紙の本
笑えない落語ミステリ、っていうのはねえ。私は落語の人情話も好きじゃないし。なにより関西落語に魅力を感じないから。これって偏見かなあ・・・
2008/12/15 20:21
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
田中啓文といえばお笑い、というか脱力系、というイメージがあるんですが、最近ではSFやJAZZの世界をテーマにした、結構まじめなミステリも書いています。でも、今回のお話は副題からもおわかりのように落語の世界が舞台で、私も前2作を読んでいますが、ミステリマニアの中でも評判のいいシリーズのようです。
で、今までの印象で言えば、ミステリとしてはしっかりしているものの、落語はともかくお笑いタレントの世界が薄っぺらく、登場人物たちの言動が大げさで、古臭い。おまけに主人公・竜二の性格や、関西弁に魅力を感じないので、もう読まなくてもいいかな、なんて思っていました。
そんな引き気味な心のありようにも拘わらず、今回読んでみようと思ったのは、やはり田中啓文に対する期待です。ただし、私は以前からですが成瀬國晴の装画に心が動かされません。要するに茶髪や金髪、あるいはモヒカンといった目立ちたがりの風情が嫌いなんです。装丁 原条令子デザイン室、監修 月亭八天あたりは、可もなく不可もなく。
以下、各話の初出と簡単な内容紹介。
◆動物園(「小説すばる」2007年1月号):竜二が「動物園」を語って聞かせる小学生たちの反応は・・・
◆日和ちがい(「落語ワンダーランド登竜門」ぴあ2007年4月刊行):犬猿の仲といってもいい二人の落語家、その喧嘩原因は・・・
◆あくびの稽古(「小説すばる」2007年4月号):むずかしいネタの発表が迫っているのに、師匠は竜二にオーディション参加を命じて・・・
◆蛸芝居(「小説すばる」2007年6月号):竜二の進む道は、落語家?それともタレント?
◆浮かれの屑選り(「小説すばる」2007年8月号):地方巡業を命じられた竜二が出かけた先は・・・
◆佐々木裁き(「小説すばる」2007年10月号):竜二の周りで頻繁に起きる超常現象・・・
◆はてなの茶碗(「小説すばる」2008年2月号):星の家柿鐘の襲名騒ぎに巻き込まれた竜二は・・・
◆くやみ(「小説すばる」2008年4月号):危篤の梅寿師匠の病床で、兄弟子たちは誰が梅寿の名を継ぐのかということばかり気にして・・・
以上です。今回の主な登場人物は三人に絞られます。副題からいけば竜二の師匠にあたる笑酔亭梅寿が探偵ということになるのでしょうが、どうも梅寿が謎解きをしている印象がありません。どちらかというと笑酔亭梅駆こと星祭竜二の悩みのほうが前面に出ているし、都筑道夫の『なめくじ長屋』のような本格ミステリというよりは青春小説というほうが正しい気がします。
ただし、二人はシリーズ・キャラクター。今回初めて登場して、主人公たちを喰ってしまった感があるのが五十代の美人国際派女優、吉原あかりです。美人で国際派、というとモデルとしてイメージできる女優はいませんが、私の中では森光子ですね。可愛らしさと存在感が。落語をやってしまうあたりもいいですし、芸能界に大混乱を引き起こしても動じないところも。
吉原あかり比べると、梅駆、梅寿もふくめて影が薄いです。無論、バタ臭さはプンプンしています。梅寿のエラソーな部分は健在で、以前と同じく不快感を抱かせますが、今回気になったのは竜二の気持ち。落語家に成り立てのときなら分からないではありません。自分がこの世界で生きていくかどうか迷うのも理解できました。
でも、この世界に入って二年が過ぎ、しかも今までの二巻のなかで落語家としてやっていくことを決めているはず。ところがです、今までの話はなかったかのような迷走をします。ようするに落語なんて好きじゃない、なんて。襲名騒ぎにしても、相手の家を思うなんていう気配が微塵もありません。
なに、今までのお話では表面は今時の若者でも、実際は古いものや人情を理解する人間だったはず。それが単なる駄々っ子。それは梅寿も同じ。一冊ののなかだけではなく、各巻を通じても時間は経っているのだから、トータルで人間を管理して欲しい気がします。いい年をした大人が人生からなにも学ばない、っていうのは不思議というより不自然。そういう意味では竜二の逡巡は自然か・・・
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第3弾。
後回しにしてて、やっと読めた〜!
面白かったです。
まだまだ続きそうで安心しました。
竜二、アツイ!
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出版社 / 著者からの内容紹介
世紀の襲名対決! 青春落語ミステリー第3弾
東京vs大阪、世紀の大名跡を賭けた襲名対決に、師匠の梅寿が危篤で更なる跡継ぎ争いまで勃発!? 騒動に巻き込まれながらも落語の腕を上げていくツッパリ竜二から、ますます目が離せない!
内容(「BOOK」データベースより)
大名跡を賭けた襲名対決勃発!?ツッパリ竜二の、青春落語ミステリー第三弾。
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落語ミステリ第三弾。謎解き要素はやや薄くなっているものの、物語の面白さとしては抜群ですね。個性的なキャラたちの活躍もさながら、それぞれの落語の使われ方が見事。当然、落語の知識も深まります。ますます今後が楽しみ。
お気に入りは「浮かれの屑選り」。なんてまあ粋なことをする方々なんでしょうねえ(笑)。でもこれ、当然受け止めるほうの技量も必要なわけで。竜二の才能が凄いんだよねえ。
「くやみ」はまさかまさかの展開でしたが。……やっぱりそうなったかい。しかしあの言葉は案外と本音だったかもですね。
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笑酔亭梅寿謎解噺の第3弾です。
今回は謎解きは少なかったですが、落語の解説が多かったので話の内容をどうかけているのかが良く分かりました。
最後の「くやみ」どうなるの?と冷や冷や。
落語の内容と上手くからみあって一件落着??
出てくる登場人物の名前が笑ってしまいます。
良くここまで出てくるなぁって感じです
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(収録作品)動物園/日和ちがい/あくびの稽古/蛸芝居/浮かれの屑選り/佐々木裁き/はてなの茶碗/くやみ
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キャラがたってきて、テンポもぐんぐんとよくなり楽しく読めるシリーズ物。問題は、シリーズ物として面白過ぎて、ハナシがすすまないことかもしれない。
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相変わらずむちゃくちゃな梅寿師匠ですが、まさしく、相変わらずです。
あのジジイ(尊敬を込めて)には、上限というものがないのでしょうか…?
ということで、その無茶っぷりにも拍車がかかっていると思っている間に、ついに危篤に。
最初から伏線はあったので気にはしていたんですが、その以外のドタバタに気を取られてすっかり忘れていて、「あああ」と思いました。やられた…!
これ自体がもう、人情話のような気がします。
そして竜二は相変わらずいろんなことにフラフラとしています。
決めるところはバシッと決めるのに。
竜二の気持ちがつまらないと、話もつまらないと感じるけど、彼が面白いと思い始めると、やおら面白くなってくる。
そこまで同調するのもどうなのか(笑)
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いい話だ。
ミステリ色は薄くなっているけど、ニヤッとさせたり、ホロッとさせたり、これこそ落語ですな。
「はてなの茶碗」は傑作です。
登場人物みんなアホだ。
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副題に「謎解噺」とあるほどにはミステリー色はありませんが
落語の楽しさがあります。
暴力的な部分がちょっと多すぎます。
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人気が定着したシリーズ3作目。この巻では、梅寿始めとする一門と、漫才を優先強化する「松茸芸能」との確執がヒートアップ。落語を興行から締め出そうとする「松茸芸能」に反発して、梅寿は独立し一門のための事務所「プラム・スター」を設立するが、仕事は激減、一同売れない悲哀を感じる毎日。そこに新たに登場するのが、国際的な大女優にして、一大名跡「星が家柿鐘」の娘・吉原あかり。何と師匠の梅寿とは赤ん坊のころからの付き合いということで、この名跡の襲名問題に梅寿が首を突っ込んで大騒ぎに、、、、 これまでどおり、落語のお題に絡めたストーリー展開。この巻では、「動物園」、「日和ちがい」、「あくびの稽古」、 「蛸芝居」、 「浮かれの屑選り」、 「佐々木裁き」、 「はてなの茶碗」、 「くやみ」が取り上げられている。 これでようやく最初に読んだ「ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺4」に話がつながり、大満足。
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笑酔亭梅寿の内弟子、梅駆(ばいく)が、師匠梅寿に代わって謎解きをする第三弾。落語家として成長していくサマを描く。今回は新たな出演者が、話を引っ掻き回す。
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前作よりもだいぶハチャメチャな感じ戻ってきて面白くなった感じ。梅駆はどんな噺家になるのか、次回も楽しみ。
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やんちゃが過ぎて修行のため落語家に預けられた竜二の成長譚その3。 1、2作目は話が落語ともよく絡んで面白かったのだけど、今回は「屑選り」の始めくらいで我慢ができなくなって、後はぱらぱら読みです。 私には竜二がやたらと殴られるのが暴力シーンに見えてしまったようです。ごめんなさい。 けど何日かして一生懸命読んでみたら、一話ずつオチがついてて何とか明るく終わってるので★も2まで上げました。
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落語ミステリというよりも、笑酔亭梅駆こと星祭竜二の内弟子修行奮闘記。
とてもゆっくりではあるが、確実に芸の道を歩みだした竜二。竜二に気付かれぬように学ばせている師匠・梅寿。面白さに笑いながらも、知らず知らずのうちに応援していた。
本作は爆笑[笑酔亭梅寿謎解噺シリーズ]の第3弾。8つの連作短編集。
謎解噺と銘打っているが、お世辞にもうまいといえる謎解きはない。駄洒落クラスのサゲがちらほら。
ただし、師匠・梅寿が竜二に与える無茶苦茶な仕事が、実は彼に身をもって学んで欲しいことだったとわかるくだりには、良質な日常ミステリの趣を感じた。
前2作では、ハチャメチャすぎる師匠・梅寿に、本当に竜二を育てる気があるのか、と一抹の不安を覚えた。しかし、この3作目を読んで、育てたいという気持ちは本物だとわかり、コミカル小説なのになぜか胸に熱いものがこみ上げてきた。
本作で一番のミステリは、竜二の演じた「はてなの茶碗」だ。どんな出来だったのだろうか?
竜二が茫然自失の状態で演じたにもかかわらず、眼鏡屋乱視師匠に「さすが、笑酔亭の弟子だよ」と言わせている。聴けるものなら聴いてみたい。