- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本
固いものを/やわらかくする仕事
2015/02/24 05:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:弟子迷人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレですが、この魅力を伝えるには一番適するので、種村季弘の評にも引かれた『おばあさん』から「豆」の全文を引用します。
おばあさんは きのう/明るい縁側で 豆を選った/虫食い豆を 一つ一つ/曲がった指で 摘まみ出した//おばあさんは ゆうべ/豆を水に浸した/「もとの自分にもどっていいよ」と言って/布巾を載せた//きょう おばあさんは/豆の入った鍋を 火に掛けて/そっと蓋をする/それから近くの椅子にすわり/背もたれに 寄りかかる//お鍋は ことことことこと/火は とろとろとろとろ/おばあさんも とろとろとろとろ//小春びよりのひるさがり/おばあさんは/固いものを/やわらかくする仕事を/している
(以上、『おばあさん』から「豆」全文) ……このように各「詩」も書かれたのではないかと思われました。山崎るり子は/固いものを/(言葉によって)やわらかくする仕事を/している……みたいな。
たとえばその「仕事」は、次の詩のような姿勢によって書かれ、視線・意識から生じてくるのではないでしょうjか。
『だいどころ』より「親子丼」全文引用。
困ったことは/どしゃぶりの雨が/降り続いているのに/少しも濡れずに/親子丼を食べていることです/ライラックの葉陰で/きのう羽化したキアゲハが/ふるえているのも/知らずに
次、 『詩を書こう詩を読もう詩を楽しもう』より部分引用。註カッコはママ使用されています。
詩を書こう! と私はあなたに呼びかける。おもしろそう、書いてみようかな、とあなたが思った途端、あなたはタモ(小型の掬い網)を持つ人になる。川が足元をさらさらと流れはじめる。あなたはタモを川に差し入れ持ち上げてみる。ほら、何か入っている。ゴミと一緒に小さなチラリと光るものが入っている。あなたはそれを広告の裏や、いらなくなった書類の裏に広げていく。自分という流れの中にこんなに沢山のものが流れていたなんて、とあなたはびっくりする(弟子迷人による中略)書きはじめたのは四十六歳のころ。タモを持つようになって一人の時間を楽しめるようになった。だから詩はいいよ、詩を書こうよ、と私はあなたに呼びかける。(弟子迷人による後略)
他にもたくさん引用してしまいたい作品がありますが、後は読んでのお楽しみ!
文体・雰囲気はだいたいこんな感じで、たいへん素敵な詩集です。そして散文も収録されていますが、『湖の糸車』などは物語的にとても魅力的でした。童話や絵本の好きな方にも、全力でお薦めします。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |