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1996年のアトランタオリンピック観戦記。当初は『オリンピア』の一巻として刊行される予定だったもののようです。沢木耕太郎にしては珍しい、徹底した批判的文章が印象的。観戦をしながら旅をしているような感じはもちろん健在。懐かしい選手がたくさん登場します。
2002年のワールドカップ観戦記『杯:緑の海へ』と対を成す作品です。
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カール・ルイス・・・懐かしい名前。。
そうか五輪の行き過ぎた商業主義はアトランタからだったのか。。
マイケル・ジョンソンの走りに全く魅力を感じない・・・
人間が判定するような競技は五輪に向かない・・・・
批判的な目線だが同意出来ることも多い。
しかし体操日本の今日の大復活までは著者も見通せなかったようだが。
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1984年のロサンゼルス大会から商業至上主義に走ったオリンピックは、
近代オリンピック百周年の年に開催されたアトランタで加速度を増した。
大会期間中を通じ、会場に足を運び、競技を観戦し、アトランタの街を
歩いた著者の、時に温かく、時に辛辣な筆が冴える。
アトランタ大会では男子バスケット・ボールにアメリカのプロリーグ・
NBAの選手が「ドリーム・チーム」として出場している。これを捉え、
著者は疑問を呈する。
「──金も人気も手に入れた。あとは名誉としてのオリンピックの金メダル
がほしい。
しかし、そのような選手のために、オリンピックを開放する意味がどこに
あるのだろう。」
この文章を読んで、日本で開催された長野冬季オリンピックを思い出
した。男子アイスホッケーに北米プロリーグ・NHLの選手が、やはり
各国代表として出場した。
NBAに倣ったのだろう。そして、そこにはNHLのタイトルを塗り替え
「ライブ・レジェンド」と呼ばれたカナダ人選手に現役最後の思い出に
金メダルを…との思惑が働いたのではなかったか。
NHL選手を主体にチームを組み、大会前から優勝争いの筆頭に挙げられた
カナダとアメリカだったが、両国とも決勝に進めなかった。のみならず、
チームUSAは敗戦の憂さ晴らしか、選手村の部屋を破壊するとのおまけが
ついた。
結局はNHL選手と国内リーグの選手をうまく組み合わせたチェコ、ロシア、
フィンランドが金・銀・銅だったな。
本書は単なる「オリンピック観戦記」に留まらない。サラマンチ前IOC会長
の下、「近代オリンピックの父クーベルタン」の理想からは遠く離れて行く
オリンピックへの警告書だ。