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シーボルト日本植物誌 本文覚書篇 みんなのレビュー
- P.F.B.フォン・シーボルト (著), 大場 秀章 (監修・解説), 瀬倉 正克 (訳)
- 税込価格:3,960円(36pt)
- 出版社:八坂書房
- 発売日:2007/10/01
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紙の本
シーボルトが植物を通してみた日本。
2008/05/12 09:20
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
シーボルトの「日本植物誌」の中から、シーボルト自身がフランス語で書いたといわれる「覚書」の部分を翻訳したもの。151の植物画はモノクロ縮小で収録されている。
シーボルトの「日本植物誌」は、日本の植物を本格的な形で世界に初めて紹介したものとしての価値が高いことはいうまでもない。しかしこの「覚書」の部分は、シーボルトが江戸末期の日本でどんなものに興味を持ち、どんなものを記憶したか、がよくわかる「風俗誌」としても興味深く読める。原著では植物学的な形態・生態の詳しい記載は別にあり、この部分は植物愛好家などの興味を引くような部分を記述しているからであろう。長い覚書がつけられているものから、覚書のないものもあり、不規則であるが、内容は生息環境や形態から文化・宗教的な位置づけ、薬効などシーボルトの医師としての興味に関わるものまで含め、多岐に渡っている。
少し例を引いてみる:
・「シキミは・・・仏教僧によって日本に持ち込まれた植物の一つである。・・寺の境内によく植えられている」など、宗教、しきたりと関連した記載。
・ウメについては、みごとな盆栽をもらったことも書かれている。塩漬けの実(梅干)を非常に日本人は喜ぶが、「ヨーロッパ人には「すっぱくて苦く、とうてい誉められたものではない。」というの記述は微笑ましい。
・フジも、「(花の下では)米でできた一種のビールである好みの「サケ」を飲み交わし、器楽の調べにあわせて舞いかつ歌って楽しむ。」とある。ビールはちょっと変だが、藤の花の花見の様子が面白い。
・ガクアジサイの和名をAjisai、アジサイの和名をOtaksaとし、アジサイを説明する文章の中では「出島の植物園では「オタクサ」の名で栽培」とだけ書いてあるのは、「オタクサ」は妻の「お滝さん」の名をつけたのだ、と聞いている我々日本人にしてみれば、なにやらシーボルトの「おもいいれ」と「おくゆかしさ」を感じてしまう。
・「このきれいな低木は・・・(レンギョウ)」のように、観賞用の価値が記載されるものが多いのは、この植物誌を第一部とし日本の植物への園芸家の興味を引こうとしたシーボルトの選択意図もあるのだろう。もし第2部がまとめられていたなら、どんな植物が入っていたのか、と興味はつきない。
さまざまな記載があるので、つい見過ごしてしまう面白い事項もありそうである。短い滞在の間の知識なので誤解もあったりする。そのあたりを補強するために、同じ監修者が解説したちくま文庫版の解説とカラー図版などとあわせて読むと参考になるだろう。
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