紙の本
ひとりも幸せ、誰かといることも幸せ
2009/12/20 11:36
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこまでもどこまでも広がる台地と空。
見渡す限りの広い台地に、
オオカミくんとピアノだけがぽつんとある。
オオカミくんはピアニスト。
そして ひとりぼっち。
端的に絵に表現される、その事実。
最初のシーンでは、オオカミくんの顔はまだ見えない。
その後姿からは、その事実をどう思っているのかは見えない。
寂しそうにも見えるし、静寂を味わっているようにも見える。
もしかすると、この絵が映し出すもの、この絵から感じるものは、
孤独に対する自分自身の感じ方かもしれない。
ぼんやりと空を眺めている姿も、
自由気ままにも見え、少し寂しそうにも見える。
ここからエピソードの繰り返しが入る。
ある日遠いところから手紙が届き、
それにはピアノを聞かせてくださいと書いてある。
手紙に添えられているものが毎回異なり、
それが特徴的なきれいなものなのである。
オオカミくんは遠いところへピアノを引きずって訪ねて行く。
その道のりも毎回特徴があって幻想的である。
オオカミくんの演奏を楽しむ者たちの様子もまた
不思議な雰囲気をかもし出している。
お礼はオオカミくんにとっては
食べられないものだったりするけれど、
喜んで受け取り、帰っていく。
帰ってくると余韻を楽しむ。
帰ってきたオオカミくんの心境や行動は、
行く前とは微妙に変化している。
その繰り返しが3度ある。
3度目では、1度目2度目とは違うことが起こり、
それが穏やかに繰り返されていたエピソードに、
ふっと緊張と変化を与える。
オオカミくんは、ひとりを味わっているが、
まったく独りぼっちで誰とも会わないことを望んでいるわけではない。
ときどきなぜか泣きたいような気分になることもあり、
そのときには演奏を望んでくれた仲間たちのことを思うのだ。
ピアノを聞かせてほしいという手紙が届いたとき、
彼はその手紙を幸せな気持ちで味わっている。
じっと手紙を見つめたり、
手紙に同封されていたものにそっと触れてみたり、
同封されていたもののにおいを味わったりする。
帰ってきてから、そこにいたときのことを思い出す方法が、
感覚を研ぎ澄ます豊かなものなのだ。
思い出を美しく思い出す方法をオオカミくんは知っている。
私もなぜか泣きたいような気分になることがある。
そのときは、オオカミくんのことを思い出そう。
ひとりでいることも、誰かといることも、味わうことができる彼のことを。
紙の本
映画化される理由のありか。
2009/12/04 00:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浸透圧 - この投稿者のレビュー一覧を見る
――オオカミくんはピアニスト。そして ひとりぼっち。――
というセンテンスで始まるこの作品は、
繰り返しを用いながら、「ひとりぼっち」の様相が
徐々に変化するさまを丁寧に描いている。
広がりのある美しい絵と淡々として静謐な文章。
頁を繰るごとに作品世界の奥へ惹き込まれ、
読み終えたあとの余韻が深い。
扉を開く者の心持ちに寄り添い、みせる姿を変えて魅惑的。
この作家の語り過ぎないスタンスが心地よい。
一見、幼い子どもに向けた装いだが、読み返すほどに、
このオオカミの他者とのつながりや他者への思いの深まりは、
存在の哀しみ、「ひとりぼっち」を生きる強さに
裏打ちされていることに思い至る。
しかし、孤独であることをオオカミは恐れていなさそうだ。
「ひとりぼっち」であること、オオカミであることを
思い知らされる瞬間はあっても。
この絵本は映画化されたらしいが、確かに絵が印象的。
なるほど映像的な作品だ。
投稿元:
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どこまでもどこまでも広がる台地と空。
見渡す限りの広い台地に、
オオカミくんとピアノだけがぽつんとある。
オオカミくんはピアニスト。
そして ひとりぼっち。
端的に絵に表現される、その事実。
最初のシーンでは、オオカミくんの顔はまだ見えない。
その後姿からは、その事実をどう思っているのかは見えない。
寂しそうにも見えるし、静寂を味わっているようにも見える。
もしかすると、この絵が映し出すもの、この絵から感じるものは、
孤独に対する自分自身の感じ方かもしれない。
ぼんやりと空を眺めている姿も、
自由気ままにも見え、少し寂しそうにも見える。
ここからエピソードの繰り返しが入る。
ある日遠いところから手紙が届き、
それにはピアノを聞かせてくださいと書いてある。
手紙に添えられているものが毎回異なり、
それが特徴的なきれいなものなのである。
オオカミくんは遠いところへピアノを引きずって訪ねて行く。
その道のりも毎回特徴があって幻想的である。
オオカミくんの演奏を楽しむ者たちの様子もまた
不思議な雰囲気をかもし出している。
お礼はオオカミくんにとっては
食べられないものだったりするけれど、
喜んで受け取り、帰っていく。
帰ってくると余韻を楽しむ。
帰ってきたオオカミくんの心境や行動は、
行く前とは微妙に変化している。
その繰り返しが3度ある。
3度目では、1度目2度目とは違うことが起こり、
それが穏やかに繰り返されていたエピソードに、
ふっと緊張と変化を与える。
オオカミくんは、ひとりを味わっているが、
まったく独りぼっちで誰とも会わないことを望んでいるわけではない。
ときどきなぜか泣きたいような気分になることもあり、
そのときには演奏を望んでくれた仲間たちのことを思うのだ。
ピアノを聞かせてほしいという手紙が届いたとき、
彼はその手紙を幸せな気持ちで味わっている。
じっと手紙を見つめたり、
手紙に同封されていたものにそっと触れてみたり、
同封されていたもののにおいを味わったりする。
帰ってきてから、そこにいたときのことを思い出す方法が、
感覚を研ぎ澄ます豊かなものなのだ。
思い出を美しく思い出す方法をオオカミくんは知っている。
私もなぜか泣きたいような気分になることがある。
そのときは、オオカミくんのことを思い出そう。
ひとりでいることも、誰かといることも、味わうことができる彼のことを。
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ひとりぼっちのオオカミくん。
ピアニストのオオカミくん。
リクエストがくると、どこへでもピアノと一緒に出かけます。
その場所(風とか、波とか)に合った演奏をするのです。
みんな大喜び♪
そして。
ひとりぼっちの場所へ帰って来ます。
でもね、みんながよろこんでくれたことが、オオカミくんの心をあっためてくれるんです。
手元において、なんども読み返したい絵本。
投稿元:
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小鳥が運んでくる
演奏依頼の手紙が来れば、
重いピアノを引っ張って
どこへでも出かけていく
オオカミくん。
みんなに喜ばれながらも
演奏が終われば
いつもひとりぼっちで帰っていく日々。
青空の下、広い大地に
ポツンとあるグランドピアノと
オオカミくんだけが書かれた絵が
彼の孤独を表してるようで
印象的です。
彼は手紙の送り主である
カモメやリスや羊からの演奏依頼に応えるために、
重たいピアノとイスを紐でつなぎ
それを引っ張りながら、
何日もかけて
砂の道を歩いたり
山を越え
苦労して出かけていく。
拍手喝采の帰り道は
また1人に戻るのに、
なぜそこまでして
オオカミくんは
出かけていくんだろう…。
オオカミくんにとってのピアノは
誰かと繋がるための手段でもあるんですよね。
人は必要とされることで
強くなれる。
待っててくれる人がいるだけで、
自分は1人じゃないって
実感できるのかな。
だけど
ときどき泣きそうな気分になることもあるだろう。
それでもなお
群れることなく
一匹のオオカミとして
凛として立つ姿は、
オオカミとしての誇りや
音楽家としてのプライドなのかな。
切なくもあるけど、本当にカッコいいし
美しいと思います。
1人でいることと
ひとりぼっちは違う。
自分の演奏を
喜んでくれたみんなを思い、
貝殻に耳を当てて
カモメを思い出したり、
羊にもらったセーターを着て
一つ一つの出会いを
愛おしむオオカミくん。
彼の胸の中には
沢山の思い出が生きているから、
ひとりでいても
悲しむ必要なんてない。
『孤独』とは、
寂しいと同意語ではないということ、
個を尊重し、
自分に磨きをかけ、
1人の時間を楽しむ、
希望ある生き方だということを
大人である自分たちにも
気づかせてくれます。
幻想的で
美しく繊細な絵。
耳をすませば聞こえてきそうな
ピアノの音色。
切なくも
心があったかくなる、
読む人によって
いろんな受けとり方のできる、
(人それぞれ、聞こえてくるメロディーも違うんだろうな)
勇気をもらえる絵本です。
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菜の花さん(松原さん)よりいただきました!ぐりとぐら、ちびくろさんぼ以来の35年ぶりくらい(と一応正直に申告しておきます)の絵本!
心があったまります。どこかに自分を必要として、待っていてくれている人がいるんだな~。って。絵もかわいらしいです。特に羊さんが!
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今はひとりかもしれないけれど、きっと誰かが必要としている。
ひとりぼっちのオオカミくんに、遠いところから演奏依頼の手紙が届く。
ピアノ演奏をきっかけに、オオカミくんは自分を必要としてくれる誰かに出会う。
静かに流れる物語の中で、絵から響いてくるオオカミくんの心情や聴こえてきそうな音楽がとても印象的だった。
自分を必要としている誰かに出会い、その誰かを想うことの素直な喜びが表された、素敵な絵本。
絵本のアニメーション映画のピアノがファジル・サイで、オリジナル曲も使っていたとか…。ぜひ観たかったなぁ。
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何故ピアニストの「オオカミくん」が「ひとりぼっち」なのか?
最後まで読んでいくとわかる。
切ない、大人な絵本。
イラストが本当に素敵で、オオカミくんはセクシーでさえある。
大好きな一冊。
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大勢で過ごした後の孤独は身に染みる。
だから、やっぱり、リクエストがあると
出かけます。みんなの喜ぶ顔を見るために。
彼のピアノ、聞いてみたいわぁ。
孤独の数だけいい音になるのかも。
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手紙って、いいなあと。
眠れないときは、本を読んだり楽しんでたぼくのペースがすっかりおかしい。
市販の導入剤を紹介されたり、わたしの投稿の様子からキープインタッチ的な連絡がきたり。気にかけてくれる奇跡に感謝。
考えれば、考えさせられるほど、囚われる。とまらない目の痙攣、食欲不振、原因不明の左足の脱臼、不幸自慢をしても、明日はやってくる。
カウンセリングなんて役に立たないねって言われて、ちょっと共感してしまうから、いろいろ試してみる。
孤独な狼のように、ピアノがいちばんかも。いま、ピアノにハマっています。(6月23日)
寒い。
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息子7歳0ヵ月
息子が喜びそうな本を図書館から借りてきて読み聞かせ…最近は息子が一人で読むようになってきて、母はサミシイ。
〈親〉
絵が好き ◯
内容が好き ◯
〈子〉
何度も読む(お気に入り)
ちょうど良いボリューム ◯
その他 ◯
素敵な絵。素敵なお話。
息子は、おおかみくんがさみしそうにしているのが、悲しいらしい。