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グリーン・ノウの川 みんなのレビュー
- ルーシー・M.ボストン (作), ピーター・ボストン (絵), 亀井 俊介 (訳)
- 税込価格:1,650円(15pt)
- 出版社:評論社
- 発売日:2008/07/01
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紙の本
基本的にシリーズ、っていうのが好きじゃないんですが、こういう離れ技をみると、シリーズもありかな、なんて思います。それに川くだりの冒険と化石、巨人伝説、学会と来た日には・・・
2009/01/19 22:47
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ええ、改版なったシリーズの第三巻にあたりますが、ここでボストンは離れ技を見せました。な、なんと今までの二巻に登場していたトーリーやオールドノウ夫人を舞台から引き上げてしまったのです。こうやってみると、その気配は前巻『グリーン・ノウの煙突』にもあった、とはいえます。
あのお話では、第一巻『グリーン・ノウの子どもたち』で登場したトーリーとオールドノウ夫人は、巻頭と巻末に登場するだけで、殆どが祖先のオールドノウ船長の家族、特に盲目の少女スーザンの受難と克服の話に終始しました。グリーン・ノウの描写も抑えられ、人間ドラマのほうに主体が移ったといってもいいでしょう。
そしてこの物語では、トーリーは登場せず、オールドノウ夫人にしても旅行中で、屋敷を貸した人として触れられるだけに終っています。変わらないのは舞台のお屋敷と、ピーター・ボストンの絵をカバーに採用した中嶋香織の装幀と、見返しに使われたルーシー・M・ボストン作のパッチワーク・キルトだけなんです。
どんなお話になったのか、早速カバー折り返しの言葉を見ることにしましょう。
夏のあいだ、
グリーン・ノウのやしきを借りたのは、
ビギン博士とミス・シビラという
ふたりの女の人でした。
ふたりは、やしきに
三人の子どもたちをしょうたいします。
心おどる川の冒険が、三人をまっていました!
です。背景となる季節ですが、第一巻は雪景色が美しいクリスマスでした。第二巻は特に季節に関係はありませんでしたが冬、といった感じは薄かった、そして今度は夏。夏だから川遊び、っていうのは自然です。そして遊ぶのなら子どもたち、っていうのもわかります。
川で子供たちが遊ぶことを考えれば、彼らに求められるものもそれに相応しいものになります。この話に登場するのはビギン博士の「子供たちは水泳ができることが絶対に必要です。ここの川は非常に危険ですから」という条件に合うように、難民児童夏期休暇援助会から選ばれてきた二人と、博士自身の姪というのですから、よく考えられています。
内容についてはこれ以上触れず、最後の登場人物紹介で代えるつもりですので、今回は各章のタイトルを全部写してみることにしました。目次ですが
1 ビギン博士とミス・シビラ
2 屋根裏べや
3 白鳥の家族
4 川の地図
5 フクロウの宮殿
6 世すて人
7 飛馬島
8 巨人の草の実
9 ネズミになったオスカー
10 風車小屋の下
11 巨人の歯
12 水のゆうれい
――どっちがほんもの?――
13 ビギン博士の委員会
14 月の島の女王
15 道化になったテラック
――おとなっていうものは――
訳者あとがき
となっています。訳者あとがきに面白いことが書いてあるので引用しておきましょう。
この小説には、一見、全体としてまとまった筋がないようです。しかし、川の流れが毎日まったくおなじではないように、また川にはさまざまな支流やダムや島があるように、人間の世界にも、色々な事がらが、つぎつぎと、まとまりもなく起こるものです。人間の真実を愛するボストン夫人は、そこで、子どもたちにつぎつぎと新しい体験をさせるのです。しかもまた、川があらゆるものを含んで一筋に流れるように、人生というものも、はっきりとした進路を持っています。その姿をも、作者は示してくれています。
がそれです。これを読むと「一見、全体としてまとまった筋がない」のはこの話だけのようですが、私にいわせればそれは第一巻に最も顕著で、二巻も三巻もよくまとまっている、そう思います。特にビギン博士の行動と、子供たちの物事の受けとめ方の違いなどは見事と言っていいのではないでしょうか。
逆に何でも作者の意図どおり、「人生というものも、はっきりとした進路を持っています。その姿をも、作者は示してくれています。」っていうのは書きすぎかなとも。これは、一見まとまりがない、といった印象にも関連しますが、やはりデビュー作が60歳で書かれた、というのがそういうことに影を落としている、私はそう思います。
60歳といえば、老化も始まり、それでなくとも記憶や集中力が落ち始める、そういった年齢です。98歳まで生きたのは事実だし、それなりにしっかりしていたとは思いますが、スーパーマンであったはずもありません。そういう年齢的なハンデや、大学退学とはいえ文学とは縁のない世界で生きてきた女性が年老いてから発表した作品が、全て考え抜かれたものである、と受け取るより、きままで自由に書かれた物語だとするほうが自然ではないでしょうか。
最後に簡単な人物紹介
モード・ビギン博士:オールドノウ夫人が旅行中、グリーン・ノウの屋敷を借りた近眼の女の学者です。先史時代には、巨大な動物だけでなく巨大な人間もいたと信じている科学者グループの一人で、三人の子供たちを招いた人物です。物語の前半は静かにしていますが、後半に大活躍します。
ミス・シビラ・バン:ビギン博士に雇われている家政婦さん、でしょう。人生の楽しみは食べものと考え、おおぜいの人に料理をこしらえるのが大好きな、まるまるとい太った老婦人です。自分も食べるのが好きな人によくありますが、人には嫌いな食べものがある、ということが理解できません。少食、というのは敵みたいに思います。
アイダ:ビギン博士の11歳になる姪。二人の難民の少年に比べて影が薄いのは、やはり彼女が苦労を知らないせいでしょう。でも、彼女が目立ちすぎないところが、この話のいいところ、そんな気がします。
オスカー・スタニラフスキー:父親を殺されてポーランドから逃げてきた難民の少年で、アイダと同じ11歳。難民がテーマではありませんが過不足なく背景が描写されているため存在感はあります。
ピン:ビルマから追われてきた中国人難民で、口数が少ない9歳の少年です。H・S・Uとつづるけれど、英語ではうまくいえないため、アイダたちにピンと呼ばれています。年齢が小さいのと、冒頭でシビラに叱られるせいもあって、三人の子供たちの中ではもっとも印象的です。
テラック:風車小屋に隠れている巨人です。後半に登場しますが、彼の存在がこの話のミソかもしれません。
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