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紙の本
この作品で我が家の歌野の評価がグン、と上がりました。決して可愛さを売り物にしない自然な少女のしぐさも、貴重です。個人的には歌野のベストだと思ってます
2008/06/25 21:12
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか我が家で歌野晶午の評価が高くありません。想像するに『葉桜の季節に君を想うということ』の後味の悪さが尾を惹いているんだと思います。どんなに伏線がしっかり張られていても、主人公に相応しい年齢があるだろう、とまあ若者大好き我が家では、それだけでマイナスになってしまうんですからタチが悪いです。
それに、名前がだめ。もう好き勝手書いちゃいますが「歌野晶午」っていうのがピンと来ない。漢字で並んだ時、美しくない。そんなこんなで、この本も出たときに迷ったのですが、「今度は、維新のまねして子どもネタでロリコン親爺でも喜ばせようってえ魂胆かい」なんて下衆の勘繰りして、遠ざけたまま。
で、半年近くたってふと手にしてみました。読んで意外だったので、最初に高校二年生次女に回しました。その後は大学二年に無事なった長女に。感想を聞くのを忘れていたので、先日、次女を捉まえて聞いたんです。「「みなまでいうな」っていうのが、いいなあ、私も一度でいいから言ってみたい」というのが第一声。
次が「あの子、頭いいんだか悪いんだかよくわからないよね。かわいいかどうかもビミョー」と。「でも、へんにでしゃばってこないのが普通のパターンと違うでしょ」「そうそう、それに自分が人に与えたヒントについてよく理解していないし」「子どもが探偵役やると、それだけで面白くなくなっちゃうけど、そうじゃないしね」。「でも、お父さんにはもうちょっと活躍して欲しかったな」とは夫の弁。
ともかく、歌野のこの作品に関して家族全員が評価しているわけです。しかも、例えば西尾維新や森見登美彦たちが創造したユニークでありながら絶対に可愛い子どもとも違う。だれも舞田ひとみについて「いい」とは言っても「可愛い」とはいいません。でも悪くは言わない。それがいいです。ちなみに、カバー折返しの著者のことばは
こんなに楽しく書けたのはいつ以来でしょう。キャラクターがかわるがわる憑依して、勝手に会話をつむいでくれました。物語の中心には事件があり、地道な捜査や推理により、トリックや意外な犯人があばかれます。しかしそういったミステリーとしての部分よりも、枝葉に盛り込んだたわいないやりとりを楽しんでいただければと思います。もっとも、くすりと笑っていたら、実はそこにヒントが眠っていたりするわけですけど。本書を一言であらわすなら、「ゆるミス」、「やわらか本格」――まあそんなところです。
とあります。ブックデザインについて書いておけば、タイトルにピッタリ、としかいいようがありません。カバー・デザイン:泉沢光雄、カバー印刷:近代美術、目次・扉デザイン:泉沢光雄というのは分かりますが、各話の最後の頁に載っているイラストは誰のものでしょうか?それも含めて泉沢でしょうか。閑話休題、主な登場人物について触れてから、各話の内容と初出書くことにしましょう。
舞田歳三:実質的な探偵役です。浜倉市中央署の刑事課の刑事で34歳。独身です。ひとみの叔父で、元ゲーマーで、現在はひとみのゲーム相手。理一の三つ年下の弟です。名探偵タイプではありませんが、真面目なことは確かです。ただ、いくら姪が一人で寂しいだろうからといって、刑事がしょっちゅう兄の家に来ることができるような職業かは疑問です。
舞田ひとみ:主人公、とはちょっと違います。本人は意識せずに事件解決のヒントを口にする、ある意味、それだけの役なのですが存在感は大きい。浜倉市立富士見小学校五年一組の11歳。母親を幼い時に亡くしている、と人に言います。祖母の季子も二年前に亡くなっているので男で一人で育てられている。叔父さんが、彼女の相手をしているのにはそういう理由があります。
舞田理一:ひとみの父親。チョイ役です。
舞田ふたば:歳三の二つ上の姉で、もっとチョイ役。
野々島愛:東京の放送局のアナウンサー。歳三とつき合っている、というのが強みです。
お話は六篇。三番目と四番目のお話、タイトル間違っていません、はい。
◆黒こげおばあさん、殺したのはだあれ?(「小説宝石」2006年1月号):金貸しの老女・須永キミが殺された。しかも放火までされて。ひとみのクラスのエミリちゃんは歩きタバコの火で焼けどして・・・
◆金、銀、ダイヤモンド、ザックザク(「小説宝石」2006年4月号):先月放火された金貸し須永キミの家の焼け跡を漁っている人間が後を絶たない。ひとみの同級生のオニイチャンが見つけたお宝とは・・・
◆いいおじさん、わるいおじさん(「小説宝石」2006年8月号):ひとみが話題にするのは『赤目おばけ』の歌のこと。そんなとき、市会議員の大多喜要三が殺された。深夜スケボーで騒ぐ若者たちに注意しにいったうるさ型の老人は・・・
◆いいおじさん?わるいおじさん?(「小説宝石」2007年1月号):酪農家の谷口昌孝のもとに次男の明良から救いを求める電話が。そして息子と代った男からは二千万円を用意しろと。そんなとき、ひとみの叔母でバツニのふたばが浜倉にやってきて・・・
◆トカゲは見ていた知っていた(「小説宝石」2007年5月号):ひとみからかかってきた電話は、知らないオバサンが騒いでいるから助けて、という内容。叔母のふたばが出席していたホテルのパーティ会場でおきた殺人事件は・・・
◆そのひとみに映るもの(「小説宝石」2007年7月号):浜倉大学農学部の留学生が殺された。そしてひとみの小学校の四年三組の生徒全員の靴が盗まれた。そして町には怪しい人影が・・・
『葉桜の季節に君を想うということ』ほどではありませんが、結構いい技がどの話にも入っています。しかも、そこそこの大技もあります。我が家では、このくらいの穏やかな、それでいてモダンでしっかりした技が好まれるようです。トリック取ったら何が残る?といった『葉桜の季節に君を想うということ』を読んだ時の激論は影をひそめ、皆で「いいよ、これ」と。
これで歌野晶午は有栖川有栖を越えたんじゃないでしょうか。最後に、カバー後の案内です。
刑事×難事件×おしゃまな11歳=
歌野晶午流「ゆるミス」。軽やかに登場!
舞田歳三は浜倉中央署の刑事だ。仕事帰りに兄・理一の家によ
って、小学五年生になる姪のひとみの相手をし、ビールを飲むのを
楽しみにしている。難事件の捜査の合間を縫ってひとみをかわいが
る歳三だが、彼女のふとした言動が事件解決のヒントになったりもし
て……。多彩な作風で知られる歌野晶午が、ちょっと生意気でかわ
いらしい少女と、本格ミステリらしい難事件を巧みに描く!