紙の本
日本旅館のあるべき姿とは? 成功例/失敗例をふんだんに盛り込み、主張が明確である。
2008/11/30 21:35
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本式旅館の在り方に大きな変化があり、経営や接客の考え方も変わってきている。本書はそのレポートである。桐山は『ホテル戦争』を著わして、近年わが国で生じている超高級ホテル、分けても外資系ホテル間の熾烈な競争をレポートした。
バブル期に団体客を当て込んで施設の整備に巨額の投資をしたが、時代の流れは団体客ではなかった。投資をするように助言したのが、旅行会社である。旅行会社も必死である。なにしろ口銭商売だから、数を売らなくてはならない。
しかし、世間では団体旅行はもう流行らない。個人旅行の時代になった。投資が回収できず、破産したところはコンサルタントや売却先を見つけて何とか再生計画を立案でき、その路線に進むところはまだ良いが、そういう環境に恵まれなかったところは廃業である。
本書では、どのような方針で再生させたところがどうなったかをレポートしている。まさに旅館業を営む人々の悪戦苦闘ぶりを描いている。桐山は最後にこれらのレポートをまとめて、次のように結論付けている。
日本旅館の魅力は人であり、清潔、安全、静寂であるという。この要素はホテルにも共通している。これらの要素が揃えば、基本的には充分であるという。それに他の要素が加われば、一層魅力のある旅館が出来上がるというが、まさにその通りであると思う。
桐山のホームグラウンドであるホテルとの違いも強調する。旅館はホテルの路線を進み始めて崩壊してしまったというのだ。大勢の旅行客を集めて、宿泊させ、飲食させて組織的に対応し、接客も分業して職員の訓練を施すのがホテルで、旅館はもっと個別の対応が必要なのであると。女将の人柄や旅館の宿屋としての個性などがなければならないという。
われわれに馴染みの例も数多く出てくるので、読者の興味をそそるはずである。私も年齢のせいか、ホテルよりは旅館の畳の方が寛げる。自分に合った旅館を探すのも旅行計画立案の楽しみの一つなのかもしれない。
ただし、苦言を一つ言いたい。第1章、第2章に日本の旅館が国際的なホテルに評価されているとか、共通点を見出している章を立てているが、この第1、2章はまったく不要である。かえって、読者の頭を混乱させるだけだ。最近上陸した国際的なホテル・チェーンの和風テイストのことや、旅館の国際化の方向性などは、また書を改めて紹介すればよいことで、本書の趣旨とはまったく無関係であるからだ。
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[ 内容 ]
大赤字旅館が華麗なる復活を遂げた!
その再生のカギとは!?
国内旅館の99%が赤字といわれる。
過渡期を迎えた旅館業界にも再編の波が押し寄せ、外資も参入を始めた。
長年国内旅館の取材を続けてきた著者が、地方旅館の現状と再生の成功例を裏話も交え赤裸々に綴る渾身のルポ。
[ 目次 ]
はじめに 日本旅館「再生」の処方箋
第1章 世界に評価される「日本旅館」
第2章 日本旅館は何故、魅力を失ったか―「様式」と「サービス」の固定化
第3章 「旅館再生」に立ち上がった宿の主人たち
第4章 「地域再生」にかけた同志
第5章 星野リゾートの「日本旅館」再生法
第6章 全国の星野リゾート旅館再生現場を歩く―日本旅館は、どうすれば再生するか
第7章 再生への苦悩と理想の姿
まとめ 日本旅館の魅力は「人」にあり
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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旅館:ホスピタリティ
ホテル:サービス
旅館のホテル化
「清潔」「静寂」「安全・安心」の3本柱が不可欠
それらが整ったうえで更なるステップへ(顧客満足を高めていく仕組み、しかけづくり)
本書には出てきませんが、この3点でスーパーホテルが思い浮かびました。
この3点を守る一方でCS向上に飽くなき努力をし、さらにコスト削減で低価格路線も継続してる点で、スーパーホテルはやっぱり凄い。
正直なところ、学生の自分にはあまり縁のない旅館。
ホテルの日本バージョンというぐらいにしか考えたことが
なかったが、全然違いましたね(笑)
本書の中でも星野リゾートの再生ノウハウが興味深い。
星野家の代々受け継がれる開拓者のDNAというのも
かっこいいですねえ(笑)
勉強になりました
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日本旅館の変質、その中で行われてきた経営者や星野リゾートによる革新的な旅館再生、旅館の魅力の本質に焦点を当てた一冊。
学生の自分には正直、旅館なんて無縁といっても過言じゃないほど。1泊だけでウン万円する、せいぜい家族旅行ぐらいでしか縁はないであろう旅館のお話。
旅館ってただ単にホテルの日本バージョンとしか考えたことなかったけど、全然実態は違うみたい(笑)
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温泉地行くと再び読みたくなるノンフィクション作品。いつ読んだかは忘れました。この本により、観光地に行く際、様々なビジネス的な観点から宿泊先を見れるので面白く感じます。また赤字転落した旅館がどのように再生したかが紹介されているので、ピンチをどう対処したかが少し参考になります。
この書籍では、星野リゾートをはじめとする各地の数多の旅館再生を紹介しつつ、著者が考える再生のキーワードである①外国人視点の宿、②主のリーダーシップがある宿、③「旅館」という伝統サービスに加え、近代的コスト意識を導入し実践するノウハウがある宿という点、④エコ旅館的な魅力を持つ宿、⑤安全安心清潔の三要素を重視する宿…等にも触れています。
現在の再生手法を筆者は、旅行会社、銀行に勧められるがままにバブル時代に多額の設備投資をし、「ダメなホテル」化した日本旅館を、「いいホテル」に進化される努力をしてきたと一定の評価をしています。
ですが、日本旅館を進化させていくためには、ホスピタリティを持って小規模な状態で家庭的なサービスを持って、信頼を積み重ね、「宿屋」に回帰していくしかないとしています。
あくまで日本旅館の魅力は「人」にあるというのが著者の結論です。