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〈ウィジェット〉と〈ワジェット〉とボフ みんなのレビュー
- シオドア・スタージョン (著), 若島 正 (編/ほか訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:河出書房新社
- 発行年月:2007.11
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紙の本
深い感動はありません。でも、面白い。どの話ももう一度読みたくなる、そういう本です。個人的には「必要」とタイトル作品がいいかな
2008/03/19 21:47
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ出版社から以前でた奇想コレクションの一冊『輝く断片』が面白かったので、同じシリーズのこの本も読んでみようと思った次第。ただし、このタイトル、あまりにビミョー過ぎて、いかに色彩センスのいい松尾たいこのカバー画と、阿部聡の手になる全巻集めたくなる装丁でも、スタージョンの名前が無かったら手にしていなかったはず。
他の小説のタイトル、例えば『火星人と脳なし』のほうが売れる気がします。ま、スタージョン作品の不可思議さを強調するために『[ウィジェット]と[ワジェット]とボブ』というのも分らないではないんですが・・・
収められているのは六編。巻末の編者あとがきによれば、なによりスタージョンらしい独自性のある作品を選んだそうです。でも、スタージョンの他の作品を殆ど知らない私としては、独自性云々は全く関係なく、面白いかどうかだけが判定基準になります。ただし、短篇の宿命か、深い感動にいたる話は無かったかな・・・
とりあえず、全篇を訳者、初出とともに簡単に紹介しておきます。
・帰り道 A Way Home 若島正 訳 《アメージング・ストーリーズ》1953年4・5月号:家出をしたとき、ポールは幹線道路に出るまでずっとだれにも会わなかった、で始まるお話で、果たして少年の冒険は・・・
・午砲 Noon Gun 小鷹信光 訳 《プレイボーイ》1963年9月号:自分に自信をもてないジョーが付き合っているのは、二級品のネズミっ子のサラ・ネル。そんな彼の前に現れたブロンドの娘との会話が思わず弾んで・・・
・必要 Need 宮脇孝雄 訳 短篇集《Beyond》1960年:ニューヨーク州ノースナイアックの町で、なんでも屋の店主G・ノートの前に現れたゴーウィングは今日も突然、予想もしていなかった用事でノートを連れ出す。困っていた男を車に乗せてやれというのだが・・・
・解除反応 Abreaction 霜島義明 訳 《ウィアード・テールズ》1948年7月号(本邦初訳):大きなブルドーザーの運転手だったおれが今居るところはどこだ、いや、そもそもおれは誰なんだ・・・
・火星人と脳なし The Martian and Moron 霜島義明 訳 《ウィアードテールズ》1949年3月号(本邦初訳):発明狂の父親は、火星人と連絡を取り合うプロジェクトから突然、離脱した。平穏な生活に戻った僕の前に現れたのは、コーディリアという名の美女。思いがけなく彼女をパーティの会場から連れ出して・・・
・〈ウィジェット〉と〈ワジェット〉とボフ The [Widget],the [Wadget],and Boff 若島正 訳 《ファンタジー・アンド・サイエンス・フィクション》1955年11・12月号(本邦初訳):古い歴史のある町で下宿屋を営むサムとビティ。そこには自分を見出せない人が集まっている。美しさを武器に女優を目指す少女、身分違いの未亡人に恋する弁護士、銃に心惹かれる職業適性相談員、洋服にお金を注ぐ女、事件が起きた時自分がどういう姿でいるか気になってならない女、一人息子を気遣う母親・・・
編者あとがき 若島 正
感動こそしませんが、どの話も好きです。例えば「帰り道」。S・キングだったらこれだけで100頁は書いてしまうかもしれません。地方だろうが都会だろうが、家出を決心した子供たちは、心のどこかで大人から「家に帰れ」と声をかけられるのを待っているものです。
アメリカらしさを感じるのは「帰り道」もそうですが「午砲」と「火星人と脳なし」でしょう。パーティとガール・フレンド、発明などは如何にも明るいアメリカ、映画の世界そのものです。
でも私が好きなのは「必要」と「〈ウィジェット〉と〈ワジェット〉とボフ 」です。何が起きているのかさっぱりわからないものの、話がどんどん進んでいきます。しかし、それは決してスラプスティックに展開するのではなく、静かに軟着陸する。スピルバーグあたりが映画にしたら、しっとりとしたいいものが出来そうです。
そういう意味では「解除反応」が一番弱い。話のスケールは大きいのですが、構造がシンプルなのと如何にもSFしているので、さほど心を動かされません。SF的な設定を利用していますが、どこか半村良の作品のような、この人は結局、人間を描きたいんだ、と思わせるところが好きです。人間描かずして何が小説か、ですよね。
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