紙の本
漫画の海をたゆたいながら
2009/11/12 21:14
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジェニファー - この投稿者のレビュー一覧を見る
漫画評論は比較的よく読むのだが、たまに読んでいてやるせない気持ちになることがある。
批判的すぎるというのか、大上段に切り捨てているというのか、「文芸評論」と比較すると、どうも上から目線で批評しているパターンが多いような気がするのだ。
そんな中にあって、個人的に一番安心かつ信用して読んでいるのが、この南信長の評論だったりする。
なぜこの人の批評なら安心できるのかというと、ベタな表現だが、そこに「愛が」あるから、としか言いようがない。「好きだから紹介している」という基本スタンスが、常に明確に打ち出されているのだ。
この本では漫画界全体を俯瞰する立場から解説しているので、普段の筆致に比べるとややクールではあるが、一人ひとりの漫画家に対する姿勢は真摯かつ丁寧。そして取り上げている漫画家も、王道に限らず、幅広くなおかつジャンル問わず。
「ギャグマンガ」「ストーリーテラー」「少女マンガ」など、ジャンルごとに詳細な分布図を作成しているのだが、これがまたすごい。まさに、漫画という大海の海図のよう。
しかも、手塚治虫とか、萩尾望都とか、大島弓子とか、岡崎京子とか、確かに漫画への貢献度は高いけれど、ちょっとサブカル気取りの評論家なら誰でも取り上げるような漫画家に絞っていない。
いしいひさいちとか、西原理恵子とか、槇村さとるとか、確実に読者はいるのになぜか批評の対象にされにくかった漫画家を、丁寧に取り上げてくれているのは非常に嬉しい。
ただちょっと気になるのは、漫画家のルーツを辿るのに、かなりの確率で「インタビュー」を資料としていること。「どの漫画家の影響を受けているのか」って、確かに本人の談話以上に真実を語るものもないだろうけれども、インタビューってその場のノリとかもあるし、掲載されている雑誌のコンセプトとかもあるだろうし、あんまり鵜呑みにしすぎない方がいいような気もするのだが…。
まあ、漫画なんて絵柄だけで誰の影響を受けたかなんて断定できないし、勝手な憶測でルーツを作っちゃうよりかは真っ当な方法か。
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こういうマンガ考察系の本は、筆者の思い入れが特定ジャンルにありすぎて客観性に欠けて面白くないものが多いなか、この本は読みやすく分かりやすく、大変面白かったです。
特に、マンガの分布図。あれはみごとでした。
この方、マンガが大好きなんだろうなぁと読んでいて感じられるところも好感が持てます。
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★縦横無尽★少女マンガは読まないので知らないが、男性マンガの分析はなるほど新たに知ったことが多い。大友克洋は同時代で読んでいないがそんなに影響力があるのか。古谷実が繰り返すダメ男と救う女とタイトルの意味。誰かの孫引きだが、「デカスロン」の山田芳裕のマンガを「ぬめっとでてくる(?要確認)」と評する感覚はやられた。
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マンガの流れの俯瞰と、個々のマンガや漫画家の解説。
漠然と読んでいるマンガに対し、そのマンガが生まれるまでの歴史や、その作品や作者のどこが凄いのか、そういったことが理解できる、マンガ好きのための本。今まで読んだマンガをもう一度読み返したくなる。
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サブタイトルのオノナツメという文字に惹かれて手に取った本。
全て読みましたが、少年・青年マンガの話ばかりで、わからない作家だらけです。
著者はマンガ解説者で「基本的に自分がリアルタイムで読んできた作家のことしか書いていない」と明言してある通り、紹介本に偏りを感じましたが、それは仕方がないことなのでしょう。
表と裏の表紙は、著者の本棚の接写写真になっており、圧巻ですが、蔵書はことごとく、私が未読の本ばかりでした。
少年漫画は、特にスポーツものに全く疎いので、流れに乗れませんでしたが、おぼろげながらうっすら記憶に刻まれました。
「がんばれ元気」は「あしたのジョー」とある意味、対極にあるボクシングマンガなんだそうです。
最後の第5章が少女マンガの話だったので、ようやくここで読んだ本と作家に巡り会いました。
少女マンガは、かなり読んできていますが、特に系列など考えたことがなかったため、図示されているのが興味深く、進化系譜図をじっくり見ました。
横を年代別、縦を恋愛濃度にしており、不動の「24年組」、読んでいた「35年組」など、定義語も学びました。
単にマンガを読んでいただけの身には、読んだ本の記憶も雑多なものになっていましたが、時代の潮流として作家や作品を紹介されているため、理解がクリアになります。
鷺沢萌「川べりの道」が吉田秋生の「河よりも長くゆるやかに」の設定に酷似しているとか、山田詠美の本名は双葉だとか、成田美名子は「ウルトラセブン」のデザイン担当の成田亨の姪だとか(そういえばどちらも青森出身)、心に留め置きたい情報もいろいろとありました。
そもそも、マンガは主に子供の頃に読んでいたこともあり、今となっては作家の名前自体曖昧なものも多くなっています。
いがらしといえばみきおではなくゆみこだし、岡田あーみんとおーなり由子、松苗あけみと吉野朔美と吉村明美、清水玲子と望月玲子、川原由美子と川原泉、一条ゆかりと惣領冬美、内田春菊と桜沢エリカと岡崎京子の区別が、ついていないことに気付きました。
紹介文を読んで、懐かしくなって読み返したい作品も数多く思い出しました。
まずは、鷺沢萌「川べりの道」を読んでみようと思います。
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地元の図書館で読む。正直、期待はずれです。非常に読みやすい文章です。ただし、中身は物足りないのです。漫画に対する熱さが足りないのです。旅の友としては、悪くないです。
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非常に面白かった。「漫画の年表」といったところ。創世記の手塚治虫から現代の多くの作家に至るまでの系譜を、漫画という媒体の進化とともに解説していく
ある一人の希代の漫画かがいたとして、その漫画家の何が新しかったのか、他の漫画家たちにどんな影響を及ぼしたのか、さらにはその作家がどういう道を辿って行ったのかまで書いてあり、非常に興味深かった
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本書出版後のマンガ、作家にも注目すべきものがたくさん出てきているので、続編あるいは、増補版の出版を期待します。
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かなりの漫画好きなら、かならず面白いと思える著書。
マイナー漫画家にもスポットが当てられていたり、また違った視点での作品考察など、この一冊で漫画がより好きになるような本。
また読みたい。
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おもしろくないわけではないんだけど、なんかなあ。
興味がない漫画家のところを読んでも、やっぱり興味は湧かないし、興味がある漫画家のところは、言わずもがなのところが多い。まあ、しかたがないんだけど。
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少々曖昧で中身と乖離したタイトル。
内容はジャンル別に現代マンガ作家の進化や影響の流れ、その系譜をえがくものです。
大雑把なチャート図も用意されていてとてもわかりやすい。
大友克洋などの巨大な才能が後進にどれほどの影響を与えたかという話の流れで、実際のコマを抽出掲載しての行き過ぎたパクリ糾弾などはよく実現したなあと感心したのですが、逆ギレ的なお咎めや抗議は無かったのでしょうか。
マンガ評論家として南信長名義でずいぶん有名になられた方ですが、本名は新保信長氏。かつて西原理恵子『できるかな』の担当編集者であり、作中にもキャラ化され登場していたそうです。
ご本人は1964年生まれですが、40代以上である程度マンガに触れて育ってきたかたならどの部分もそれなりに「そうそう」と頷け、楽しめると思います。
「あの作品/作家が載ってないという苦情は一切受け付けません。載っている内容に関する苦情は受け付けます」というような記載があったのですが、これは他の著書にも記載しているそうで、ちょっといただけないなあ、と感じてしまいました。
そこはどんどん受け付けるべき、むしろ資料補完に資する有難いことだと思うのですが。
私はそれほど網羅しているほうではないと思うのですが、それでもパッとチャートを見ただけで大雑把すぎるということ以外にも疑問や反論が無数に湧いてきます。
ひとつだけ挙げれば、上條淳士と多田由美がほぼ無関係になっているのはどう考えてもおかしいでしょう。
本書からは、著者がとりわけ少年マンガにわくわくして育ったのだなあということがよく伝わってきて素敵なのですが、少女マンガの分野はやはり不得手でいらっしゃることもよく伝わります。
岡崎京子チルドレンの括り方あたりはなんだかな、という感じ。
分析は甘く「マンガ好きが『俺の好きなマンガ』を好きなように語った」という認識で読むのが吉かと思います。
20年以上昔、朝日新聞の元旦の特別版にマンガ特集がありその中で一面まるまるだったか見開きだったかでマンガ作家の樹形図が掲載されていました。膨大な情報量と納得の分析に感動した記憶があるのですが…どこかで読めないものでしょうか。