紙の本
理想や理念だけでは政策は実現できない、闘わなければならない
2008/07/10 18:25
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふるふる - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の基本的な考えや小泉内閣時代の話が書かれている。大臣時代はホントに大変だったようだ。テレビ番組で「政治家は肉食動物だ」と発言していた。お疲れさまでした。
気になったのは、プライマリーバランス(国の基礎的収支 もし借金が無かったと仮定したときの収支)についての記述だ。
「プライマリーバランスの赤字が解消されて、ゼロか黒字になれば、累積赤字は少しずつ下がっていく」とある。(本書の第2刷による)このような記述をネットのサイトなどでも見かけることがあるが、これはほぼ誤りだ。
プライマリーバランスが均衡(ゼロとなる)した時、現実には国だけで700兆円の国債残高がある。その元利払いは年間で10兆円程度か。その10兆円分は新規国債を発行しなければならない。従ってプライマリーバランスが均衡したとき、毎年10兆円国債残高が増加し続ける。また、プライマリーバランスが10兆円の黒字になったとき、国債残高の増加が止まる。国債残高が減少するには10兆円以上の大幅な黒字が必要なのだ。
では、なぜこのような記述をしたのか想像してみる。
・単純なうっかりミス。
・ブイマリーバランスを目指せば国家財政は何とかなるという楽観論を広め るための意図的なミスリード。
・どうせ国債はデフォルト(債務不履行 借金の帳消し)になるのだから、プ ライマリーバランスの均衡だけで十分。
どうだろうか。
2007年の参議院の選挙で民主党が単独過半数を獲得したというのは、単純ミスだろう。第一党になったが正解。(これも本書第二刷による)
紙の本
政策プロモーターによる“自賛”
2008/06/26 20:11
10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
竹中氏が、本書において自賛する“改革”である不良債権処理と郵政民営化によって、国民生活がよくなったことはほとんどなかった、と私は考えている。
竹中氏主導による異常に厳格な不良債権処理によっては、本来であるならば生き残ることが可能であったと考えられる銀行や企業までをも破綻に追い込んだ。 現実に破綻するまでには至らなかったとしても、当時例えば、一部の大手鉄鋼会社の株式時価総額は、保有する高炉の実体価値の数パーセントにまで落ち込んだ。当時の企業で“形式的一時的”には債務超過状態にあったものはかなりの数になったはずである。 木村某なる“評論家”が「30社問題」などと吠えていた頃である。そもそも、厳格な時価主義は、異常なデフレ期にまで硬直的に適用するべきものではないだろう。企業の持つ無形的なものを含む総資産を、適正に“評価”することなど簡単なものとは思えない。冷静に洞察すれば当然のことではないだろうか。
50円割れさえしていた企業の株価もその後は当時の10倍以上20倍近くにもなっているものが多い。 そして、改革主義者たちは、規制緩和をとなえ、市場主義をとなえながら、金融機関に対して、(彼らが非難してきた)裁量的行政よりもはるかに悪質度が高いと思える強権的行政権の行使を主張した。 “Too big to fail”という考え方をとらない、というような竹中発言など、金融行政の最高責任者としては無責任きわまるものであった(この発言について本人は否定しているようだが、ニューズウィーク誌は、発言内容は真実だと反論している。高杉良『日本再生の条件』p.53 )。
竹中氏に賞賛を与えた米国(そもそも、ダブルスタンダードを常とする米国の“要人”が賞賛するのは、自国の利益に適う行為だけである。少なくとも私の認識ではそうである)であるが、今回のサブプライム問題に対する対応などを見ると、金融機関への公的資金投入だの株式の空売規制などを検討し始めている。 「緊急は法を知らず」というのは真理であろう。 具体の“状況”も認識せずに“学習”した抽象的“知識”をひたすらに押し通すような連中を“田舎の優等生”と言う。 この方がなさるという「本当に役に立つ、リアリスティックな公共政策論の講義」(本書「はじめに」)など、私は聞きたくもない。
故西村正雄氏(最後の興銀頭取)は『金融財政事情』2006年8月7日号で次のように述べられている。
<小泉政治の批判者ですら、経済・金融の実態に不案内な政治家(野党を含む)や政治評論家のなかには「景気回復、株価上昇、不良債権処理完了」を評価する論者が多い>が、<「景気回復は構造改革とは無関係」であり「改革なくして成長なし」は誤りである>
このことは、不良債権が相当程度整理されたにもかかわらず、民間への銀行貸出が顕著に増えたわけではなく、相変わらず、民間金融機関も低利の国債を購入し続けていることで明らかではないだろうか。
また、野口旭氏は、『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』(東洋経済、2006年3月刊)で次のように述べる。このとおりではないだろうか。
<この景気回復は、外需および内需という総需要の拡大の結果である。その需要拡大に対しては、「構造改革」や「不良債権処理」はほとんど何の役割も果たしていない。構造改革は、現実にはまだ何も行われていない。そもそもそれは、需要の拡大ではなく、供給能力の拡大を目的とするものである。また、銀行貸出は増えていないから、不良債権の減少を景気回復の原因と考えることはできない。結局、日本経済が回復したのは単純に需要が伸びたからと考えるしかないのである(p.75)。>
郵政民営化についての欺瞞性については、有田哲文他『ゆうちょ銀行 民営郵政の罪と罰』(東洋経済新報社)、野口 悠紀雄著『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社)等で述べられているとおりだと思う。2011年の基礎的財政収支均衡もほぼ不可能になったかと思われ、相変わらず借換国債も大量に発行し続けなければならない状況にあって、「資金の流れを官から民へ」などというスローガンは一体何だったのだろうか。
クルーグマンは、『経済政策を売り歩く人々』(日本経済新聞社)の中で、次のように述べている(p.15)。
<学者は、その気になれば、政策プロモーター(Policy entrepreneur)を演じることもできよう。 とりわけ、その見返りとして得る報酬と要人としての待遇は大きなものであろう。>
まさに竹中氏について書かれたような感じさえする。 そして、クルーグマンは、続いて述べる。
<しかし、結局のところ、こうした学者は自らを不利な立場におくことになる。なぜなら彼らは、自分の隠れた学者的倫理観(obscure professorly ethics)に常に気兼ねしていなければならないからである。この限界をたやすく超えられる学者もいる。しかし、そうしているうちに彼らは、学者であることを止めてしまう。>
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小泉政権をバックアップしていた竹中先生の「経済学」本ということで手にしてみました。
経済学に興味がありながらも、数式に苦手意識があるので、本書でもやはり数式は出てくるのだけど、ばっさり切り捨てて読むことにしました。
経済学というよりは、サブタイトルにある、未来をつくる公共政策論入門、の書という印象の方が強いですが、学問と実際の経済&政治活動のかかわりについて、なんとなくつかむことができたように思います。
小泉さん&ご自身への業績への賞賛姿勢はまぁ仕方ないとして、それを割り引いても、役立つ書物でした。
「公共政策論」が身近なものだと思えたのが、一番の収穫かもしれません。
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<郵政民営化>
・トップの強力なリーダーシップ
・既得権者との利害調整を行いつつ行政を進める官僚に、制度の抜本的改革を期待するのはできない
・閣僚は英語でminister。「小さな役割をする人」
<改革実現のヒント>
・逆転の発想
・トップ直轄方式
・会議を「決める場」にする
・いつでも辞める覚悟を持つ
・批判のパターンを知る(コントラリアン的批判・・・速ければ拙速・遅ければ遅すぎ、「永遠の真理」・・・庶民の視点に立とう、ラベル貼り・・・市場原理主義者)
「夢見ながら耕す人になれ」
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超秀逸。
理論だけで役に立たないといわれがちな経済学を、実務、特に政策として理論的背景をもとに、政策立案当時の状況を交えながら解説していく本。
世の経済学の理論書では何を言ってるかさっぱりわからないことでも、この本を読めばだいぶわかると思います。それだけわかりやすく、かつ現実に即した解説をしています。
・経済学学んだけど、あんなのいみねぇよ!
・経済学部じゃないし、理解したくもありません!
・アンチ小泉、アンチ竹中、アンチ構造改革
そんな人は是非さらっとでもいいんで目を通してください。
ちょっと経済学を学んでみたいなって思ってる人も理論書を読む前に目を通すと、なんとなく視野が広がるんじゃないかと思います。
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竹中平蔵による今後のあるべき経済について述べた本。現在、格差拡大の現況として批判されている氏の考え方について理解できる本。
基本的に財政健全化、小さな政府を目指し、民間主導の経済活性化が日本経済の復活を果たすとする考え方で、そのとおりだと思うが、現在問題になっている格差問題、弱者救済について触れられていないのでは、広範な支持を得られない気がする。
戦略は細部に宿る。ざっくりした内容だけでなく、具体的な条文等についても、しっかり対応する必要がある。
逆転の発想が大事。たとえば、「あいつを辞めさせろ」という声に対しては、逆に重大任務を与えるなど。
重大なことはトップ直轄を行う。
会議は反対派をねじ伏せ、決める場だ。
反対者には3つのパターンがある。
1 常に逆の事を言う。
2 常に正当な事を言う。
3 ラベルをはる。
公開情報を沢山見よ。
瞬時の判断が大切。常にシュミレートせよ。
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小泉内閣における構造改革において中心となった竹中平蔵氏による経済学と実際の政策との関係を実際の経験にも即して解説したものです。慶応大学に戻った竹中さんが、「経済学は政策にどの程度役立つのか」という自ら立てた問いに対して、「経済学は役に立つ」ただし「実際の政策との間には埋めるべき"隙間"がある」という観点でまとめられています。
竹中さんは経歴からいって、正に経済学と政策の間にどのような"隙間"があって、それを埋めるために経済理論をどのように適用できる(してきた)のかを解説するにうってつけの人だというのは、誰もが同意できるのではないでしょうか。本質的に難しい内容の本だと思いますが、不思議に分かったような気にさせてくれます。確か高橋洋一さんの本で書かれていたと思うのですが、竹中さんは説明する能力がすごいということでしたが、確かにそうかもしれないなあと同意できます。
各章のタイトルは、「XXと闘う」という形式になっており、XXには、例えば"金融危機"、"役人"、"抵抗勢力"、"既得権益"、"権力"などが並んでいます。本書の中で何度も出てきた「戦略は細部に宿る」は、経験を通して得た竹中さんの信念のようですが、そういった具体的な"細部"の話も面白いです。
マクロ経済学の道具についての知識が少しあって、ここ10年ほどの日本の政治経済で何が起こったのかに興味がある人には、面白く読める本かと思います。日本では経済政策が内容の是非ではなく政局によって使われてしまうということ、またメディアのニュースソースが官僚に抑えられている(かつ安易なラベリングに走りがちである)ことを今後の不安材料に挙げていますが、経済政策は、きちんとした理論と倫理に基づいて、高いリーダシップに基づいて実行されてほしいですね。
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分りやすく経済学を書いてるなって感じです。
う~ん経済学は少なめな感じも否めないですが。
でも
興味を持ってもらいやすいと思います。
そんな本だと思う。
経済学だけじゃダメ。
でも経済学がなきゃダメ。
加えて
精神力もなきゃダメ。
バランスが良いかな。
ときに経済学は残酷な気もするけど。
でも、楽に感じることもある。
そして
僕達は
夢を持って耕す人にならんきゃならない。
これが重要だと思う。
平和や環境と言った。
耳障りの良いことばかり
言って
耕せてなかったりする人。
逆もまた然り。
バランス良く。
それを解決できる方法を
考え続け
信念を曲げつに
やると決めたことをやる。
だって。
この世はコインだ。
裏があれば表もあるようにね。
見方一つでなんだって変わる。
唯一の解決方法は
なるべく
ニュートラルでいること。
これが難しいんだけどね。
そして
コストパフォーマンスが良い方を
選ぶのが良いって。
俺は考えている。
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竹中さんの学者大臣としての実務経験を書いてる。経済学の知識をいかに現実の政策に活かすか。小泉政権ってのがどうゆうものだったのか、その一面を知る上でも助かる。
前半ではポツポツ経済学の知識が数式で出てくるんだけど、これは縦書きの本では読みにくいな。
バブル後日本の政権がバランスシートの調整が進まないままに総需要管理政策を取ったことを指摘。あとは「骨太方針」ってのが何だったかとか、郵政民営化やらを実施するにあたってどのような障害があったのかとか、財政健全化や道州制導入なんかに伴うだろう困難についても触れている。
字も大きくて読みやすいしわかりやすい本。
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『竹中平蔵 闘う経済学 未来をつくる公共政策論入門』は、そんな話題の郵政民営化をやった竹中さんの著作です。何と闘ったかというと、ケインズ的財政政策と闘う、増税論と闘う、金融危機と闘う、失業と闘う、役人と闘う、既得権と闘う、抵抗勢力と戦う、権力と闘うということで各議論について経済学的な議論を踏まえ、それでいて政治プロセスや行政、法律などについても議論を進展させています。
公共政策論というのは、まさに経済学的な考えをベースとしつつも、現実の政策を考える上では、政治プロセス、行政論、法律論などに精通していないといけないということです。どんな有用な経済政策でも民主主義国家である以上、適切な政治プロセスにのっとって進められる必要があります。この点を理解していないエコノミストは全く的をはずした批判を繰り返してしまうのだということです。
各論点はこれまでも繰り返し議論されてきていることで、特段目新しい話はありません。しかし、経済学的な議論を念頭におきつつ、非常に分かりやすい説明がなされています。なぜケインズ政策では失われた10年に有効でなかったのか。財政規律はどうすれば回復できるのか。不良債権を強制的にでも終わらせることがなぜ重要なのか。地方分権はなぜ必要なのか。郵政民営化はなぜ必要で、なぜ官僚や政治家が反対するのか。公共工事の削減や郵政民営化など大きな変化を成し遂げるにはなぜ既存のプロセスの延長でやっていてはいけないのか。経済財政諮問会議はどういう役割を果たしたのか、等など。
彼の説明は本当に明瞭で、しっかりした経済理解に基づいているのでしっくりきます。また彼の物事の進め方、言い換えればプロジェクトマネジメントの仕方も非常に参考になります。学者でこういう仕事をできる人って本当に限られていると思います。
あと最後の章で書いているのは、いわゆる批判の3パターンで、とにかく反対のことを言う批判、レッテルを貼る批判(市場原理主義者とかが好例)、永遠の真理を言う批判、というものを挙げています。これは我々も政治家の言動をチェックする上で理解しておきたい話。
これらは本当に国民全てがちゃんと認識すべき問題で、新自由主義だろうが社会主義だろうが、一通り理解しておくべき議論でしょう。民主党の政治家も、レッテルを貼る批判はもう良いので、こういう本をちゃんと読んでから議論して欲しい。あとこれから政策を進めていく上で、経済財政諮問会議的な組織の使い方とか総理のトップダウンで物事を決めていく上で非常に参考になる部分があると思うので、これもぜひ活用して欲しいと思います。
国家戦略局も良いんですが、菅さんが竹中さんみたいな戦略的な仕事が本当にできるか、正直かなり不安です。でもまあとりあえず頑張って欲しいです。
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格差拡大の戦犯扱いをされている構造改革を主導した竹中平蔵氏の著作。
政策の立案・決定と経済学の隙間を埋める現実的な公共政策論が分かりやすく解説されている。
この本を読んだ理由
格差を拡大したという小泉・竹中路線の政策を詳しく知りたかった。
政策を立案・決定の政府内での流れがとても分かりやすい。
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竹中平蔵氏の著作
需要と供給のメカニズムやマクロ、ミクロの基礎を理解している人なら面白いと感じられる一作
経済学の知識がない人にはきついかも
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面白い。
竹中さんの主張は分かりやすい。
市場に任せるところは市場に任せ、規制が必要なところは規制する。
小泉首相とのかかわりやエピソードなども面白かった。
「したたかに批判三原則を活用しながら勝ち上がっていくことも時には必要である」
これは納得できない。結局ミイラ取りがミイラになる典型ではないだろうか?
結局自分の責任は自分で抱えなければいけないし、
誰かの責任もその誰か自身が責任を負うべきなのだ。
だから、俺はしたたかに多少の手段を選ばずに権力を取ってでしか
世の中をよくすることが出来ないのであれば、それを選ぶことをしない。
自分の信念を曲げてまで誰かを助けたいとは思わない。
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竹中平蔵の振り返りの書。
行った事の良し悪しは別として、政策立案過程が分かりやすく書かれているので、大学生の入門に良いかもしれない。
著者も言っているように、政策立案プロセスってのは生き物のように変化しており、特に民主党政権になった現在、また大きく変わっているだろうからこの辺の言及は、さすが当事者だけあって的を得ている。
自分も大臣になってみたいなぁ。
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自らが関わった小泉内閣時代の経済・財政・金融政策について、経済学理論を交えながら振り返っている。『改革の哲学と戦略』(加藤寛・竹中平蔵)と同様に、政策デザインとその背後にあった考え方の記録として興味深い。