紙の本
死してなお
2008/03/02 21:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
書評、といっても本作ストーリー自体に対する面白さは言わずともがなである。完全に推敲されていないことを指摘する人も多いだろうが、私のような若輩者にはこれで十分である。足りて余りある作品。
無二の親友・柿島が暴漢に襲われ謎に満ちた死を遂げる。不審に思う堀江が調査を進めるとともに、流通業界における矛盾と軋轢に苦しむかつての柿島と、彼を取り巻く敵対者、妻、そして彼らを結びつける過去が次第に明らかになっていく。
旧友が貶められた理不尽な死に、常軌を逸するほどの怒りを堀江があらわにしたのはなぜか?
己の意志を貫き守り続けんとする純潔の友、それはまさに堀江自身の理想、あるべきかつてのよき時代を反映した姿。それを踏みにじられたという怒りがそこにはある。
純粋潔癖な柿島。柿島を慕い共に歩み続けてきた部下すら「サラリーマン」という悲しくも逆らいがたい、時代の宿命に流されていく。
全体に突き通る一筋の意思。 それは堀江という人物を通して訴えられる、藤原氏の現代社会の希薄さや物理主義・合理主義・・・非人間的な世間への警鐘なのかもしれない。
美しい会話文、よどみない流れ、過不足無いストーリー・・・藤原氏の描く作品は至極理想的である。
ミステリー要素は薄いが、ストーリーとしてあるべき処に良き形で迎える結末は分野など超えて理想的ラスト・クライマックスといえよう。
「理想」というコトバは、正直照れくさい。理想と現実を切りはなして現実社会に即しておとなしく生きるのが大人なのだと、誰もが知っている。
しかし、こうして一筋の意思を守り通すことのなんともいえない感動を私は知ってしまった。死して尚、こうして私たち若輩者を律してやまない藤原氏の冥福を改めて祈りたい。
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藤原伊織さんの遺作の1冊。
推敲半ばで逝去してしまったらしい。
「てのひらの闇」を再読してから読んだ。
登場人物の一人ひとりが魅力的にしっかり描かれていてさすが。
新作がもう読めないのが非常に残念。
〔図書館・初読・11/20読了〕
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逝去なさったことで、連載中のものを単行本用に改稿する作業が途中までしかできなかったという作品。でも途中までの改稿部分と連載中そのままの部分との境目は目立たずわからなかったほどです。
これは「手のひらの闇」の続編。
堀江と柿島それぞれに会社を退職してその後の人生を歩んでいたが、ある日柿島がいわゆるオヤジ狩りと呼ばれる暴漢に襲われて亡くなってしまう。
そこで堀江は前作同様自分の足で犯人探しを始めるのだが・・・
柿島の妻奈保子の過去と絡んで進む展開はどうも偶然にしちゃ出来すぎだけどそれを言っては物語が成立しなくなるので
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藤原伊織の遺作ということで未完成らしい。どなたかのレヴューで先に「てのひらの闇」を読んでおいたほうが入り込めるとあったのですが、これはこれで良かった。「てのひらの闇」読みたいです
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藤原伊織の遺作。「てのひらの闇」の続編ということだったが、まるっきり思い出せない状態で読み始めた。早い段階で幾分思い出すことは出来たが、しっかり楽しみたければ「てのひらの闇」をもう一度読んでからにするべきだったと後悔。焦って読まなくてもいいのだから。
スキンヘッドの社長、良いキャラですな。
2008.1.24
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これが遺作になるのはほんと、惜しい。前作を読んでいなくともこれ1冊で十分な作品に仕上がってる。中年の企業マンが事件に巻き込まれ、四苦八苦しながらも真実にたどり着こうとする、その姿。くたびれた中年、だとしてもかっこいいよー。
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ふだんはハードボイルド小説は読まない私ですが、人としてのかっこよさをなんとなく感じていた藤原伊織氏の遺作とのことで手に取りました。
それぞれの登場人物はとても魅力的。主人公の殺された親友以外は、みんな陰の部分とかっこよさをあわせ持っているところが特にいい。そして、それぞれの関係性もぐっときました。
ただ、ハードボイルドを普段読み慣れない私としては、暴力シーンがつらくもあり、主人公の親友の殺されるまでの経緯も違和感を持ってしまいました。
しかし、同世代の男性サラリーマンなら、主人公の姿勢や生き方に対して、ある種の羨望も持つような男くささは、やはりかっこいい小説だと思います。
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「てのひらの闇」の続編。
友人の柿島が殺され
それに疑問を持った堀江は調査に乗り出していく・・・
この本を読む前に「てのひらの闇」を読んだ方が
堀江と、柿島の関係が分りより楽しめると思います。
この作品を読むのを楽しみにしてたんだけど
藤原さんの遺作品にもなるので残念で仕方がないです。
もう、新作は読めないんだなぁ・・・
藤原さんの本は、落ち着いた状態で読めて
今まで読んだ作品にハズレはないです。
くたびれた中年男キャラは
やっぱり、藤原さんじゃないと(笑)
残してくれた他の作品も、ゆっくり読んでいこうと思います。
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「てのひらの闇」の続編。
作品の力強さが冒頭からグイグイする。もっと藤原伊織の作品が読んでみたかった。
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うーん遺作です・・・
この小説でこの人の小説は最後です・・あぁ・・
残念でなりません・・一番好きな作家さんです・・
どうにもこうにももうこの世には居ないので
しょうがないんだけど・・ホントに残念・・
これを読むために「てのひらの闇」をもう一度
読んでから読みました・・・こんな魅力的?というか
リアルで複雑な人間像を描ける人はもう出てこないかも?
あぁ・・残念・・・
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「てのひらの闇」の続編にして、作者の遺作。
2007年5月17日、59歳の若さで逝去。
この作品の中にも悲しみはたくさん出てくるけど、ナミちゃんと三上社長、堀江と大原など、明るい話題でこの作品自体は終結していことから、ぜひ、まだまだこのメンバーでの話を書いて欲しい。
もう藤原伊織の作品が読めないと思うと、ホント、さびしい限りです。
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どいつもこいつもあいかわらずかっこいいなあ。こんな都合のいい出会いがあるかって感じではあるけど。この人の作品もうちょっと読みたかったです。もう読めないのが残念。
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藤原伊織の遺作、ゆっくり味わいながら読みました。
てのひらの闇は鋭いナイフみたいな切れ味で、ざらついた荒涼感が底辺に流れているような
独特の雰囲気があって一気にストーリーに引き込まれた思いがありました。
続編の名残り火はてのひらの闇に比べると切れ味は鋭くないものの、特に周りを取り巻く柿島への思い(作者が柿島に思うものかも)が
重厚に描かれていて、再びあの世界へ引き込まれました。
このタイプの藤原作品はハッピーエンドに絶対終わらないのが私は好きです。やっぱりそうだよね、とすごく納得してしまうのです。
ただ、最後事件の種明かし部分に書き込み不足というか、文章を急いでいる感じが残りました。
読んでいて少し違和感があったんですが、あとがきに校正が最後まで終わっていなかったことが書いてあり納得しました。
もう藤原伊織の新しい本を読むことはできないのかと思うと、本当に残念で悲しいです。
ご冥福をお祈りいたします。
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日本で数少ないハードボイルドの作者さん
でも、もう死去されてます
数は少ないですが、良質の作品を残して・・・
どうして藤原さんの主人公は
オジサンなのにカッコいいのでしょうか
遺作です・・・読んで損はしません
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「てのひらの闇」の続編。
藤原伊織さんの遺作。
この人のこういう作品はとても好きなので、もう読めないのがとても残念。