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CIAより「ポダム」のコードネームをつけられた読売新聞社主・正力松太郎が、自身の「正力マイクロ波通信網構想」という野望の実現のために「原発」を切り札に総理大臣を目指すという、荒唐無稽な実話。
それにしても、CIAに取り入るために読売新聞の5000人の記者が集めた情報をCIAに差し出すという取り決めを結んだというくだりは、実にセンセーショナルだ。
また、正力が電力業界からの支持を得るために民間主体を、しかも性急に押し通した結果、事業者の賠償責任に上限を設ける「原子力損害賠償法」という矛盾を生み出した事実は、福島原発事故後の今読むと、実に味わい深い。
孫崎享氏の「戦後史の正体」との併せ読み読みをお奨めします。
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現在のいろいろな物事がどういう経緯で成り立っているかの一つが分かる。馬鹿なことを言えば、日本という国は【核】とはあまりにも相性が悪すぎる。
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問題の所在を明らかにするために、
ことの始原に立ち返っておくことは無益ではないだろう。
まさに歴史を知る有用性は、そこにあるように思う。
日本がなぜ、50基を超える原子炉を抱えるに至ったか…
ずっと、気になる存在があった…正力松太郎だ。
本書は、正力松太郎が、なぜ、どのように、
原発推進に躍起になっていったかを、
国内外情勢を絡め、つまびらかにする。
日本が原発に手を出すところから、メディア、政財界が
奇妙に連鎖していたことが、本書によってよくわかった。
さらに、アメリカ、イギリス…等、諸国が、そうした日本の
ありようを牽制しながらも加担した経緯も明らかにされる。
そのプロセスでなおざりにされたのは、科学的な視点、
安全性の検証であり、技術的な確かさを求める姿勢だ。
新聞、テレビのメディアは、原子力の平和利用の
プロパガンダに邁進し、その旗を振ったのが正力だった。
本書では、日本の原発導入時の問題点…正力の過ち…を
次のように整理している。
・原発稼働を急ぐあまり、耐震性等に問題のあるイギリス製
動力炉に飛びついたこと。
・世界各国で原子力発電に関しどのような問題が起こっているのか、
それに対しどのような取り組みがなされているかに
あまり関心を払わなかったこと。
・正力が旗頭となっている電力業界の利益を念頭に置き、
日本の原子力行政をこの枠組みのなかで行おうとしたこと。
メディア、政界、産業界が連なりながら推進された
日本の枠組みから、立ち返り、組み直してゆくことは
たいへんな負荷がかかる…しかし、福島の現状をみるに
そこから、いささかも目をそらすことはできない…と知った。
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総理大臣になりたいという自らの権力欲のために、原子力活用を餌にアメリカ、CIAを利用しようとした穢れたマスメディアの頭目、正力松太郎の所業を暴く裏昭和史。ナベツネという権力欲に駆られた欲ボケに繋がる歴史。
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高知大学OPAC⇒ http://opac.iic.kochi-u.ac.jp/webopac/ctlsrh.do?isbn_issn=4106102498
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早稲田の社会科学部の有馬先生が米公文書を基に記した歴史。正力と原子力が結びついていることなど、詳しく知ることが出来る。一方で調査に基づくためか、推測や奇抜な仮説がなく、ストーリー性を求める人には不向きか。
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2008年刊。早稲田大学教授たる著者はCIA文書に依拠する戦後史発掘に精励。本書の内容は、讀賣新聞社主兼日本テレビ社長正力松太郎の野望と、CIAや国内政界内での虚々実々の駆け引き。讀賣新聞を利用した正力の原発平和利用キャンペーンの一方、反共・親米への心理戦に正力(特にTV網)を利用しようとした米が生々しい。元来、原発導入の旗振りが、正力の総理就任の野望と不可分で、こんな俗物丸出しの正力に辟易したため読破は苦痛だった。なおフクシマ以降なら、原発導入経緯を本書のような突き放した乾いた目線では書けなかったろう。
その意味で、フクシマ前の刊行なのが幸運とも不運とも言えそうだ。なお、湯川秀樹ノーベル賞受賞(米の口添えがあったから受賞出来た)やディズニー映画、ディズニーランドの対日心理戦活用については興味深い点。本書では全く触れられないが、ディズニーに心酔した手塚治虫が生み出したのが、原子力利用の輝かしい未来に彩られる鉄腕アトム(もっとも、こんな単純なストーリでないのは熟知しているが)というのがなんとも…。
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戦中・戦後日本の大物をCIA文書から読み解く。歴史を知ることで現代に当たり前に存在すると思われているものをより知ることができるのだな。
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正力を「昭和の傑物」と評するのは同意しかねるが、アメリカとこれだけ渡り合うような気概を持った人物というのは、実は今の時代に求められているのかも。
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唯一の被爆国である日本が、水爆実験でも被爆国となった中で、どうやって原発導入へ向かったのか。読売グループの正力松太郎とCIAの果たした役割が明らかにされている。
電力会社が原発導入と運営に主体的でありながら、事故が起きた時の保障は国が、という仕組みの起こりも触れられている。
遅かれ早かれ、この人物の強引な導入推進が無くても、別の方法で、原発が日本に導入されたことは、間違いないと思うが、もう少し導入前の検討を慎重に行うような選択に至るには、あまりにも大きな力が折り重なって働いてしまっていたのだと感じた。
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日本の原発導入の経緯が55年体制成立と米国の防共政策、讀賣のオーナーの正力松太郎の総理大臣になりたい欲望の産物だったことを示す本。安全を置き去りにして、導入してしまった原発が今日の禍根の源だったことや、経済界が電力を待望していたことなど、様々な面で歪な形で進めてしまったのだ。原発は政治のおもちゃであり、今もそうなのだ。今後のことを見通している方は誰もいないのか。。。
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正力松太郎が総理大臣になるという政治的野心を持ち、CIAと駆け引きをして、当時反米・反核の世論が強かった日本人に原子力をアピールし、対米の好感度をあげるまでのストーリーは鮮やかだった。特に原子力平和利用博覧会という手法で反米感情を好転させる手腕など。ただしかし、3.11が起きた今、てめえの政治的野心でかなり強引に原子力導入を推し進めやがって、と我々後世の人間が怒りを禁じえないのは仕方のないことである。結局正力は政治家としては大成せず、マイクロ波通信網構想は衛星技術に負けでしまった。
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かなり前に買って電子化しておいた本。
歴史の裏側の面白さと、マスメディアを握ることの強さを感じた。
正力松太郎の話は初めて読んだが、元警察官僚が弱小メディアだった読売新聞を買収して大きく成長させ、総理大臣を目指していくストーリーはすごすぎる。
戦前・戦後のドタバタ期ならではな雰囲気はあるが、CIAとのやりとりなど歴史背景が面白い。
失策も相当あるが、戦後日本を作った傑物に違いない。