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紙の本
素人による素人のための宗教ガイド
2002/03/25 19:28
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投稿者:yo_423 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、日本の神道と仏教について、民俗学的な観点からわかりやすく説明するもの。まず、日本人の宗教的な性格について解説したあと、神道、仏教の順にとりあげ、最後に寺社ガイドのようなものをまとめている。
この本の長所は、問題設定の仕方が身近で、とてもわかりやすいこと。例えば第三章の「日本の神々と神道」の章を見てみよう。節見出しを引用すると、「神に仕える人々/参拝の作法/暮らしの中の神々/『ハレ』と『ケ』」となっている。「古事記、日本書紀の成立事情」とか、「平田篤胤の思想」とか、「国家神道の歴史的役割」みたいなものは一切書かれていない。
そもそも、そういう思想的なややこしいことはおいといて、ふだん何気なく拝んでいる神様とか、仏様についてちょっと知っておこうというのがこの本なのだ。「七福神ってどういう神様?」とか、「節分のもともとの意味」とか、「どの神社に、どんなご利益があるか」(笑)なんてことは、普通知らないけど、ちょっと知っておきたいと思うだろう。そういう面白そうなトピックがこの本には詰まっている。私も、「本来おみくじを枝に結ぶのは、その神社の神が『縁結びの神』だった場合だけ」などという記述を読んで、へえーと感心させられた。
このような長所は、おそらくこの本の著者が(宗教学的に)素人であることからくるものだと思う。もちろん監修の岩井宏實さんは専門の学者だけれども、巻末の著作権表記を見ると「Banyu-sha」となっていて、これってたしか編集プロダクションだ。素人が書いているからこそ、素人が知りたいこと、素人が面白いと思うことについて、よくポイントが押さえられているのだろう。
と同時に、この本の欠点もそこにある。記述が平板で、食い足りない部分があるのだ。特に、民俗学者から聞き書きをしたせいか、民間信仰の説明は丁寧でわかりやすい反面、宗教学的な面には弱い。例えば、仏教の様々な宗派について簡単に紹介する部分で、「天台宗の密教を台密という」、「真言密教を東密という」という記述が出てくるが、その両者がどう違うのかはまったく触れられない。この本ではいろいろな神仏や宗派が取り上げられているが、それぞれの宗派の持つ世界観や、それがどう広まっていったのか(広まらなかったのか)について、もう少し詳しく述べてほしかった。
とはいえ、これはないものねだりかもしれない。実際この本は読んでいてとても面白く、限りあるスペースで、民間信仰のバックグラウンドまでよく盛り込んである。これより上のレベルを求める人は、文句を言わないで別の本を買えばいい。
現在、『陰陽師』などのブームで、民俗学的なものに注目が集まっている。そんな中で、この本は、日本の宗教を知るための手軽なガイドブックだと言える。
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