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紙の本

風にならない魂に寄せて

2007/12/26 21:27

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぼこにゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 大事な人との別れはいつも胸に穴を開ける。その人が立ち去り際に心の一部を引き剥がして行くからか、かすかな身じろぎにも痛風のごとく痛む。治し方は知らない。
 別離を振り返るとき、誰しもその記憶を様々に脚色するもので、たとえば去り行く背中を極端に美化して蒸留済みの良き思い出だけを心に残すという策がある。生前いろいろあったけど、世界一ステキなあなたと会えて良かった、今後は千の風になりいつまでも見守っていてね、とか言ったりするわけで、まあそれは嘆きのフチに沈下する人の特権みたいなものだから周囲もある程度大目に見る。
 たぶんこういう人の方が健やかなのだ。泣くだけ泣いたら再び人生を運営できる。相手を、そしてなにより自分を許す術を知っているから。
 それを知らない人がここにいた。
 癌に蝕まれた恋人との最後の日々の記録。この本が実際の生活とほぼ同時進行で書かれたことに驚嘆する。お馴染みの荻野節、軽妙洒脱でちょっとジャマくさい駄洒落の要塞に守られて、足がすくむような深淵がうつろな大口を開けているのだ。怖い。しかしながらその怖さはあくまで隠し味であり、この作家の、極端にパワフルで慢性的な躁状態、いつかプツリと糸が切れるのではないかと読者をハラハラさせておき、どっこい最後のピルエットを鮮やかに決めて見せる豪腕はこんな時でさえ健在。男だねぇ。
 精力的な女が仙人タイプの男に惹かれてまとわりつくというのは普遍的な現象だけれど、そんなほほえましい関係が彼の罹患により暴走していく様はなんか壮絶ですらある。もはや戦線は「彼vs病」ではなく、「私vs彼の病」ひいては「私vs彼」に移行しているのだ。
 闘病に積極的でない(いや、人生そのものに対して積極的でないのだが)彼に焦れた著者がただ一度、やるせない胸の内を吐露する箇所には強く打たれてくらくらとする。
『ずるかわいそうな人なんです。絶対死にたくないくせに生きるのもいやなんですよ』
 ずるかわいそう、という概念の発明はこの面白くも激烈な一冊の本の肝であり、裏を返せばそれは愛する男が泳ぎのマネゴトすらせず溺れなんとする傍で、そんな男だからこそ惚れてしまった自分をビリビリと引き裂く叫びなのだ。相手を責める矢を一本打てば、自分の胸に百本の矢を突き立てずにはいられない。
 簡単に許すことはできないのだ。それは諦めることと同じだから。諦めないということが著者の生来のベクトルであり、鋼のような誠意なのではあるまいか。
 著者にとってサヨナラの駅に佇む日々は、きらめく蒸留水とのたわむれではなく、共に過ごした歳月の成分をそのまま煮詰めて結晶化させるような、重苦しく濁った泥沼をもがきつつ進む行程であったに違いない。絆というのは元来様々な不純物を含有し、キレイゴトでは済まない闘いによって強化されて行くものなのだろう。
 だからこそ、愛は背負うに値する。やはりこの人は、たぐいまれなる語り部なのだ。
 心に穴が開いた日に、私が欲しいのはこういう本だ。

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2007/09/12 10:38

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2007/10/08 14:38

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