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ザ・ロード みんなのレビュー

2007年度ピューリッツアー賞 受賞作品

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みんなのレビュー73件

みんなの評価4.1

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

8人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/10/20 16:17

尋常でない緊迫ある運びに感動しながらも、近未来の書き方に強い反感も持ち、不思議で複雑な読書体験をさせられた。だが、マッカーシーの象徴的なアメリカの書き方には敬意を抱く。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『ザ・ロード』は恐ろしく神経を張り詰めさせられる小説だ。こと最後の数十ページの緊迫感はすごい。排気量の大きなエンジンを背中にしょわされ、否応なく走らされるような感じがあった。
 草木の緑や生き物が消滅した終末的状況のなか、シェルターに潜んで破滅の瞬間をしのいだとおぼしきごく僅かな人びとが、食べ物を渉猟している。なかには人倫にもとる行為に走る者もいる様子だ。
 空も大地も灰色。厚い雲に覆われた空は明るさを増しても青味を取り戻すことはなく、大地は焼灼され尽した後のようで、至るところ灰に覆われている。人体では耐えられない冷気がやがて大地を支配しようとしている。
 舞台となっているのは北米大陸だ。暖を求め、食べ物を求め、幼い男の子と父親が海岸を目指して歩いて行く。見つけた日用品や食べ物などを入れてガラガラと動かしているのはショッピングカートで、このカートが、文明が到達したところの暗示のようにも取れ、気になる。
 父がカートを押す図は、米国でも一部に人気があった「しとしとぴっちゃん」の『子連れ狼』に類似していると取れる旨、訳者あとがきにある。
 この父子がようやく手に入れる少量の食べ物で飢えをしのぎ、周辺からかき集めた木の枝で焚き火をして眠り、言葉少なに語り合い、ごくまれに人に出会っていく。何度も何度も、もう駄目だろう、そろそろ限界だろうという局面が訪れる。それでも歩いて行く――これは、そのように辛い旅の話だ。

「カート」と南への道行――私にはまずこの2つが、象徴的な表現で読者を誘い込むマッカーシーが仕掛けたものなのだろうと取れた。
「カート」はもともと「荷馬車」を指す語だ。それはアメリカという国の幕開けをどうしても連想させる。家族が荷馬車に最低限の日用品を積んで西へ西へと進んでいった開拓時代を……。
 人びとは荷馬車の荷を下ろして眠るための小屋を建て、荒れた土地にくわを入れ、自分たちの土地での定住を試みた。時に原住民の反発を買いながら、荒くれ者の襲撃を受けながら……。そういう人びとが次から次へと旅をして、さらに西へと移動していったフロンティア、つまり開拓前線はやがて消滅した。海に到達したからだ。
『ザ・ロード』を読んでいると、移民たちがそのようにして東海岸から西海岸へと広げていったじゅうたんが、今度は北から南へと巻き取られてアメリカがしまわれていくのかというイメージが広がる。
 マッカーシーという人がアメリカをどう書こうとしてきたのかを考えるとき、これはそう無益な解釈でもなかろう。作品世界を一貫する確かなものの実在が、このような象徴性で感じられるからだ。

 ただ、「アメリカをどう書くか」で近未来が選ばれるとき、「これはすばらしい作品、すごい傑作」と手放しで賛美できない要素もあった。
 終末的状況は、読み手がいかようにも取れるように明確には説明されていない。だから、核戦争があったのか、環境破壊がし尽くされたあとなのか、巨大な隕石が衝突したのか、あるいは核とは別のレーザービームのような武器で北米だけパズルのピースのように抜き出されて焼かれてしまったのか、どう考えようと勝手だ。勝手なのだが、いずれの原因であっても「このように穏やかに哲学的問答ができる状態が終末?」と突っ込みを入れたくなる。
 少なくとも核兵器は現実世界において、これまで2回も使われている。北米のかなりの部分を壊滅する規模のものが使われた設定ならば、シェルターを出たあとに人びとはとてもこう何年も生き残っていけないだろう。環境破壊が行き着いて空と大地がこうなるとしたならば、人が歩いて旅をしていくほど体力を維持できる空気は残っちゃいないよと言いたくもなる。
 SFジャンルではなし、その点、設定条件に対して矛盾なきよう整合性を持たせる必要はなかろう。文学的テーマが全うされるために状況が下位に置かれているということなのかもしれないが、感情として「むっ」とわき上がるものがあった。
 地獄絵図を生々しく描くべきだとは言わないが、これはやはり終末「的」状況を設定したものであり、その意味ではファンタジックな条件に依存して、それを借りて「父から子へ」伝わるものやアメリカへの気持ちなどを書いている小説なのである。地獄のような場所で生きざるを得なかった人、生きている人を思えばリアリティに乏しい。
 今、「父から子へ」伝わるものと書いたが、あるいは、「父性にアメリカは救えないか」というテーゼにも取れる。途中、神の化身を彷彿とさせる老いた男性も出てくるので、キリスト教的な香りもある。そう考えると余計、何かを描き切るために道具立てとされてしまう終末や破滅の設定が何やら情けなく思えてきてしまう。

「むっ」とわき上がった感情の正体を見定めようと、ようやくこうして分析できるようになった。しかし、読んでいる最中は、激しい緊迫感に襲われながらも、むっという感情も動いていたので、「感動しながら気分が害される」という、複雑で心かき乱される経験をした。不思議な読書体験だった。
 そしてこの本では、いま一つ不思議な感覚を持たせられた。
 原文を生かした訳ということで、読点がほとんどない。また、話し言葉がかぎカッコに収められていないため、地の文との区別がつきにくくなっている。したがって、どれが描写で、どこからが話し言葉なのかを読み分けていくのに時間がかかる。この読み解きもあり、内容や字面は読みやすいものであっても、とても読み飛ばしては読めない文章、じっくり対峙させられる文章になっている。
 かみしめるように読んでいくと、終りに向かっていく世界そのものと話をする父子が、表記の表現通り、渾然一体となっていってしまう。小説というもののほとんどすべてが人間を描くものであろうが、そしてこの小説でも人間が描かれているには違いないのだが、いつしか父と子が終末の光景のなかに同化していってしまう。端的に言ってしまえば、自然と人間が共生する東洋的自然観の表れということになる。
 このような人と周囲を区別しない書き方が気になって、その意図を確かめたくて『血と暴力の国』を読んでみたが、そこでもやはり、人間を特別な存在として崇めるわけでも揶揄するわけでもなく、つかみどころのない全体の一部として捉えているかのような書き方が印象的であった。

「共生」するものは「共死」してしまうのであろう。しかし、蘇られるものであるならば、それもまた一緒なのだ。
 ひどい状況のなかで、いたいけな男の子が何回もむごい目に遭う内容は辛いものだった。最後もまた痛ましいものだ。この文明は確かに、終末に向かって進んでいるような気がする。私たちは、失ってしまえば二度と復元できないものをみすみす失いながら、歴史のコマを進めているかのようだ。
 だが、マッカーシーはすべてを「無」に帰すことはしていない。「原初」のとき、人類はいかなる安全にも、いかなる安心にも支えられてはいなかった。あるいは、そのことをほのめかしたのか、結びの段落はさまざまな解釈を誘う書き方をしている。今ならば、まだ私たちが触れ合える美しいものを、そこに書き残しながら……。

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低い評価の役に立ったレビュー

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/07/20 07:04

ピュリッツァー賞受賞の全米ベストセラー小説とはいえ、日本人には少し遠い話だと思う

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 近未来のアメリカ。父と幼い息子は南へと徒歩で向かっていた。周囲の建物は激しい熱でやわらかくなった後でまた固まり、歪んだ姿で立ち残っている。動物の姿はもはやなく、灰が積もった街々で缶詰の食料を探しながら、父子は道を歩き続ける。

 しかとは書かれていないものの、おそらく核爆弾によって崩壊したのであろうアメリカ大陸を南下する二人を、淡々と描写し続ける小説です。現代版「渚にて」ともいえるこの物語の中には、人類に対する希望はありませんが、それでも父親の息子への深い愛情と、息子を通して未来に託す思いが描かれていて、最後に胸が詰まる思いがしました。

 とはいうものの、そのエンディングへとたどり着くまでの読書の道のりは、私にとって決して平たんではありませんでした。
 ひとつには訳文に不思議なある特徴があるためです。
 この訳者は、読点を打たないのです。読点とは「、」のことであり、大辞泉の定義を引けば「文の意味の切れ目を示したり、文を読みやすくしたりするために、文中に施す記号」のこと。ですから読点が必要な場所で打たれないと、文の意味の切れ目が示されず、文が読みにくくなります。
 コーマック・マッカーシーの英語原文が必要なコンマを省いていて、それを日本語文でも忠実に踏襲しようとしたのかと思って原文にあたってみましたが、どうもそういうことではないようです。

 もうひとつ読書の道のりを険しく感じさせたのは、なぜ物語の中の世界が引き起こされたのかについての説明がないことです。それはおそらく核戦争的なものによるのだろうと想像させる描写はあるのですが、それならばいっそう、広島・長崎の被爆体験を持つ日本人にとってこのマッカーシーの描写は、やはり生ぬるいと言わざるをえません。核戦争後数年もたった時期に徒歩で南下する父子という設定には無理があり、どうしてもアメリカ人の無邪気さを感じないではいられませんでした。

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2010/06/27 21:31

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2010/07/26 18:56

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2010/10/30 09:26

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2010/11/16 09:50

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2010/12/07 18:05

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2011/01/02 23:37

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2011/01/25 01:32

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2011/10/13 20:59

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2011/04/08 00:50

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2011/04/19 23:32

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2011/05/15 16:56

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2008/09/03 08:47

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2011/08/26 17:26

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