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この世界で生きている人は数限りなくいて、この世界で今日命が途絶える人も数限りなくいる。どんな人だって私とは違って、私はどんな人とも違う。なのに、私が私であることに特別な意味があるのだろうかと考えると分からなくなる。全ての人にとって私は特別だというわけじゃないから。
そんなモヤモヤとした思いは誰しもが持っていてそれでも一人一人が生きていくこと、死んでいくことは普通じゃないと思わせてくれた不思議な作品です。
やっぱり天童荒太さんの作品は心に深く重くのしかかってきます。
これから後何作品天童さんは書いてくださるのだろう。それを全て読みたいです。
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装丁のなんとも不気味な彫刻に思わず目をとめ、サイン本が置いてあったこともあり手に取った。きっかけはどうであれ、読ませてもらう機会を与えられたことにただただ感謝している。
悼む人は「誰を愛し、誰に愛され、どんなことをして感謝されたか。」という三点を聞きながら、日本中の亡くなった人々を悼んでいく。そして、彼に動かされる人々が確かにいる。読後、半日ほど経過しているが、まだ息苦しい。簡単に涙を誘うようなものではなく、読んでいる人の眠っている奥底の感覚を呼び覚ますような小説だった。
小さいことを気にすることが富んだ人生を送ることの弊害になるのかもしれないと思っていた矢先、「いいんだよ。それがちっぽけであっても間違っていても」と言って貰えた様な錯覚を覚えた。
7年掛けて書く小説とは(まあ期間は関係ないのかもしれないけれど)こういう小説なのだなと思った。
朝日の書評か何かで悼む人のノートを実際に天童さん自身が付けていて、脱筆後も続けていると聞き驚いたが、この域に達するには並大抵な姿勢では不可能だということだろうな。けっして人々を悼み続けるということに共感できたわけではないが、こういう方法で生きていけばいいのだろうと感じることが出来た。
直木賞もまず間違いない。天童さんの作品を読むのは初めてだったけれど是非ともこれから読ませていただきたい。
僕の人生の中で一番の小説が変ったと思えるくらい素晴らしい作品だった。こういう作品にもっともっと出会いたい。
「彼は、人を悼んでる……生きていたものが死んだとたん、数にされ、霊にされ……近しいもの以外、どんな人物が生きていたのかを忘れていくのに……この男は、死んだものの生きていた時間に、新たな価値を与える。その人物が、この世に存在していたことを、ささやかに讃える。」(p.388)
(2009.01.09)
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内容紹介
全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼を巡り、夫を殺した女、 人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる
2008.12
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表紙の写真(舟越桂さん この人のオブジェ好きなんです)と題名で買ってみた。
この作家の本を読むのは初めてです。
最後はすごく泣けました。
「悼む人」がいたら癒しになるんでしょうか? 生きる勇気を与えてくれる人が「悼む人」なんでしょうか?
「すべての死」を均等に考えることは正当なんでしょうか?
大きなテーマです。いつかもう一回読んでみようかな。
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◎第140回(2008年度・下半期)直木賞受賞作品。
◎第6回(2009年)本屋大賞ノミネート作品。
2009年3月27日(金)読了。
2009−32。
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「その人は、誰に愛されたのでしょうか。誰を愛していたのでしょう。どんなことをして、人に感謝されたことがあったでしょうか」坂築静人は、新聞の死亡記事を見て、亡くなった人を亡くなった場所で「悼む」ために、全国を放浪し、「悼む人」と呼ばれていく・・・死と生、そして愛についての深い物語。第140回(平成20年度下半期)の直木賞候補作です!
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直木賞受賞作品
日本中を歩き
主人公独特の方法で
亡くなった人を悼む
と言う話しです。
いいのか、悪いのか、それは人それぞれの感じ方だと思います
そのおかげで不快に思う人も
そのおかげで救われる人も
色んな人がいるにもかかわらず
多分、その主人公静人と家族が一番つらいんじゃないかと思う。
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悼む人は「誰を愛し、誰に愛され、どんなことをして感謝されたか。」という三点を聞きながら、日本中の亡くなった人々を悼んでいく。
その三点において他者を悼む、ということは、生きているものにとって、その三点がどんなに大事な行為、感情であるのか、改めて思い知ることになる。
大きなことでなくても、
自分は、誰を愛し、誰に愛され、どんなことをして感謝されたか?
そんな日々を送っているのだろうかと、否、、と
でもそうありたい、と自問する、読後感。
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前々からこの作家の小説を読んでみたい、と思いつつ表紙の写真が嫌で個人的に敬遠していましたが、久々に「読んでよかった!」と思える小説でした。
内容は確かに重く、鬱になってしまうかもしれませんが、文章がとても平易で、丁寧に書かれているのでとても読みやすかったです。
何より作者の執筆に対する真摯な態度に大変驚きました。
この小説を読んでから、今まで何気なく通り過ぎてた新聞の死亡記事に目がいってしまいます…。
私も、誰か一人でも良いから感謝されるような人生を過ごしたいと思いました。
目指せ、本屋大賞!!
(↑補足:直木賞とったよ)
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主張は2点
・『死んでも誰かの心にいる限りその人は生きてる。そしてすっと影響を与え続ける』
・『どんな人でも誰かを愛したり、愛されたり、何かの役に立ったことがある。印象とか一元的な見方で人を見るのは損』
現在世の中で誰かの死が伝えられるとき、その多くは加害者の残忍さやパーソナリティー分析に終始する。
本当に伝えるべきはそこか。また残忍な犯行を行う人にも報道されていない背景や積み重ねがあり、一元的に見てはいけないんじゃないか。
このように、現在のマスメディアの在り方を示すことから、現代社会に生きる人の、人間認知の在り方に対して疑問符を投げ抱える作品。
どんな人も。愛され、愛し、誰かに影響を与えている。
その方法がわからなかったり、ちょっと歯車が狂っただけの人もいる。
もっと人を大事に見ていこうって思った。
人が生きるのって誰かの心の中なんだな。
「この世界では、人の多少なりと軽重の差をつけるのは暗黙の了解だろう」
「あなたは今なお、この女性の中に生きる力を持っていらっしゃるんです」
「思い込みでもよいと思っているんです。大切なのは亡くなった人を自分の中にどう刻んでいくか」
「ある人物の行動をあれこれ評価するより、その人の出会いでわたしはなにを得たか、何が残ったか、ということが大事」
「彼の行為が偽善で無意味だとしても、彼なりに自分のしたいことをしている」
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まずよく引用する森博嗣「すべてがFになる」から。「死を恐れている人はいません。死にいたる生を恐れているのよ。苦しまないで死ねるなら、誰も死を恐れないでしょう?」
このセリフは結構好きなのだが、「苦しまないで死ねるなら、誰も死を恐れない」とは限らない。たとえば、愛する子ども達が自分の死後に遺産相続争いするのではないかと思っている金持ちの爺さんもいるかもしれないし、重い障害を持つ子の親は「私が死んだら誰がこの子の面倒を見るのだろう」と思うかもしれないし。
そして、「自分が死んだら、私が生きていたことを誰も覚えていなくなってしまう」ということを恐れている人も、いるかもしれない。
「愛の反対は憎しみではなく無関心」だという。
死者に対する無関心は、その生前に対する無関心にほかならず、要するに誰からも忘れられていく死者は、生前に誰からも関心を寄せられていなかった人間だ。そんな死者にとっては、「悼む人」が存在してくれるということは、本当に心強く、ありがたいことかもしれない。
しかし、本当はそうなる前に、誰からも愛されなくなる前に、自分の人生を自分で変えなければならないのだ。(と、ここまで書いたところでイーグルスを思い出した。ならず者よ、誰かから愛されるようになった方がいい、手遅れになる前に。)またそうした孤独な人を生み出す環境を作ってはいけないのだ。そうして、「悼む人」などこの世に必要なくなるようにならなければならないのだ。
最初は、「悼む人」坂築静人の母・巡子が末期ガンで、彼女が徐々に死に向かっていくのが辛かったが、読み終わった後には、死に対する恐怖感が少し和らぐような気がした。
本作は直木賞を受賞したが、個人的にはむしろ直木賞の方が恥じて逃げ出してもいいくらい、素晴らしい作品だったと思う。
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小説で泣いたのは久々で、さすが直木賞受賞作……と久々に思えた作品でした。
きっと、すごく綿密に設定とか取材とかされたのだろうな、と感じさせる深みある描写に展開。
そして筆力にメッセージ性の強さ。
何をとっても素晴らしい大作だと思います。
良い作品に出会えました。
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どんな死に方をしようと、その死に優劣はない。
故人に関係する人は悲しむし、事故や事件で命が奪われた場合は、加害者側にも故人に対する様々な思いがあるだろう。
でも<悼む人>である静人は、故人と縁のない赤の他人である。
その彼がいったい何を想い故人を悼むのか。
どうしても偽善という言葉が浮かぶ。
その場に居合わせた人達の気持ちが乱れたり、余計なお世話だ、ひとりよがりの行為だと感じるのも無理はない。
途中までそう感じながら読んだ。
私のとまどいは、作中の<悼む人>に接した人達のとまどいだし、偶然静人と出会い彼の旅に加わった倖世のとまどいでもある。
でも、静人が成長する中で立ち会った”死”や彼を旅に駆り立てたきっかけ、静人の父や母が関わってきた”死”。
いろんな背景が分かり、また彼の悼みに対する真摯な姿勢に触れ続けると、倖世同様、私の心も変化してきた。
どう死んだかではなく、どう生きてきたか。
否定ではなく、肯定。
どの人の人生にも必ず愛し、愛された瞬間があるはず。
青臭いと思うけど、でも、私はそう信じたい。
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直木賞受賞作。天童荒太は昔読んだ『永遠の仔』も重い内容だった記憶があるのみ。
この作品では、全国の亡くなった人の悼みを行う青年を追っている。ジャーナリスト、青年の母、随行者の三人の視点で彼を描いた物語。
悼みという行為への意見はノーコメントとして、静人の母である巡子の強さが眩しくって、一番印象に残った。癌に冒されながらも、周囲の人を思って行動できる強さ。彼女のような母親になれたらいいのに。蒔野の話も結構印象には残るのだけど、何よりも私は巡子の強さに惹かれた。
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ハードです。久々に「眉間にしわを寄せて」読む作品に出会いました。でも、難解ではありません。誰にも平等に訪れる「死」や「死に方」について深く考えさせられました。普段は考えたくもないことなんですが。
ただ、主人公である「悼む人」よりも、その母親の描写の方により凄味があって、タイトル的には「悼まれる人」だよな?とか思いました。