紙の本
やっぱり本当の会議がおもしろくないから、それを模した会議もおもしろくない。役人も医者も警察も、医者も教授も事故の被害者も自分のことだけしか考えていない。現実だとしても夢を感じないなあ・・・
2009/04/09 21:36
11人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
相変わらずチープなデザインな本です。ともかく、人目をひけば勝ち、といった雰囲気の色使いが下品で、赤津ミワコの装画を殺しています。同じ医療機器を表紙に持ってきても、講談社の『ブラックペアン1988』とは雲泥の差。ちなみに雲の上のデザインを担当したのは鈴木成一デザイン室、カバーCGは桑原大介。装幀者の力の差なのか、それとも出版社の考え方、センスの問題なのかはともかく、こりゃないぜレベルのカバーではあります。松崎自身の考えを聞きたいところです。
でも、姿形は悪くとも中身で勝負、っていうのが宝島社版・海堂本の特長。ただし、今回は少し様子が違います。そこらあたりは海堂の新作『ジェネラル・ルージュの伝説』に詳しい。ようするに会議の様子がかなりリアルに、というか克明に描かれるのですが、これって海堂の体験を再現しているそうです。いやはや、役人主宰の会議がどのようなものか、官僚の狙いがなにかがよ~く伝わります。
ちなみに、宝島社から出たばかりの『ジェネラル・ルージュの伝説』、素晴らしいブックデザインです。これが同じ出版社のものか、と言いたくなるようなレベルの高さで、赤という色が派手でもそれが気にならないのは、それに微妙に他の色が混ざっているゆえでしょう、古雅の趣のある紅といったほうがいい。そんなデザインは、中川まり(SINN graphc)。これは『ブラックペアン1988』を凌いでいます。
脱線はこのくらいにして内容ですが、ともかく夥しい人が登場します。それなりに上手く描き分けられていますが、海堂の主眼はそこにあるわけではありません。海堂の怒りの矛先は、今までの作品でも繰りかえし述べてきたように、日本の医療をダメにしてしまった医療行政に向かうのです。それを宝島社はHPでこう書きます。
田口・白鳥シリーズ最新刊!
厚生労働省をブッつぶせ!
医療事故を裁くのはいったい誰なのか?
いいですねえ、「厚生労働省をブッつぶせ!」。「霞ヶ関をブッつぶせ!」でもいいんですが「厚労省」と名指すと勢いがあります。で、今回、訴状にあげられるのが司法解剖と病理解剖です。記憶は定かではありませんが、最近、何度か日本の監察医制度について、せっかくのもおが日本では6都市にしかないということが報道で取り上げられています。不勉強な私は、それこそ海堂の本の成果ではないか、と思っている次第です。
で、大雑把に言えば犯罪死体は法務省管轄で司法解剖、病院で亡くなった場合は病理解剖。グレーゾーンの症例は監察医制度で対応することになっているものの、しかし、その監察医制度は、日本では6都市にしかないため、それ以外の地域で不審な死亡があっても、そのまま解剖されることなく処理されている。それなのに、監察医制度の拡充に官僚は熱心ではないと海堂はいいます。
問題は官僚の怠慢(きっと、頭のいい彼らのことですから国民には明かせない思惑があるんでしょうが)だけではありません。医学界の縄張り意識、勢力争いがあり、新しい動きを潰そうとする保守的な体質があります。たとえば海堂の小説ではお馴染みの帝華大学ですが、医療事故調査委員会のアドバイザーで、帝華大学医学部病理学教室の田村教授は「医療事故調査の土台となる解剖は、病理解剖であるべし」と主張します。
同じアドバイザーで、上州大学医学部法医学教室教授の西郷は、「法医学会の『異状死ガイドライン』では、医療行為に関する死亡は異状死に属すると明記され、医師法第二十一条に従えば、医療事故死は、おのずと司法解剖されることになる。そして、そこのAIを導入し、「エーアイを行い、死因が明らかになったケースは解剖しなくてよい」として現場の医師不足に対応しようとします。
帝華大学法学部教授の日野は「最高裁での医療事故訴訟第八百三十五号の最高裁判例での判決」をもとに、西郷の主張を正しいとします。西郷が提案する監察医制度というのは、操作の一貫である司法解剖でもなく、強制力を持たない病理解剖でもない、まさしく中間的な性質を持つ解剖です。
大学間だけではなく大学内部でも対立というか綱引きがあり、しかも、医療事故訴訟の関係者がいて、さらに官僚がいます。その官僚の中にも対立というか考え方、目指すものの違いがある。そして日夜開発される新しい技術があり、予想もつかない事件がある。そのなかで日本の医療制度はどうあるべきか、どうなっていくか、そういう小説です。
沢山の登場人物を色分けしながら紹介すれば
〈東城大学医学部付属病院〉
田口公平:精神内科学教室講師。不安愁訴外来責任者。病院のリスクマネジメント委員会委員長であるため、厚労省の白鳥の指名で医療関連死モデル事業特別分科会・病院リスクマネジメント委員会標準化検討委員会で講演することになる。
島津吾郎:田口の同期の出世頭で放射線科教室准教授で、病院のエーアイ・センター設置を仕切っている。
藤原真琴:不安愁訴外来専任看護師で、彼女のいれるコーヒーのファンは多い。
高階権太:病院長。
〈厚生労働省〉
八神直道:帝華大学卒のキャリア官僚で医療安全啓発室課長で、ミスター厚生労働省と呼ばれる。
白鳥圭輔:医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長。厚労省のはみ出し技官で、コードネームは火喰い鳥。
〈警察庁〉
北山錠一郎:警察庁刑事局局長。
加納達也:桜宮に出向していたキャリア官僚で警視正。白鳥と同窓のため、いいように使われることもある。警察庁刑事局刑事企画課電子網監視室室長。
斑鳩芳正:桜宮市警察広報課室長。警察庁刑事局新領域捜査創生室より出向中で確信犯的な情報漏洩をする。
〈医療事故調査委員会・創設検討会メンバー〉
田島勇作:相模原大学法学部教授。『医療関連死モデル事業』座長。
日野真人:帝華大学法学部教授。
西川洋子:NPO法人・ペイシェント・バイスタンダーの会理事長。
小倉勇一:医療事故被害者の会代表。
彦根新吾」房総救命救急センター診断課病理医。
クリフ・エドガー・フォン・ヴォルフガング:ジュネーヴ大学画像診断ユニット教授。
桧山シオン:ジュネーヴ大学画像診断ユニット准教授。
〈アドバイザー〉
西郷綱吉:上州大学医学部法医学教室教授。東京都監察医務院非常勤職員で、解剖の臭いを消すためと称し香水の臭いをプンプンさせている巨漢。性格がオープンで憎めないところのある事情通。
田村幸三:帝華大学医学部病理学教室教授。
〈時風新報社〉
別宮葉子:桜宮支所勤務の社会部主任。彼女のスクープが桜宮市警察を震撼させた。
です。で、今回は学者の勝手な勢力争い、みたいで話のせいか、海堂には申し訳ないけれど内容よりは、人物が印象に残ります。田口、白鳥は当然ですが、どこかお坊ちゃんの香り漂う加納、名は体を表わす風の西郷、新技術で医療改革を図る彦根、そして何より彦根の切り札として、ドイツから呼び戻されるヒロイン・桧山シオン。やはり海堂尊は面白い!『ジェネラル・ルージュの伝説』は必携かも・・・
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「チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」に続く、「田口&白鳥シリーズ」第4作目。
今回の舞台は厚生労働省、テーマは司法解剖とエーアイ。白鳥から依頼されたた田口が医療事故調査委員会へ出席し、様々な思惑や確執が飛び交う会議の中で、現実の医療行政を目の当たりにする。
今回は全編に亘り登場していた田口&白鳥よりも、序盤と中盤にチョロ出し、終盤に掛けて大盤振る舞いのように登場した彦根新吾の活躍と言うよりキャラの濃さが際立っていた様な…
田口はいつもよりさらに磨きを掛けたかの様に存在感は薄弱、白鳥は珍しく序盤から早々に登場しているにも関わらず、終盤も終盤大詰めに掛かった頃に飄々と医療事故調査委員会に登場した彦根新吾のキャラの強さとインパクトのおかげで完全に食われていた。
今回の「イノセント・ゲリラ」では「チーム・バチスタ」からのテーマでもあった、司法解剖とエーアイ【Autopsy imaging(Ai=死亡時画像(病理)診断)】の重要性と医療制度への導入を訴え続けていて、それを凝縮しギュッと詰め込まれている。現実の医療制度も事実グダグダ。それに対する憤りと、理想が語られた一冊だった。現役医師だからこそ描き得る物語であり、この問題は遠からず現実でも問題になりそう。
ただ「ナイチンゲール」同様、欲張ったのか(?)登場人物がやや多めなのが疲れる。
「ジェネラル・ルージュ」には及ばなかった。
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やっと読了!
発売してからしばらく積読だったから。
今回も白鳥と田口のコンビが活躍。
けどいつもよりさらに医療用語がたっぷりでちょっと難しい。
話は面白いんだけどね。
次巻も期待!
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チームバチスタのシリーズもとうとう四冊目ですね。
正直、推理小説じゃなかったんですけど。
一作目から推理小説ではなかったような気がするんですけど。
でもまぁ、一作目はこのミス大賞取ってるし。
キャラも内容も楽しかったです。
どきどきする、エンタテイメント作品って言う言葉がぴったりと来ると思う。
社会に対する警鐘を鳴らしているんだと思いますが、私にとってはあくまでエンタテイメントでしかないです。
大好きですよ、このシリーズ。田口センセのふびんっぷりが。
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白鳥・田口シリーズ…っていうのかな、その4作目。海堂先生の主張…っていうか、理想、なのかな、そんなものがぎゅぎゅっとつまった1冊だったように思う。
末端とはいえ医療に関わる人間として、あまりに金になるならないで評価されて削り取られる医療のこれからに、不安を覚える気持ちは確かにある。それを小説という、一般に分かりやすい考えを形にできる海堂先生は本当にすごいなと思う。
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▼読むきっかけ
海堂尊さんの田口、白鳥シリーズの新作だったため。ジャケ買い。
▼読んだ感想
今回は医療と司法の狭間で医療事故調についての検討会の中という設定。
あらためて、死亡不明社会におけるエーアイの必要性について、
まさしく最後のゲリラ戦は、やや飛躍した理論から最後はちゃんと落としどころに
話が進む展開はおもしろかった。
最後1ページはまた余韻を残して、次作にも期待。
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今、厚生労働省が進めようとしている「医療事故調査委員会」
全国で頻発している医療事故・・・司法の手が医学の世界に
大野事件・・・医師の過失は何もないが、不幸にして妊婦に
おきた悲劇、誰も悪くないのに、警察が執刀医氏を逮捕!
その後、一審では無罪となったが、第三者機関として
医療事故調査委員会が必要との世論がおきた
しかし、厚生労働省の権限拡大だけで、真実がさらに隠される
組織が出来ようとしている・・・今、まさに討議されている
最新(まだ決まってない)の情勢をタイムリーかつフライング気味に
描いた作品に、いつもの田口&白鳥コンビが・・・
はあ、まだ読んでないので、これ以上レヴューできません(笑)
11・22読了
厚生労働省をこんなに揶揄して、大丈夫か?海堂先生!
いわゆる検討委員会に出席できる田口先生!
舞台の中心は、エーアイに!
海堂先生が、小説を書きはじめた動機「エーアイ」を日本に普及させることが
必要だとの信念が身を結ぶか!
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著者による、「田口・白鳥シリーズ」(?)の最新作。今回もエーアイ(AI)がテーマになり話が進んでいく。今回の主な舞台は、霞が関の厚生労働省。死後解剖に関する、医療行政の問題点などを追究する内容で、必ずしもエンターテインメント性が高いとは言えないが、一気に読みおえた。
しかし、「序章」の「賢人と街人」は重くて心に残る・・・。この寓話は、懸命に働き、さまざまな無理をさせられている医者にかぎらず、今の社会のあちこちに当てはまることなんじゃないかとも思った。
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VS.厚生労働省。という作品。解剖率が3%にも満たず、97%が体表を見ただけという死因不明社会にある日本において、「Ai」という死体への画像診断を導入して医療の、社会の健全化を図る。という主張のもの。ちょっと、主張が強すぎて物語としての面は薄いかなとは思うけど、法医学、法律、警察、厚労省など様々な立場を論破していく。そこは痛快!日本の腐った官僚社会の一幕を拝める。
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チームバチスタシリーズの最新作。この本はその都度に大きな医療問題がそのテーマがあって、その中できちんと物語を作っているので面白いです。
今回は今までシリーズと違って誰も死なないし、物語は会議室の中で進行していきます。ただ、扱っている問題が問題だけに他のシリーズより込み入った話が多くて一気に読まないと理解が追い付かないかも。
個人的には爽快な議論が交わされる法廷ドラマみたいな展開は好きなんだけど、ちょっと作者の伝えたいことが先行しすぎかなあ、という感じがしないでもない。
「ロジカルモンスター」白鳥はちょっと迫力不足。田口はバチスタの時みたいな存在感はないけれど、ストリーテラーとしていい役回りだったのではないか。
総じて満足。
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桜ノ宮市を飛び出して、厚生労働省で議論をする話なので
最初から白鳥さんが登場します。
が、メインは白鳥さんでも田口先生でもなく、新キャラの彦根先生。
意見をなぎ払っていく姿は爽快ですが、若干やりすぎな感じも(演出ですが)
シリーズ全体を通してAI導入とこれまでの医療機関の現状を訴えるお話だと感じました。
議論の白熱ぶりは見ていて楽しいです。
それを彦根先生がぶっ壊していく様は白鳥さん以上ですが、
白鳥さんがそれであまり活躍が見えないのも残念ですね。
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バチスタシリーズ4作目。
セカチュー要素満載の2作目とロマンス3作目とは打って変わり、海堂さんの主張と厚生労働省への批判盛りだくさん☆舞台は会議室(笑)これだけで読むと、ちょっと厳しい。もうすこしエンターテイメントとして読めればよかった。司法と医療の分離、解剖制度の問題などなど、もう、専門書を読んでいるような感じでした!「医療庁創設」とか話 デ カ ッ!!でも死因不明社会はちょっと怖い、知らなかったよー。「螺鈿迷宮」に関する記述もあったので読んでからのほうがよいです。
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?チームバチスタ○
?ナイチンゲール×
?ジェネラルルージュ◎
と期待された第4弾でしたが、ミステリー色は皆無。
たぶんカテゴリーとしては新書。残念。
自作は螺鈿迷宮と重なりそうで少しだけ期待。
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田口・白鳥シリーズなのはいいけど、これはミステリーじゃないし、小説というスタイルを借りた医療問題提示となっています。でも、帯には、バチスタ、ナイチンゲール、ジェネラルルージュに続くと書いてあるし「このミス」大賞シリーズとも書いてあります。この登場人物が確かにそのシリーズなのかもしれないけど、作品を的確に表してないという点では、少々腹立たしいコピーでもあります。
ということで、この話は、厚生労働省の会議室を舞台にした医療問題の議論が中心で、どちらかというと「死因不明社会」に続くといった方がいいんじゃないかと感じました。
かなり、本を読むのに時間がかかったです。作品の性格もありますが、なによりも私が忙しくってあまり読書に時間を取れなかったのが要因かも。少し熱中できる本に出会いたいものです。
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悪くはないんですよ。けっして面白くないわけではない。でもでも、登場人物にだんだんと天才が増殖してきて、まるで西尾維新の「戯れ言シリーズ」を読んでいるような気がしないでもない。ただ、一番の天才はやっぱり白鳥だってところは安心できると言うか、マンネリと言うか…。ココまで話を広げてしまってうまく収拾がつけられるのか、ちょっと先行きが心配だというと大きなお世話でしょうか。