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みんなのレビュー9件

みんなの評価3.7

評価内訳

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紙の本

文章や構成は至極まともです。扱うテーマも女性差別、貧困、恋愛、家族、民族運動と多岐にわたりますが文学の王道を行くものです。ところがです、舞台と時代を少し変えただけでここまで話は面白くなります。考えることを強います、このままでいいのか、って。これぞ文学、です。

2008/10/23 23:01

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

早川のプラチナ・ファンタジイ、作品の出来はどれもいいのですが、英国作家の著作が多いせいか、文章・構成が凝っていて一筋縄ではいかないものばかりです。ジェフ・ライマン、全く知らない作家ですし、装画:丹地陽子、Book Design=岩郷重力+WONDER WORKZ。というコンビのカバーも今までの叢書のイメージを引き摺っています。ですから、正直、こんなに面白い話だとは思いませんでした。

プラチナ・ファンタジイのなかでも屈指の作品であるとともに、21世紀初頭を代表するSFと評価されることは間違いない一冊です。今の段階で言うのは乱暴ですが、ミルキィ・イソベ『ブックデザイン ミルキィ流』と並んで、今年度のベスト本の一つである、と断言してしまいましょう。

全体の構成は、タイトルなしの全26章の本文と、訳者の一人である古沢 嘉通の訳者あとがき、からなります。舞台となるのは2020年、中国、チベット、カザフスタンに国境を接するカルジスタン国幸福省イェシボズケント郡キズルダー村です。地域を聞いただけで、なにかきな臭い、戦火の臭いがしてきそうな感じで、小難しい政治ものと勘違いされそうですが、全くちがいます。

無論、辺境の地とはいえ、2020年ですから単にのどかな山中のお話、ではありません。商業主義の波は近くの町に訪れていますし、ネットワーク網も整備し始めている。でも、都会とはまだ時間差があります。それが決して不自然にならない絶妙の舞台設定です。凡百のSFはここでミスってリアリティのないものに堕す傾向がありますが、ライマンはそれを見事にクリアします。

そうした地域に押し寄せる近代化というか現代化の波、商業主義とネットワーク、そして女性の自立を見事なまでに融合させ取り込んでいます。その中心人物がチュン・メイ、主人公です。彼女は中国系女性ですが、その性ゆえでしょう、この地域での知名度はあっても、中国系だからと重要な地位にいるわけではありません。

彼女の仕事は、村の女性のために、町にでかけてドレスや化粧品を調達し収入を得る“ファッション・エキスパート”です。年齢ははっきり書かれていませんが、息子のチュン・ルン中尉が20代であることから考えれば、30代後半から40代の女性ということになります。夫はジョー、若いときは将来を嘱望される快漢でしたが今は無気力で無思慮な酔っぱらいに過ぎません。

このお話は、彼女が奇禍にあったことから得た能力を、今までの自分が行なってきた仕事に活かし、地域、貧困、嫉妬、無理解な夫、閉鎖的な社会、男性優位、といった壁にぶつかりながら、それを乗り越え成功を勝ち得るというシンデレラストーリーです。ただし、甘い展開は少しもありません。

彼女が越えなければならないハードルがいかに高く厳しいものであるか、予断を許さない展開と緊張感に満ちたリアルさは、まさに息をつかせないと言っていいでしょう。訳文もそれに相応しく、軽さは微塵もありませんが、それでいて耽美さを売りものにしたベタベタしたものでもない、バランスのとれたものです。

内容紹介は以下に掲げるカバー折り返しの言葉で十分でしょう。

未知のテクノロジーがもたらす衝撃を、
ひとりの女性の人生に托して描く大作

2020年、中国、チベット、カザフスタンに国境を接する
山岳国家カルジスタンのキズルダー村では、先祖伝来
の棚田を耕し、昔から変わらぬ生活を続ける人々が暮
らしていた。中国系女性チュン・メイは、そんな村の女
性のために、町にでかけてドレスや化粧品を調達し収
入を得る“ファッション・エキスパート”だった。
ある日、キズルダー村で、新システム〈エア〉のテスト
運用が行なわれることになった。〈エア〉は脳内にネッ
ト環境を構築し、個々人の脳から直接アクセスを可能
にする新しいネットワーク・システムで、一年後の全世
界一斉導入が予定されていた。
だが、テストの最中に思わぬ悲劇が起きる。メイの隣
人タンおばあさんが、システムの誤動作が原因で事故
死してしまったのだ。テスト中、メイは〈エア〉内でタン
おばあさんと交感、彼女の全人生を体験する。それ以降、
おばあさんの意識はメイの脳内に住みついてしまうが、
まるでその代償であるかのように、メイは偶然〈エア〉
にアクセス可能なアドレスを取得する。それをきっかけ
にメイの人生は急転回を見せはじめる。〈エア〉がメイに、
そして人類にもたらすものとは…。

貧困、女性差別、中国の覇権主義、恋愛、家族、ネットなど実に多くの要素が融合した壮大なビルドゥングス・ロマン。SF、とかファンタジイといったジャンル分けは、こういう小説を前にすれば意味を持ちません。少なくとも傑作であるということ、文句無しに面白いということは確かです。最後になりますが、他の登場人物を簡単に書いておきます。

チュン・ルン:メイの息子で、20代だろう優秀で人望の厚い軍人。位は中尉で、首都バルシャンで暮らす。カナダ人の女性と結婚したが、メイにそれを報せてはいない。

ジョー:メイの夫で、本来は農民だが、農業に興味はない。技術はないが大工仕事の出稼ぎで金を得ようと夢見ている。ある意味、現実を直視することを避けている中年。

シャオ:ジョーの弟。父親とともに、ジョーの家で暮らす。ジョーとあまり年の差はない。仕事をしている描写はあまりないが、人間的には実に魅力的で、大言壮語などとは無縁の存在。毎日を大切にしながら地道に暮らす。

ワン・ジュメイ:メイの弟で、言動からは30代半ばだろうか。結婚し母親の面倒をみている。考え方は古く、姉の言動を理解しようとはしない。ジョーの耕地や家を貰えると勝手に考えている。

シェン:村のただ一人の教師で、老人ゆえに、新しい流れを頑なに否定する。とくにネットへの無理解からくるメイに対する敵視は、老害としか言いようがない。

タン:メイの隣人で90歳になる老婆、エアの実験中に死亡。タンばばさま、とメイは呼ぶが、その死後はメイの中に潜り込み彼女を支配しようとする。

ケン・クウェイ:タンばばさまの孫息子で、祖母と妻ツーイをエアの実験で亡くす。メイより年下。

クワン:メイの友人で、資産家の妻。進歩的な考え方を身につけた美女で、メイをいろいろ助けるが、単に優しい奥様というだけではない。

ウィン:クワンの夫。村で唯一のテレビの持ち主で、それを村人に開放している。話の中で影は薄い。

スンニ:メイを色々な意味で敵視する女性。メイの“ファッション・エキスパート”の地位と、農地を奪おうと画策する。

ファイサル・ハシム:スンニの夫で金貸し。ジョーの耕地と家を欲しがっていて、様々な罠をしかける。また、ウィンに対抗心を燃やすが、妻同様人間的魅力は皆無。

オズ:政府の人間で、カルジスタン人。エア導入に当たって自国の受け入れ態勢を調査する若者で、メイを陰日なたになって助ける。

セゼン:ハティージャ家の20歳前だろう娘で、日本でいうところのヤンキー。勿論、それ相応の根性の持ち主で、味方にすれば心強いタイプ。

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紙の本

SFだけど、小説の面白さは別にある。

2009/07/23 00:19

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 中国とチベット、カザフスタンに接する中央アジアの国家カルジスタン。
簡単にいうと、ど田舎の国です。
 そこに、エアというインターネットのシステムが先行試験的にやってきます。
このシステムの起動実験の最中、中国系のごく普通のおばさんメイの脳内に一人の老女の意識が
入り込んでしまいます。
 メイの運命は、そしてエアがもたらすものとは??。

 というプロットです。

 これ、一応SFなんですが、小説の面白さのキーはSFとは別のところにあります。
この小説の面白さは、この主人公のメイという愛すべき普通のおばさん、
強情っぱりで、おせっかい焼きで、わがままで、涙もろくて、やさしくて、という
この女性の奮闘ぶりに、あります。
 はっきり言ってあんまりSF度は高くない。
 エアというシステムも、インターフェイスを使わないウェラブルというより、
埋め込み式のシステムで、取り分け新しくないし、
HTMLとかメールや、すべてがごっちゃになって扱われています。
(まぁ、このシステムだと色々できるという設定なんでしょう)
で、このネットで起業したりと、
架空の世界カルジスタンで、今と変わらない感じの生活で、
このメイの泣き笑い、この架空の街というより、村の生活を読んでいくお話しです。
小説のポイントは、ここにあります。
 ただ、SFとは別のところにキーがあるといっても、
ネタバレでかけないんだけど、ラストには、どわーっと
SFとしての広がりを見せる仕掛けはありますが、、。それは読んでのお楽しみ。

 著者のジェフ・ライマンは、マンデーンSF(Mundane science fiction)
の提唱者だそうで、所謂、SF的ガジェット、宇宙船、時間旅行、宇宙人etcを
使わない当たり前のSF、生活に密着にしたSFを提唱しているそうです。
 これは、勿論、SFファンの間で、賛否両論、(否のほうが多い)
あるそうですが、
 本書を読む限り、こりゃ、SFファンの気持ちをというか、
センスオブワンダーを(SF的わくわく感ってセンスオブワンダーだけじゃないんですが)
 この人は、あんまり判っていないです、、。
(わかっていないというより、興味がないみたいに思われる)
とはいえ、SFの名作も実は、SF的マインド、アイデアの勝利というより、
小説としての面白さで読ませているものが、多いのですが、、、。

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2008/09/15 17:56

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2009/01/25 08:40

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2009/04/12 09:47

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2014/11/05 20:05

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