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松本清張『小説日本芸譚』(新潮文庫)を読了なう。運慶から止利仏師まで10人の「人間」を描いた短編集。1957年『芸術新潮』連載。利休→織部→遠州と続く、互いの評価や感情の重なりは面白いけど、松本清張の連載対処法(苦悩)なのか。止利仏師は「書けないこと」で書いてるしw http://twitter.com/#!/strsy/status/11765639014
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清張が描きたいのは時の権力者と芸術家、また芸術家の師弟・ライバル関係など、その人をとりまくどのような関係性が彼の表現を生み出したかという因縁の部分。したがって主人公の最後の独白はえてして「これでよかったのか、はたして」という具合の逡巡となる。創作というのは常にそれまでの歴史やとりまく環境の上に立つものでもあるし、また同時にあくまでも個人の内面に直結するものでもある。そのあたりの事情を考えさせる小説だ。
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短編小説集。
松本清張作品の中で、私のイチオシ!
この短さでよくここまで深い話をまとめたな、と感銘を受けた。引き込まれる。
一つ一つとても読み応えがある。
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松本清張の作とは思えない、こんなのも描くのだと感じ入る。清張初期の作とはいえ、「点と線」発表と同じくする時期なのだ。とにかく綿密な調査が作品に重みを添える。2015.8.18
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(01)
歴史に登場する10人の芸術家たち(*02)にそれぞれスポットを当て、彼らの苦渋や葛藤とともに、その作家性や作品の特質を想像の中に描いている。といっても、古代から近世の人物であり、それぞれ残された記録も多いわけではない。そして、その芸術的な行為は、現代の芸術家の生業とも異なる文脈に属している。とりわけ権力との距離や体制、そして芸術を成立させる技術や情報に現代との断絶がある。
しかし、著者は、そこを飛躍し、彼らを生き生きと描いており、その生命は、矛盾はしているが、どうも彼らの現代性にあるのかのようでもある。
(02)
立体としては運慶や止利仏師が、平面としては雪舟、岩佐又兵衛、光悦、写楽が、工芸や数寄としては千利休、古田織部、小堀遠州が、そして舞踊とし世阿弥が取り上げられており、ひとつの書物に収められた布陣としてもバランスが取れている。もちろん彼らにはそれぞれライバルもいて、パトロンもいる。芸に対する構えには、それほど濃淡はないが、先天的な境遇は様々で、そこに歴史的環境を読むのも楽しい。
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松本清張というと推理小説のイメージが強いが、歴史小説も書いていたんですね。
これは芸術家列伝。
利休あたりは興味深く読めた。
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アーティスト快慶を嫉妬するプロデューサー運慶、足利義嗣が自刃したのちに足利義持に放逐された世阿弥、下品な秀吉を軽蔑していた千利休、絵は下手だったが中国で構図の妙を手に入れた雪舟、商人の茶道を否定し武家の茶道をつくりあげた古田織部、師匠らしい師匠につかなかったため画流ルーツが漠としている岩佐又兵衛、茶碗の目利きしか家康に能を見出してもらえず武士としての手柄も稼がせてもらえなかった小堀遠州、俵屋宗達をうまく操作し商売人としての技量のほうこそ注目される本阿弥光悦、個性の強すぎる画のため売れずに屈折した東洲斎写楽、テーマが古すぎて上手にまとめることができなかった止利仏師のこと、松本清張の博学がふんだんに活かされまるで小説版ギャラリーフェイクでとても楽しめました
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思い描いていたような松本清張作品とは違た。
歴史上の人物を身近に感じさせてくれ、
自分の中の世界を広げてくれた作品。
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運慶、雪舟、織部など日本史に残る芸術家の心情を描いていて特に新たな世代や価値観における葛藤は興味深い。
それにしても最後の仏師の話は資料が無いと作家の妄想的私小説みたいになっていて当時の編集者がよくOKしたと思う。内容の理解が足りないのかもしれないけどこの連作で1番楽しみにしていたところだったので残念。
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「抽象には何かがあるかも知れないが、それを感じ取るまでには時間と忍耐を要する。写実は瞬時の躊躇なく直截に訴える。それが見事な出来であればあるほど、素朴な感嘆を与える。作家の精神が、民衆の距離のない感動に融け合うのだ。もともと信仰の本質は感動ではないか。」(『運慶』より)