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妖しく怪奇なお話。
ああ、怖い。でもおもしろい。
こういう心理が人間なのかも知れない、とか思ってしまった本。
手首はなんだかゾクゾクと背筋が震えた。
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2008.09.20
私がなるほどと思ったのは「十万年」という話に出てくる、宇宙人についての話。
(前略)
特撮に出てくる宇宙人も、SFの宇宙人も、形は変だけどそこは一緒なんだよと、先輩はなぜか悔しそうに言った。
「まあ、言葉は通じないとしても、それから姿形は人間と違うとしてもさ、例えば空気の振動を音として認識して、光の反射を視覚として捉えるという基本的な構造は、みな一緒じゃないかよ。空気の振動を視覚的に認識し、光の反射を聴覚で捉える、それだけの違いで世界は裏返っちまうぜ」
あと、それに続くこの話も。
「こうやって、可能性を広げていく、それが想像力だと俺は思う。だから、神秘と合理は相反するものじゃない。合理の先に神秘はある。非合理が神秘だと思うのは、そりゃ間違いだろうし、合理は神秘を否定するという、そういう短絡も、アホだと思うぞ」
科学ってのは実証主義だろ、と先輩は言う。
「でもな、人間には実証出来ないものもある。いや、実証出来ないものの方が多いかもしれない。例えば、見届けるのに千年の時間がかかるような実験があったとして、その実験結果は予測することしか出来ない。実証は無理だ」
(中略)
「十万年に一回起きる自然現象は、観測できないぜ。きっちり十万年目に、正確に、必ず同じように起きる現象であっても、そりゃ人類にとっては今のところたった一回二回のことなんだし、偶然ということになるだろう。(以下略)」
確かになあ。
自分が「世界」として認識しているものは、実は非常にあやふやな基盤の上に成り立っているのだとこの本でも京極氏は突き付けてきます。
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現代の怪談風短編集。「手首を拾う」というタイトルの素敵さにまずやられる。気が触れた一人称で物語を作るのが相変わらず上手だ。「成人」は曖昧に下衆で、気持ち悪くていい。ファン以外の人が楽しめる作品ではないような気はするけれど。
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怪談集。京極作品はみっしりと詰まったイメージがありますが、ここで収録されている作品にはあちらこちらに隙間があるんです。その隙間が怖い。隙間があるため何かが潜む。隙間があるため何かが歪む。それが怖い。
しかし怪談の振りをして、一歩下がって怪談とは何かを見据えているような気配もあり、それがまた京極作品らしさを醸し出しています。
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怖いというよりは、背筋をぞわっとする薄気味悪さ。けれど、日常の何処かに潜んでいるような気にもさせられます。個人的に好きなのは「手首を拾う」この結びはぞっとするのに切なくなりました。
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■0888.
<読破期間>
H20/9/29~H20/10/1
<本の内容>
八つの幽談を描いた、京極夏彦の別天地。
怪談専門誌『幽』の連載を単行本化。
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けだるいホラー。
身体の芯から薄ら寒くなる、ホラーではなく
腕に1本厭な毛が生えたのを見つけた、みたいな
微妙に厭な感じのホラー。
読んでるとホラーなのに眠くなる!
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京極さんの作品は京極堂シリーズから入ったから
最後に謎が全部見事に明かされるスタイルに慣れてて、
こういう投げっぱなしの話は…
嫌いじゃないけどモヤモヤしてしょうがない。
気味悪さ満載。
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ホラー短編集というより、厭な短編集って感じですかね。ぞっとする怖さはないけど、なんとなくじんわり気持ち悪いというような。でも読んでてちょっと眠くなるのは何故^^; 「下の人」を読んでて「でかい面、結構柔らかそう」という描写に、マツコ・〇ラックスを想像したのは私だけではないと信じたい(笑)
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頽廃的、と一言で言うとまた違うんですけど、かと言って他に適切な表現が浮かばない…。この世界に酔うのも良いかなと思います。
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『手首を拾う』
私は汽船に乗って海辺の宿を目指していた。7年前に訪れた
その宿の庭で、とても美しい形の女の手を拾った事が忘れられず…。
○蘇鉄の庭と月明かり、そこにうっとりと手を抱く男。静寂に包まれた
幻想的なお話。かなり好き(^_^)。
『ともだち』
有給を取って小学校時代まで過ごした街を訪れた私。
当てもなく色のない街を彷徨ううち、死んだはずの友人・森田君が
現れるようになり…。
○死んだはずの人が見える…というのは怖い筈だけど、主人公は
淡々としていて、というよりもむしろ冷淡とも思えるほど森田君を
無視していて、そこが「死んだらどうしようもない」という寂しさを
漂わせている気がする。
『下の人』
ある日ベッドの下を覗くと---。私とベッドの下の人との奇妙な生活。
○ベッドの下が、いつからか異世界ってすごく厭だなー。もし自分だったら
家に帰りたくない…。主人公が驚愕しながらもベッドの下の人を観察し、
時には積極的に反応を窺ってみたりする様子が生々しい。
『成人』
四つのエピソードが不気味な存在を浮かび上がらせる―。
「まだいるんだから」「成れねぇ方優先かよ」「成りきらねぇくせに―」
あの家には、いったい何が居たのか?何が起こっていたのか。
知るほどに得体の知れないモノへ引き寄せられていく。
○この本の中で一番ゾクッときた話。はっきりとわからない部分が
多いにもかかわらず、匂いや感触・暗がりで隠れてしまっている部分、
さらにはあの家の人々が秘密にしているだろう事が想像力をかきたてる。
『にげよう』
小学6年生の時、学校帰りに翠色の変なものに追いかけられて、
おばあちゃんの家に飛び込んだ思い出がある。
しかし大人になって思い返すと、その思い出がおかしい事に気がつき―。
○昔の思い出を友達と話していると、自分がちょっと思い違いを
していたり、すっかり忘れてしまっているということはままあるけれど、
この物語のように詳細を覚えていながらそのような事実が
在りそうもない…といった事になったらやはり気持ちが悪いだろう。
主人公は再びよくわからない思い出の中へ紛れ込んでいって
しまうのだが、その後はいったいどうなったのだろう…。
「十万年」
「僕は何を見て、何を信じているのだろう。世界は激しく歪んでいて、
その歪みに気付いていないのは僕だけかもしれない。他人の目で
世界を観てみたい―。」そんな考えを持つ僕は高校生の時、先輩から
「十万年に一度の決まり」について聞く。大学生になると、小学校の頃
同じクラスだった幽霊が見えると言っていた女の子と再会する。
ある夜、彼女の観ていた世界を一瞬垣間見る。
その光景は意外なものだった―。
○例えばパラドックスが見える人がいたとして、その人にはこの世界が
いったいどんな風に見えているのだろうと思う事がある。それは怖い
光景かもしれないし、美しい光景かもしれない。もし「十万年」が
訪れて、そんな世界を観る事があ��なら、この物語のようにちょっと
風変わりな風景が良いかもしれない。
『知らないこと』
隣人の奇行から、狂気が忍び寄る―。私は大学生で、家族は母親と
ニートの兄。ごく普通の生活を送っている筈だった。しかし隣人の奇行を
観察する兄の話を聞いているうち、自分を取り巻くものがあやふやに
なっていく。私が見て見ぬふりをしていた事とは何だったか?
また一方で知っていた事とは?
○「知らない」という怖さを見なかった事にしたという後ろめたさを
暴かれて、たぶんこの「大学生の私」も壊れてしまったんじゃないかと
思う。「兄」だと思っていたものも隣人の存在に飲み込まれていくと
同時に「私」と一体になっていく。厭ーな感じ。
『こわいもの』
仄暗い座敷の真ん中に私は座っている。そして考えている。
「こわい。怖いものとは何だろう。」真実の恐怖。恐怖に似たものでなく、
恐怖それ自体。ようやく座敷に現れた老人から、「本当の恐怖」を
売ってもらう事になっている。老人が差し出したのは、とても小さな
木製の木箱。その中には一体―。
○怖い話を聞く時に、幽霊もしくは怪物の姿形というのは、
よく分らないほど怖いと思う。一体何者がどんな事をしようというのか、
悶々と自分なりに怖い事を想像している時が「怖い」のだ。この物語で
主人公は老人から受け取った箱を迷い無く開けている。
中身が明かされぬまま物語は終わっているが、読んでいる側としては
ここから始まるような気がする。
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私は握手をするようにして手首を握り、そして引いた。
何の抵抗もない。腕も躯もないんだものなあ。
私は七年振りに手首を拾った。
ああ、久し振りだね。
手首を頬に当てる。
冷たい女の体温。
生きているね。
良かった。
(手首を拾う/ともだち/下の人/成人/逃げよう/十万年/知らないこと/こわいもの)
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十万年は私が小学四年生の頃考え付いたことが言葉にされていた。
はっきりと言葉になってすっきりした。
小説家というのは言葉遣いが巧みであることよ。
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怪談話しの短編です。
少し怖いモノからよく分からないモノまでイロイロありました;
怖がりな私でも読めたので 怪談話し好きな方にはいまいちかも・・・
反対に怪談話しが苦手な人には面白いかと言われると何とも・・・
京極さんやったので読んだまでです。
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ひんやりと濡れた手で、そっと背中を触られて、振り返ったら何もない、あれはいったいなんだったんだろうか…
というような読後感です。京極先生は場の空気を作り上げるのが本当に本当にうまい。ものすごく、不納得な、不思議な、体験をまるで自分がしたような気がしました。
お兄ちゃん、怖かった…!!