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豊かな国土に豊かな歴史・文化を持つ国、イタリアを紹介する写真絵本。
建物も舟も歴史も美術もみんなぎっしりみっしりつまっている感じ。
ウォーリーを探せそうな写真の印象のせいかもしれない。
イタリアといえば温暖な気候というイメージがあったけれど、けっこう山だ。
知っていたのはベスビオ火山くらいで、アルプスのイメージはあんまりなかった。
がらがらどんっぽいヤギやハイジっぽい景色もイタリアのうち。
レガッタという祭りの説明の表現が素敵だ。
「ベネチアでは13世紀からほぼ同じように町と海との関係を祝ってきた。」
前書きも本文もイタリア大好きっぽくて、ほほえましいといえばほほえましい。
だけど、こんなにすごいくになんだよえっへん!という幼児的な愛(大好きなイタリアは善いものでなければならないという前提)にもとづいて書いているように思える。
「あるべき姿」にゆがめられている気がする。
特に気になったのは「家族」と「宗教」。
「家族を大切にするローマンカトリックの教え」は善いものとして、「人口減少」は悪いものとして、価値を含んだ言葉であらわされる。
(分布を見ると人口は国土のサイズにちょうどいいように見える。というかむしろ多い。)
前書きには「女性はたいてい子どもと老人の世話にあたっているため、家の外で仕事をする女性の比率は低い」とあるのに、人口減少のページには「多くの家庭では、親が働いているあいだ子供の面倒を見るのは祖父母の仕事だ」とある。どっちだよ。
しかしどちらも家族の結びつきって大事だよねという価値観が透けて見える。
宗教は宗教で「イタリア人のおよそ97%はカトリック」で、「この数十年で、イスラム教がカトリックに次ぐイタリア第2の宗教として台頭してきている。」たった3%のうちのいくらかが「台頭」?それとも97%のいくらかが揺らいでいる?
過剰に怯える多数派の排他主義が感じられる。
子ども向けの本としては冷静さが足りない。
それはそれとして国民性がダメ方向に日本と似ている気がしないでもない。家族・ジェンダー・政治のあり方あたり。