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紙の本
髭ばっかりっ!!!なミステリ。
2010/10/17 15:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
お名前だけは存じ上げていたけれどハジメマシテの作家さん。本書の初版は2008年となっているが、早川書房からの初出は1959年――半世紀以上も前のことだ。
故に、当然のことながら登場するアイテムは古臭い。登場する煙草は「新生」だし、37万円という貯蓄額に対して登場人物が放つ言葉は「ずいぶん貯めこんでやがるな」。
しかし…アイテムは古臭くでもストーリー自体に古来臭さは感じられない。都筑道夫の『退職刑事1』と同じく痴情のもつれは登場するが、そこにいやな湿度は感じられない。
昭和の半ば以前に刊行された小説に登場する不倫や男女間のいざこざは、男女が対等でないことが多い。好き勝手をする男に待つ女。男の我儘とそれに耐える女。浮気は男の甲斐性と言われていた…らしい。
が、そういう設定のストーリーを今読むと、どうも古臭く感じてしまう。「耐えるのはいつも女」という考え方が、平成に育ったわたしにはぴんと来ないのだ。
『浪速恋しぐれ』という歌で、「あんた遊びなはれ 酒も飲みなはれ/あんたが日本一の落語家になるためやったらうちはどんな苦労にも耐えてみせます」という妻の台詞があるのだが、現代っ子のわたしはこの台詞を見て笑わずにはいられない。おそらく現代っ子の男性で「芸のためなら女房も泣かす」なんていうひともいないと思う。
本書でも昭和のかほりをひきずる男女のいざこざが登場する。しかし不思議なことに、ストーリーに嫌な湿っぽさがない。
それは、全体に散りばめられたユーモアのなせる技だろう。本書はタイトルにあるとおり「ひげのある男たち」が登場するお話だ。容疑者も「ひげのある男」なら捜査する側も「ひげのある男」。右も左も
「ひげのある男」だらけなのだ。そしてこのことは著者も地の文で述べている。
若くて美しい女性の、不可解な死に端を発したこの事件は、一人のひげのある男によって惹き起こされ、一人のひげのある男によって結末を告げる。ひげにまつわる話、いや、これはひげにまつわられた話である。
このユーモラスなテイストがすごく好みだ。それでいて「きちんとミステリ」している。
もっと著者の作品を読んでみたい!!のだが…創元推理文庫から2008年に出た本書とそれに続くシリーズ全3巻はすべて、既に絶版となっている模様。第2弾は手に入ったのだけれど、第3弾の『仲のいい死体』は見つからず。どこかの出版社がまた復刊してくれることを切に願う。
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