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人間性はどこから来たか サル学からのアプローチ みんなのレビュー

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紙の本

ヒトの行く末

2010/08/14 18:23

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 一見すると哲学書のような印象を受けるタイトルの本書。「サル学からのアプローチ」という副題がその内容を示唆するように、本書は人間の特質がいかに成立していったかをサル学を主軸としてまとめあげられたものである。無論、サル学のみでは探究しつくせないことも多い。そこは人類学や比較解剖学、古生態学や先史考古学など関連書学の成果を総合して多角的なアプローチが試みられている。


 サルに見る野生の本能は、生存と継続を基軸とする。生存は個体のそれで、継続は種としてのそれである。社会つまり集団の形成は生存と継続のバランスを環境に適応させた結果のようだ。外部からの攻撃を回避するためには大集団の形成が肝要である。しかし、集団の規模が大きくなると十分な食料の確保が困難となり、加えて生殖の機会も少なくなる。そのため、周辺環境に適応しつつ、適度な規模の集団が形成されていくことになる。

 さらに集団の維持には、互酬という関係が必要となる。互酬で有名な行動は毛づくろいだろう。個体では不可能な部位の毛づくろいは、相互協力が不可欠である。霊長類にはそれ以外にも子守りや食料の分配、闘争の援助など様々な協力関係が窺えるという。

 互酬の行動は、特定集団の結びつきを強化し、やがて特定集団に共通の行動様式の確立へと繋がっていく。これが文化の起源と言えよう。例えば道具の使用。道具の使用では木の枝をアリ塚に突っ込む白アリ釣りが著名だろう。一見単純なこの行動も、地域によって釣る道具の差や対象のアリの差が認められるという。


 一部上記に示したようなサル学の進展から、野生の本能は生存と継続でそれらを保持するため集団が形成され、文化が形成されたことが読み解ける。集団や文化の形成そして家族の起源に関するサル学の研究は、人間性の起源を明確に示しているかに見える。しかし、実際のところ、ヒトには生存と継続と相反するような性質もあるらしい。

 人口は右肩上がりに増加しつつある。しかし、地球資源は無尽蔵に存在するわけではなく、ヒトをいくらでも養うことはできない。「人間社会がうまく機能していないのは、何千万という人が飢餓に苦しみ、絶え間なく戦争が起こり、地球環境が悪化し、資源枯渇が叫ばれている今」(289頁)、自明のここと筆者は説く。そして、解決策としては人口の抑圧しかないと明言する。

 日本では少子化が問題視され、年金や高齢者の介護問題が脳裏をよぎるが、そんなことは地球規模の問題から考えると瑣末なことなのかもしれない。今でも人口は増え続けているが、それは種の生存そのものを脅かす愚行と言えよう。経済成長という観点から上記問題への解決を経済学者は考えるが、いつまでも可能な経済成長などあり得ないと筆者は言う。人口過剰を抑制し、“適度な”数で日々を送るようにしなければ戦争をはじめとする地球上の問題は解決しないという主張は、あながち言い過ぎではあるまい。

 
 サル学を通じて筆者が説いてきた人間性の探求は、ヒトが野生の本能を喪失しつつあることを浮き彫りにしてしまったようだ。本能の喪失は生存と継続を危うくする。エコ問題が取りざたされる昨今、本書のように人口過剰の抑制をエコも含めた問題解決の糸口として提示されることは、あまりないのではないだろか。目先の事象に捉われてエコ問題についてあれこれ議論するよりも、本書にははるかに多くのことを考えさせられた。サルのことヒトのこと、そして地球のことを考えたい全ての人に一読をお薦めしたい。

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