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体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、老い以外で死ぬことがなくなった世界。
人々の健康は中央で管理され、肥満もアル中もニコ中も存在できない。
そんな真綿で首を絞めるような世界に反抗するため、餓死を試みる3人の少女。
2人は失敗し、ミァハだけが死んだ・・・。
どこかで読みましたが、「老い以外で死ぬことのない世界」をがんの闘病中に描いていた作者。
こんな世界で生きられたら、作者もがんで苦しむことはなかったと思うが、しかし作者はこのユートピアを批判的に書く。
少女が主人公のせいか、前半はやや甘ったるく、読み進めるのに時間がかかったが、後半の究極のユートピアを目指すあたりはいろいろ考えさせられて面白かった。
人生にはいろいろな選択肢があり、また物事が上手くいかないときは「他の動物のように本能だけで生きられたらいいのに」と思うときがある。
ままならない人生と、何も考えなくていい人生とどっちがいい?と聞かれたら、やっぱりままならない人生を選ぶんだろうなあ。
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節々に詰まっているアイディアは、元ネタが分かったりするとニヤリとする。
既に鬼籍の方なので叶わぬ願いだが、「今までになかった兵器を巡って右往左往」というプロット以外の作品も読みたかった。
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伊藤計劃記録を読んでると既読のネタがいくつか。「ユートピア」に対する閉塞感と絶望感はまさに現代SF。主人公の決断があくまでも「わたし」に終わるところがなんとなくセカイ系っぽくて好き。そして相変わらず小道具が魅力的。
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この本を読む前に、虐殺器官、メタルギアソリッドを読みましたが、共通点のようなものが感じられる作品です。
内容としては、健康まで外部委託という形で管理される社会。
そんな究極の監視社会の中に、異分子ともいえる少女がいた。
その少女と同級生であった主人公が、そんな社会と対峙するといった内容で、考えさせられる内容です。
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面白い構造の世界観だった。ちょっと狭いなという気はするが。
この書き方は他にないな…だめな人はだめかもしれないけど,私は結構気に入った。
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ナノマシンを体内に取り込み、身体の状態をすべてモニタリングし、あらゆる病を駆逐した社会。
そこは、社会のシステム全体が完璧な調和(ハーモニー)を目指し、「優しさ」を強制する世界でもあった。
あらゆることが社会というシステムから与えられるようになると、すべての行動は自明となり、「意識」がなくても人は社会生活を続けることができる…という意識論は、自然には合理的存在にはなりきれない人間の限界を示しているようにも思えます。
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SFとしては凡庸な内容に思われた。
登場人物の何もかもが、すでにある感じ。
個人的に一番印象に残ったのは、集団自殺(もしくは人殺し)を強制されないのが、私たちが今生きる現実世界で、紛争地域と言われる場所に住む人々だったこと。
著者の問題意識(と言っていいのかな?)が窺える設定だなあ、と思った。
「虐殺器官」もぜひ読んでみたい。
心よりご冥福をお祈りいたします。
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無駄の少ない文章と時折顔を覗かせる笑いを誘う皮肉な表現は健在。htmlタグを彷彿とさせる架空のマークアップ言語を用いての表現は世界観形成に一役買ってたし何より斬新で面白い。
だけど、物語の構成は一本調子で虐殺器官からの進歩はあまり見られないように思える。
世界を取り巻くSF的設定や合間合間に挟まれる思想主張薀蓄などなどは興味をそそられるし退屈しないのだけど、話の骨組みにはどこかで見たような使い古された感を覚えた。
これからそういった課題を乗り越えて作家として成長して行く様を見てみたかったよ本当に……。
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続きものではないが設定として『虐殺器官』後の世界。SFだけど、SFファン以外の人にも読んでもらいたい一冊。驚愕のラストにゾッとする。
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病気がほぼ消滅した健康第一主義の世界に抵抗するため、餓死を試みた三人の少女が大人になってからの話。展開に二転・三転と驚きがあり、読んでいて緊張感がある。一人称で書かれたシュールな文章も比較的読みやすい文体で、結末もよくできている。頻繁に出てくるhtmlのような英語が気にならなければオススメしたい。星5つつけたかったが、ラスト付近で登場人物の立場に若干都合のよさを感じたため、「限りなく5個に近い4個」。作者が亡くなられる前の病床でこれを書いたというのが皮肉めいている。
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人を人たらしめているもの、
人が人であることの意味を考えさせられる。
この世界では皆と繋がっているはずなのに、
人はどうしようもなく一人だ。
その孤独と絶望から逃れるための社会システム、
しかしそこに身を委ねることは人にとって
本当に幸せな事なのだろうか。
タイトルの「ハーモニー」の意味が分かった時、
体が冷える気がした。
まさにユートピアの臨界点。
ここは虐殺器官から繋がる世界なのだろう。
伊藤計劃の作品には全編通してどうしようもない孤独が
ある、と思う。
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21世紀後半、人類は<大災禍>と呼ばれる混沌を経て、高度な医療福祉社会を実現していた。
体内に医療分子を入れ常に監視し、病から無縁の社会。
一人一人が社会の一員、一人一人が公共的身体を持つものとして、世界の一部であることを強要される世界。
そんな世界に抵抗する為に3人の少女は、餓死することを選択した。
それから13年後、自殺を試みて死ねなかった少女は、世界の未曾有の危機に直面する。
その危機にかつて一緒に自殺を試みた少女の影を見る。
人類が目指した最終局面。
それに立ち会った2人の少女の物語。
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読む前に想像していたほど、乗り切れないまま読み終えてしまった。
世界観がまず中途半端。技術とか制度とかの一つ一つはそれなりだとは思うのだけど、それが一つの社会システムとして見た場合にかなりちぐはぐ感じを受ける。この社会制度が成立した歴史的背景が見えてこない。社会制度がすべて整合している必要はないし、現実に矛盾をたくさん含んではいるけれど、それでも全体としては機能する形に構成されているはず。でも、この本の世界観にはそれがなくて、ぽん、と作られたような印象がする。
さらに、精神の葛藤の無い状態、というのも、主人公の敵であるミァハが目指すような世界にはならないように思えて納得できない。作中では、個々人の精神の葛藤の無い状態が実現したら、社会としても葛藤は消える、というように考えられている。でも、仮に、個人レベルで実現したとしても、社会レベルで実現するとはいえない。個人間の効用関数は違うんだから、そこに葛藤が生じる余地はあるはず。そこが一切考慮されずに、個人レベルから社会レベルまで一気に一致させてしまうのは性急過ぎると思う。
というような感じで、世界に馴染めずじまいだった。決して面白くないわけではないのだけに残念。
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みんなが平等になあなあに「個人として」認識される、それは同時に「自分」を意味なくしてしまう。何に対しても右習えなこの国に突きつけてやりたい作品と思った。
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全体の幸せを考えると個の意志は自然と淘汰されるが、個の幸せは、ユートピアは、善は個の中にしかないという、矛盾。
もうこの人の新刊が出ることがないってのが切ないなあ…。