉えることなど、まだまだ研究を続けていかなければならない。
「だからこそ」と地震学者たちはいう。地震の被害を減らすためには、市民の協力が必要だと。予知の実現だけに頼らず、日頃から市民全員が防災への関心を強く持つこと、そして地震学者と市民が予��の精度について共通の理解を持てるようになることが重要だという。
地震学者たちと私たちのギャップを埋めるために、彼らの言葉にぜひ耳を傾けてほしい。
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特に、アスペリティモデルについて興味深く読めた。アスペリティモデルは、沈み込むプレートと陸側プレートが接している部分を、アスペリティとゆっくりすべり域に分けるモデルである。地震発生のシミュレーションできるというものである。
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アスペリティ、前兆すべりに関する基礎知識について知ることができた。難しそうな地震予知を科学的に語ろうとした読みやすい本。
3.11の4年前に原子力発電所の安全神話に疑問符をなげかけていたこともおもしろい。
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今回私が紹介するのは、「地震予知の科学」という本である。
阪神淡路大震災、3・11東日本大地震、熊本地震…日本は世界中に最も地震災害の多い国だと言える。我々の身の回りでは、地震災害がいつ起きてもおかしくはない。なぜ地震が起こるのか、地震がいつどこに起きるのか、一体地震が予知できるのか、今ほど人類がどこまで地震に把握しているのか、この本では詳しく説明してくれる。
空を見上げて、“あれ、怪しい雲だ”と思うときがよくあるでしょう、「地震雲」という言葉がマスコミやSNSでよく流れている。「地震雲」は実際に存在しているのか、若しくはデマなのでしょうか? 我々が踏んでいる土地の下に、「森本・富樫断層帯」がある。30年以内に、マグニチュード7.2程度の確率は2%~8%だと、政府の地震本部に示されている。この2%~8%の確率は、2桁にも届かないのに、なぜA級活断層下位に入っているのか。
南海トラフによる巨大地震(M8~M9)では、30年内発生の確率は70%~80%と高いと言われている。この災害は予知可能か、どうやって予知するか。スロースリップとアスペリティとはなにか?
この本では、地震発生の仕組み、地震予知の可能、パソコンシミュレーションについて科学的に深く解き、将来の巨大地震に関して予知や防災対策に役に立つ。天気予報のように、科学の進歩により将来では地震予報にも役に立つと期待されている。 (地球惑星科学コース 3年)
私がこの本を読んで一番はじめに感じたことは「分かりやすい」です。この本は日本地震学会地震予知検討委員会が執筆、つまり地震の専門家が書いた本です。私は活字があまり得意ではないので、この分野に限らず専門的な内容に踏み込んだ本に対していつも読みにくい(理解が難しい)という印象を持ってしまっていましたが、『地震予知の科学』に対しては読みにくいとは思いませんでした。地震予知について専門的な単語も出てきますが解説が詳しいのでこの分野を学んでいなくても理解できるようになっています。ところで、この本の内容はタイトルの通り地震予知です。科学的に地震が来ることを予知するとはそもそもどういうことか?から始まり、地震予知の歴史や種類、実際に予知が成功した例、予知の精度を上げるにはどうしたら良いかなどが書かれています。初版は2007年であるため現在の地震予知の精度や研究内容とは多少違いがあるかもしれませんが、巨大地震の発生とその予知についての基本的なことが南海地震(南海トラフ地震)を例に詳しく述べられています。地震や地震学に少しでも興味がある、難しくない本を読みたいと考えている人はぜひこの本を読んでみてください。 (地球惑星科学コース 4年)