投稿元:
レビューを見る
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない」
教師とは、1つの職業である。その職業の基本理念である日本国憲法には、「人格の完成」、これこそが、教育の目的であると書いてある。
本書では、教師が直接講義し、それを生徒が聞くだけの従来のスタイルではなく、生徒たちが自発的に意見を交換し合い、先生はそれをニコニコ眺めるだけという、「学び合い」なる指導スタイルを国語という教科を通じて実践した例を、小・中・高にわけて提示している。
「学び合い」によって、言葉をコミュニケーションツールとして正しく使えるようになる―これこそが、「人格の完成」に繋がるという立場からだ。
昨今の下流志向が、孤立化から生まれるとすれば(『下流志向』内田樹著)、教育によってそれを立て直すには、こうした方法が効果的なんではと思わせる。
色んな先生が自らの理想とする授業に向かって真剣勝負をする試行錯誤の跡が、面白い。また、小学生から高校生へ向けて書いた手紙で、「高校生になったらスーパーサイヤ人になれるんですか」という質問に対して高校生が優しく返事を書く、こんな実際の授業でありそうな光景も、読んでいて微笑ましい。