紙の本
「超バブル」の指摘は価値があるが,「再帰性」には価値がない
2008/11/03 13:32
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者ソロスはサブプライム危機が単なる住宅バブルではなく,1980 年台から成長してきた「超バブル」崩壊のスイッチをいれ,1930 年代の大恐慌に匹敵する不況をもたらすことを警告している.投資家は目先にとらわれがちだが,ソロスは経済だけにとらわれず,するどい目で世界をみているといえるだろう.ここには,まなぶべきものが多々ある.
しかし,この本の主要なテーマは「再帰性」であり,前半はその解説にあてられている.「再帰性」とは,現実が思考に影響し,思考が現実に影響するという双方向のつながりがあることを意味している.それが理解されていないことがさまざまな問題をひきおこしているという.そして,「再帰性」が「自己言及のパラドックス」や量子力学の不確定性原理と関係があることをただしく指摘しつつも,それらにない点があることを主張している.しかし,実のところ,あたらしいことはないし,この本の後半を理解するうえで「再帰性」の概念は不要である.したがって,この本の前半は価値がなく,評価は下げざるをえない.
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人はその状況の認識あるいは解釈にもとづいて決断を下す。彼らの決断は状況に影響を与え(操作機能)、状況の変化は参加者の認識も変える(認知機能)。
人間の現実に対する理解は、本質的に完璧たりえない。なぜならば、人は現実のわずかな一部分しかないからである。部分は全体を完全に包摂できず、人は現実を「理解」という形では「包摂」しえないのだ。
人は現実について何がしかの洞察を得ることはできるが、現実を理解すればするほど、理解しなければならないことは増えていく。動く標的のようなこの現実に直面して、人は獲得した知識を適用不要な領域にまで拡張することで、その知識に過大な負荷をかけてしまう。その結果、現実の正しい解釈でさえも歪んだ現実認識のもととなるのだ。
市場参加者たちは完全な知識ではなしに、不完全でバイアスがかかった、誤った現実の理解にもとづいて決断を下していく。したがって、結果は期待からは乖離したものとなっていくであろう。
現在のパラダイムは、既知のリスクのみを認めており、自らの欠陥や誤解がとんでもない結果をもたらしうる可能性を受け入れようとしない。この傲慢さこそが現在の金融危機の根っこにあるのである。
市場原理主義者たちの信念とは裏腹に、金融市場は自動的に安定するものではない。政府による積極的な介入があって、初めて金融市場は安定するものなのだ。
中国の経済成長率は低落しても、マイナスの実質金利に支えられた中国バブルは、これからも育ち続ける。株価はまったく上がらなくなるかもしれない。だが、新株の発行は続くだろうし、株式市場の規模そのものは成長を続けるはずだ。
ポートフォリオの構成は途上国市場の買い持ちポジションを先進国市場の売り持ちポジションよりも大きくするという方向にシフトするのがよいだろう。
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原題はNew Paradigm for Financail Market
副題はThe Credit Crisis of 2008 and What it Means
本書は今年の4月に書かれている本だが、米下院で金融安定化法案がようやく可決された週末に読むには最適の本だった。
MPTやMean Reversionを真っ向から否定する彼の考えの説明、そのような考えにいたった生い立ちの回顧、現在の金融危機の原因分析、2008年1月から4月までの彼のポジション、次期大統領に期待する政策という構成。人は間違える、誤謬は誤謬を生む、米政府による公的資金の投入は不可避、という主張。
読後に爽快感はない。来年以降に対する不安感は払底されない。でも良書だと思う。同業の人たちには推薦したい。
(訳者である徳川家広氏が文末に書いている文章が面白いことは想定外の発見。)
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論旨としては社会科学における自らの再帰性理論の正当性を主張した本。
頭が悪いせいか、イマイチピンと来ないな。
ところで最近良く耳にする「信用収縮」という言葉に2通りの怖さを感じる。
一つは収縮という言葉が破裂とか崩壊とかに比べて穏やか過ぎて、危機感が感じられないこと。
もう一つはかなり前に金融ビッグバンという言葉が言われたため、収縮という言葉がビッグクランチを連想させること。
つまり消滅だぜ? こえぇ。
さて、今回のサブプライムに端を発する世界金融の混乱だが、いったいどれほどのインパクトをもたらすのか?
アメリカは学習したのか? 恐慌を回避できるのか、それとも。
(2008/10/06)
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やっぱりソロスのいう「再帰性」ですかね。
だれにもこの世界の全てはわからないということです。当然ね。
だけれども、だからこそ、
四方八方に打つんじゃなくて、
それなりに勉強して、体験して、仮説立てて、勝負して、、、
あとになって運と呼べる経験を増やしたいですねー。
彼の哲学はまだ僕には理解できなかったっす。
また読み返そう。
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読み終わって浮かんできた正直な感想・・・とっても難しいww
内容としては、現在世界を覆っている金融不安(サブプライムローンが起因となった)の発生から現在までのプロセスに対するソロスの見解。
それと、ソロスの、市場を分析するときに用いている思考の根拠となっている、「再帰性の理論」の解説だ。
後者の「再帰性の理論」の解説は、ソロスもいっているが、哲学の範囲に入るので、今の自分にはすごく難しかったw
再帰性の定義は「思考と現実との間にある双方向的な繋がり」、この繋がりが同時に作用すると、参加者の思考には不確実性が、そして現実の出来事には不確定性が、それぞれ生じる。とソロスは言っている。 この本ではこれを金融市場で考える。
ソロスは、「金融工学などによって洗練された、金融市場において過去のパターンが未来にも再び起こるという思い込みが内在している金融モデルは、見た目は美しく投資家たちは盲信する。しかし、それには市場の参加者による市場への影響が酌みされていない。実際の市場は、現実の市場の状況と、参加者の思惑が相互に作用して動いていく不確定なもので、さらにその参加者たちは必ず間違う。それゆえにいくら洗練された金融モデルでも完璧ということはない。
では、どうするか? 過去のデータに縛られず、再帰性理論や哲学、歴史を元に金融市場を読み取っていけ!!」
といっているんじゃないかと思いますw
前者の一連のサブプライムローン危機に関する話は、実務経験があればもっとよくわかるのかなぁと思います。
とりあえず、難しくて完全に理解してないと思うので、少し時間が経ったらもう一回読みたいと思う。
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いいこと書いてあんだろうけど、理解不能
経営学部として読めない俺をがっかりさせた本
よく伝えてくれた!
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投資の世界の第一人者。クォンタム・ファンドの設立をして世界NO1の運用成績を上げ、個人金融資産も1兆3000億ともいわれている人物。
この本の執筆は、多分今年の3月ぐらいまで。その時の状況とはかなり変化はありますが、おおよその部分では当たっているのかな。
ただ、全部で八章と終章という形で締めくくられているが、前半はソロスの提唱する「再帰性」の理論を繰り広げられ・・・哲学、歴史学、心理学などかなり抽象的で難解。「人間は必ず間違う」という投資を理論として説明することは非常に難解。
さらに、金融工学や投資理論として一般的に考えられる、均衡理論、理論値にものの値段は収斂していくといった事との対比?として自分の理論を説明しているのだが難しいです。
そして、現在のサブプライム・ローンとこれからの世界経済の考えという形で描かれているのですが、最後の4章ぐらいはなかなか面白かったが、一般向けではないですね。
運用とかに興味ある方でも・・・ちょっと違うかな?
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これからの金融だけではなく過去の歴史についても、まじめに語られています。まじめというのは、日本の出版業界に散見される「売れるから適当な内容でも出しとけ」という部分がまったくないということです。
ソロスと言えば金融で莫大な財を成した人物として高校生でも名前は知っているというような人物ですが、氏の理論「再帰性理論」というものは意外と知らない人も多いのではないでしょうか。イメージ先行というか。この本を読めば理論がどんなものなのか?というのが少しだけ分かります。
一点だけ残念なのは、邦題がかなり「煽っている」点でしょうか。このタイトルを見ると、さきほど書いたような「売れるから出しとけ」のような印象を受けてしまいます。原題は「The New Paradigm for Financial Markets」なのですから、「金融市場の新しい発想」でよかったのに・・・。まぁそれじゃ出版社が困るというのは分かりますが。
メインテーマとはそれますが、第2部にある金融の歴史的な部分だけを読んでも十分面白いですし、今の状況がどのような経緯でこうなったのか?ということを再認識するきっかけにもなると思いますのでお勧めです。
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ジョージソロスは哲学者になりたかったらしい。
欧米のトップの知性は哲学と歴史を重視する。
ソロスは一般的な金融教育を受けてないアウトサイダーだが、歴史と哲学を叩き込まれた。
だから、普通の金融マンとは違う何かが見えているからこそ、普通では考えられないパフォーマンスをあげたのかもしれない。
ソロスの投資理論は「再帰性」と「可謬性」が骨格。
再帰性とは自己言及のパラドックスとか不確定性原理に似ているコンセプト。
何かの行為が観察対象を変化させてしまいそれをみて行為者はまた行為をかえるがそれがまた観察対象を変化させる・・。社会現象(経済含む)は再帰性を伴うため、論理的には語りえないもの。ヴィトゲンシュタインの言語ゲームでいう「語りえぬもの」の領域。また古典派経済学では、完全情報を得ている過程でモデル化されているが人間は当然、不完全な情報で行為を行う。ゆえに(可謬性)から逃れ得ない。
市場は最終的には均衡点に向かうという古典派経済学はありえないと主張。本質的に神の見えざる手はなく、市場は極端から極端にゆれるもの。だから規制がなければバブルとクラッシュを繰り返す。
古典派経済学はニュートン力学のパラダイムを受けて作られたために、「市場で均衡点に落ち着く」。
クレタ人が「クレタ人はうそつきだ」といことをいったとして、その命題が真であるかどうか?
今回のサブプライム問題は、短期的にはサブプライムクラッシュであるが、長期的には、レーガノミクス以降の30年間の、信用創造のクラッシュ局面とみるのがただしい。つまり、サブプライムとレーガノミクスの2つのバブルがいっぺんにクラッシュした現象。それゆえに相当におそろしい。
日本のバブルは土地によって過剰に信用が創造されたが、レーガノミクスでは、金融技術によって過剰に信用が創造された。過剰に創造された信用はいつかクラッシュする。
いまからはファンド自体がどんどん破壊されていく時代になるらしい。
投資ポジションは、インドと中国が買い、アメリカは売り。ロシアはハンガリー移民だけあって買いたいくないとのこと。
市場の失敗というのがたまにある、という風にならっていたが、そうではなく市場は本質的に失敗するものだ、という主張。
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現実への参加者は状況を理解しようとする(認知機能)が、状況は事実と、その事実に関する意見の両方から成り立っている。もう一方では、参加者たちは状況に働きかけようとする(操作機能)が、その状況もまた、事実とそれに関する意見とで構成されており、現実は常に再帰的であるという考え方に基づいた筆者の金融論は、読者の視野を確実に広げてくれるはずだ。
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カリスマ投資家で哲学家”ジョージソロス”による
現在のバブル世界に対する警告本
自身が生み出した”再帰性理論”の正当性を主張し、現在の経済学に対する反証を繰返し繰返し試みている。
「再帰性」理論の章はやはり複雑怪奇で難しかったが
ソロスの理論確立に至るまでの試行錯誤の過程や今後の投資の方法など興味深く読むことが出来た
ちなみにこれを読んだ翌日、米大手証券会社が破綻し、
著者の予測通りのシナリオになってしまった時、まじ鳥肌がたった。
本書の要旨
1:現在の景気後退は、単なる「アメリカの住宅バブル崩壊」以上のものである。
2:現在のサブプライムバブルは、はるかに大きな「超バブル」のわずか一部分に過ぎない。
3:今年末までに、一九二九年の大恐慌と比肩するほどの「超バブル」が崩壊するであろう。
4:アメリカ・ドルを国際基軸通貨とした信用膨張の時代が終焉を迎えようとしている。
5:この「超バブル」は、これまでの信用膨張の飽くなき肥大化(支配的なトレンド)と、市場原理主義という支配的な誤謬とによって生み出され、強化されてきた。
6:長年にわたって筆者が主張してきた「再帰性理論」を用いれば、現在のバブル崩壊の過程を有る程度まで正しく認識することが可能である。
7:「経済エンジン」としてのアメリカは間違いなく衰退化する。新しいエンジンとして中国・インドおよび中東が期待される。
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教科書として手元においておいてもよい本。エスタブリッシュメントの中では歴史を学ばないやつはくず扱いされるとかそういうことが書いてありつつ、恐慌についても書いてある。真のエスタブリッシュメントはたゆまぬ努力があってこそ。高学歴はなよいイメージがあるが、ソロスはお金も持っていて教養もあってすごい。
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ソロスの警告に耳を傾ける人間がどれ程いるのでしょう。未曾有の経済危機、株価1000円台ぐらいになれば日本人も慌てるのかもしれない。日本も少しずつ二極化している。
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これは経済書というより、もはや哲学書だ。
リアルタイムで買うも(2008.9)途中で飽きて、
やっとこさ重い腰を上げて本格的に読んでみた(2009.4)。
すると、その間に自分なりに勉強してきた、
原始仏教(縁起や空)や不完全性定理や不確定性原理などの、
哲学的な示唆を多く含んでいることに気づく。
バフェットも好きだけど、ソロスの根幹となる哲学は、
自分の哲学と重なり、とても有益で共感できる内容だった。
しかしながらも、
この哲学を独自の経済理論に昇華させたソロスは、やはり巨人。
ソロスの哲学は西洋思想家のポパー、私の哲学は釈迦。
今後は西洋哲学の古典も勉強していきたいと感じた一冊でした。