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最後のこの部分がとても心をほっとさせますね。
「だがな、俺の青は、一人や二人ではない。大勢が互いに力を出し合って
日本の進歩を支えてるんだ。こんなに愉快なことはないさ」
「叔父上が育てた青たちは、いわば群青ですね」
「青の群れで群青か。うまいことを言うな」
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江戸末期、勝海舟らに先駆けて国防のために日本海軍の基礎を築いた矢田堀景蔵の話。縁あって植松三十里の作品はすべて読んでいるが、一番読み応えのあった作品だった。
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植松三十里氏の歴史小説「群青」を読了。物語の主人公は幕末時から明治までの時代に生きた矢田堀景蔵を主人公に描かれている。慶喜や勝海舟は日本史を勉強していなくとも耳にして知っているが矢田堀景蔵という名前は正直言って一度も聞いたことがなかった。
幕末にむかっている時期徳川幕府も清国が英国に侵略されているような情報を得て、幕府のようやく国防を考え、その命をうけてはじめての海軍を作る事をリードする役割を受けた一人が矢田堀だった。勝海舟もその仲間だったがこの物語で明らかにされる勝海舟はその段階では航海術に必要な数学体得について行けない落ちこぼれとして描かれている。もちろんただの落ちこぼれではなく後には交渉にすぐれた策士として落ちこぼれから復活はするのだが、渡米した際は勝は実は寝込んでいて全く役に立っていなかったなど新事実を知る事もこの本を読んだ副産物だ。
矢田堀景蔵は勝海舟より遥かに優秀で、幕末の大政奉還前の薩長や朝廷などとの戦いが起ころうとしたときには薩長などの戦力に比べ圧倒的な海軍力を誇る海軍を作り上げる力量を示していた。だがその海軍をその先の時代を見すえて優秀な部下や戦艦を無駄にする事を避け、幕府にたいして戦いを挑んできた薩長らの勢力の敵海軍との戦いを避ける事を選んだ。
そして江戸無血開城もあり明治の時代が始まるが、その時彼の部下榎本武揚がどうしても徳川の幕府を新政府に渡す事を拒み江戸からはなれ函館に向かい函館戦争を起こし五稜郭に立てこもる暴挙にでて結局は降伏するが、皮肉な事にこの事によって矢田堀は新政府の中で「逃げた海軍総裁」として陰口をたたかれ実際色々な部署を転々とたらいまわされる晩冷遇されるのだが子供が小さかったため色々なストレスに耐え59歳まで働いて、やっと退官したとおもったら脳卒中でなくなってしまう。
こうして書いてくると残念な人の物語のように聞こえてしまうがもちろんそうではない。明治政府と戦いながら後に政府の中で活躍した榎本武揚しかり、数多くの優秀な人事を育てたすな場らしい人物であるというのが本当のお話でこういう縁の下の力持ちとなった人物もいてその後の日本が変わって行く強固な基礎ができたのだろう。明治というのはいろいろな凄い人がいた時代だが、明治で活躍した人間をそだてていた江戸時代の教育も実はたいしたものだという事に思い至った読書だった。
そんな戦いを避けようとしたがために歴史には名前を残す事が出来なかったが、その事を誇りに思い人を育てる事に邁進した凄い男のお話を読むBGMに選んだのがBarry Harrisの"Barry Harris in Spain". ちょっと丸くなったBarry Harrisがいい味だしてます。
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日本を守るために海軍を興した矢田堀景蔵。
決して戦争を仕掛けるための道具ではなく、あくまで国を守るために備えておくものだ。
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矢田堀景蔵という人物を本書で初めて知った。勝海舟との対比で、極めて不器用な人物として描かれており、サラリーマンである我が身を振り返り、共感して胸が苦しくなる場面も多い。著者の小説は、敗者の心情にきめ細やかに寄り添ったものが多いが、本書も幕府側から見た幕末史を描いた小説として秀逸。
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とても読み応えのある作品でした。
明治維新は戦いの話が多いですが 幕府の中の一人の武士が 抗いながらも大きな渦にのみ込まれていく。 その中でも自分の生き方を探し続けた人だったのかな と興味深く引き込まれました
歴史に残らなかった事は、何となく分かりましたが そんな事で?と思うと共に そんな人々の言葉が一番怖いとも思いました
自分の生き方を自分で考えて学ぶ そんな学生時代を送りなさいと 過去の自分に言いたいです
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幕末に幕府軍の海軍総裁になった矢田堀 景蔵の物語。幕臣(軍人)の目を通した幕末の有様が新鮮で面白かった。2009年度新田次郎文学賞。
幕末を舞台した小説は、坂本龍馬、勝海舟、土方歳三など、よく知られている人物を主人公としたものしか読んでいなかったので新鮮でした。いい小説でした。立場が変われば、歴史的事実の見方も変わりますね。