紙の本
「ゴッホ」という巨大な伝説に、細心かつ大胆なメスを入れた衝撃的な一冊
2008/04/16 01:34
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いえぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
絵画界の巨人ゴッホの名は、この日本においても、絵画への関心の有無に関係なく、伝説的な人物の一人として広く知られています。「ひまわり」をはじめとする彼の作品に、凄まじいほどの高値、すなわち人々の評価が下されている一方で、画家として全く成功することなく、不遇のうちに自殺してしまったという彼の生涯の悲劇性の差異なども、今に生きる人々の関心を呼び起こすものであり、彼の人生を綴った優れた伝記・評伝がいくつも残されています。
そんな状況の中記された本書は、「書簡集」という極めて信頼のおける資料に軸足を置きながらも、ゴッホの自殺という最期に、強烈な疑問をつきつけています。無数の資料を参考に、彼が「自分で付けた」とされている傷跡が、どうやら他人の手によって付けられたものらしい、ということを分析し、更に、全生涯を詳細にチェックを入れ、自殺するための動機が極めて少なく、思想的背景からも自殺という形で人生を終結させることはないだろうことを推測し、更には周辺的動機から、その犯人は極めて身近な人物(敢えてここでは名前を挙げませんが)であり、だとするならば、「自殺」しようとして戻ってきたゴッホの奇妙な行動にも辻褄が合うと述べているのです。
一般的に語られるゴッホの最期とはあまりにも異なる内容で、衝撃的でもありますが、本書で語られる推測には、論理的破綻や飛躍は見られず、それ故に説得力があります。また、巻末では、ゴッホ関係の非公開資料は、ゴッホの親族が設立した「ゴッホ財団」の手の内にあり、原則的には、親族やゆかりの者しか見ることができなくなっている現状などまで指摘されています。この事が著者の推測を確定付けるというわけではありませんが、一般論的に見て、知られたい情報を大々的に公開する一方で、知られたくない情報を徹底的に隠すのは、情報操作を行う前提としては必須のものと言えます。
「伝説の画家ゴッホ」の基礎となる伝記的な部分に、大胆なメスを入れた本書は、同時に、一次的資料をふんだんに用い、ゴッホがどんな人であったのか、周囲の人は彼にどう接してきたのかというような部分を強調することで、ゴッホの本当の意味での人間らしさ、多くの弱点を内包した優しさを活写することに成功しています。
学校の授業や一般の伝記本では物足りなくなったという方はもちろん、画家の実像を知りたいという方にもお勧めできる一冊だと言えるでしょう。
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これはこれで1つの説として充分楽しめる。
ただし、情報操作されていない伝説なんてものは、この世の何処にもないと思うけど。
つまり、この「一説」というのも、「情報操作の一種」なのであって、
ま、本当のことは当事者以外誰にもわからないってことだろうね。
だからこそ、色々な説が飛び交い、様々考えられるのが面白いってわけで。
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2008/3
画家ゴッホの死の謎について解明しようとした一冊。死に至る経緯を上げたあとに、ゴッホの人生を弟とかわした書簡をもとに解明していく。真実が何かはわからないが、ゴッホという人物のひとつの側面が明らかになる一冊。
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ゴッホは自殺ではなく他殺だった?
美術にさほど興味がない人でも知っている、画家といえばゴッホ。ゴッホといえば画家。自分で耳切るわ、ピストル自殺するわの人生で、生きているうちに売れた絵は一枚。死後は億単位でその絵が取引される。しかしゴッホは自殺ではなかった? 果たして残された遺族の戦略的な情報操作であったのか。因果な家庭環境、弟テオとの往復書簡、義妹による死後に出版された書簡集。他殺であるという結論にじりじりと至らしめる論説がスリリング! 久しぶりに面白い一冊。
年末に観たテレビ番組によって、この本の存在を知った。
http://www.bs-j.co.jp/gogh/
この番組では、ゴーギャンがゴッホの耳を切ったような描かれ方でした。
真相は神のみぞ知る。
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ゴッホが自殺した、という話を聞いたことはあった。それが真実かどうかなんて考えたこともなかった。
この本はヴィンセント(ゴッホ)の書簡と、証言でその真実を検証している。弟のテオに金を要求し、罵倒し、金を得ながら絵を描き、そして自分に絶望した。そして自殺した。…というのは本当なのか?
読んでいると、まあ、自殺じゃないんだろうな、と思う。
しかしながら、結論までがものすごく思わせぶり。ともかく長い、ように感じてしまう。うーん。
あと少し思わせぶりですね。
でもとっても興味深かった。
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ゴッホという画家について興味があったので読んでみた。ゴッホの生涯はもとより、死の直前の行動などリアルに描写されている。一応、ゴッホは自殺したということになっているが、実は殺されたのではないか?という疑問を投げかけた書。確かに、状況諸々考えると、他殺と考えたほうが自然かもしれない。。。この筆者の推理では、生涯に渡ってゴッホを支え続けた弟のテオが、ゴッホを殺したのではないか?という推理になっており、ちょっと過激。。。でも、愛しているからこそ憎い。。。みたいな複雑な心理が働いたとも考え得るので、面白い推理ではある。。。けど、感情的に受け入れ難いなぁ。
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[ 内容 ]
「さまよえる画家」、「炎の人」、ゴッホ。
さまざまな伝説をもつ彼に浮上した、新たな姿とは?
彼を支えてきた弟テオとの関係や女性問題を、唯一純正な資料『ゴッホの手紙』を基に、斬新な角度から読み解く。
そこから浮かび上がるどんでん返しの結末とは…。
この一冊で、従来のゴッホ伝説が根底から覆る。
[ 目次 ]
プロローグ 聖ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの伝説
読む前に見る読みながら見るゴッホ年表
第1章 事件―一八九〇年七月二七日
第2章 事件前三七年―画商の道断たれ 牧師の道遠く
第3章 事件前一〇年―描く男捨てる女
第4章 事件前五年―パリ 兄と弟の諍いそして印象派
第5章 事件前二年―アルルの希望と裏切り
第6章 事件前七〇日―オーヴェール=シュル=オワーズの謎
第7章 事件の検証―ゴッホ伝説の情報操作
エピローグ 美術史は推理小説だ
[ POP ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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長らく精神を病んで苦しんだのち、オーヴェル=シュル=オワーズで拳銃自殺をしたとされている画家ゴッホ。しかし彼が発砲した現場を見た者はおらず、その拳銃も見つかっていない。
「ゴッホは実は殺された」という仮説をもとに、ゴッホと弟テオの書簡を洗いなおす試み。
元々後期印象派がそれほど好きでないことに加え、とりわけゴッホの絵は例え彼の人生をそれほどよく知らずともあの筆遣いから病的なものを感じ取ってしまい、ゴッホについては通り一遍の知識しか持っていなかった。
今回この本を読み、ゴッホの破天荒ぶりがよく分かってそれは面白かった。こんな兄を持ってしまっては大変だ。
しかし著者の仮説には相当無理があるなあという印象。
著者は弟テオの手紙での冷たさや矛盾について色々と書いているが、もともと手紙なんていうものは送り先以外には読まれることを想定していないのだから、互いに既知の事実や、先方が聞きたくないであろう情報は書かない、または矛盾していても相手が聞きたいであろう言葉だけ書くのが当然な訳で。
まぁ、著者本人がエピローグに「美術史は推理小説だ」というサブタイトルに付けてしまってる通り、推理フィクションの域を出ていない。もちろん、歴史学というのは端的に言ってしまえば一次資料を丹念に読み解き組み合わせて「物語」を作る作業なので、著者がやっていることも立派な美術史学だ。
でも「物語」は他の多くの人々(特に学者)の批評と合意を経て初めて「歴史」となり得る。英語またはゴッホ研究が最も盛んな言語(オランダ語?フランス語?)で本稿を書いて、そこで認められない限り、これは学術論文ではなく娯楽作品だ。どうせならこの仮説を国際美術史界に持ち込んで批評に晒してほしかった。
なお著者は「ゴッホに関する資料はゴッホ財団が厳重に管理統制している」と陰謀説っぽい発言まで書いているが、その後2009年にはゴッホ美術館がそれまでの誤謬を大幅に改めた書簡集をちゃんと出版しWeb公開までしている。それを見た著者が今どんな仮説を持っているかは少し気になる。
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先日ゴッホとゴーギャン展に行き、その人生に心を揺さぶられたので手に取った。
読めば読むほどゴッホが嫌な人間に思え、同時に哀れに思い、テオに同情した…が最後まで読むとこれは筆者にすればヨーの思惑通りだったのだろうか。
腑に落ちる部分、落ちない部分があったが、手紙の内容が要点をまとめてサラサラと読めたのはとても良かった。
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高橋克彦の『ゴッホ殺人事件』と小林英樹の『ゴッホの遺言』のあとに読むと、ほとんどあたらしいことがないので、とばし読みしました。
予備知識なしで読めば面白かったかもしれません。